表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だけど姫は謝らない  作者: ジフワラー
2/5

02話 だけど私は使ってみた

手に入れたリングの謎に迫ります。

平たく言えば、導入その2です。

 不思議なリングを拾った。


 ずっと手で握ったまま、家に帰り自室へと直行する。


「姉ちゃん、ご飯食べないの?」


 弟の夕希(ゆうき)の声がリビングから聞こえたが、無視をする。

 自室のドアをサッと開き、通勤バッグをハンガーラックに引っ掛け、ベッドに倒れこんだ。

 手の中で輝いている、2つのリングを私は恍惚の表情で見つめた。


「きれい…。どの指につけようかな。」


 拾い物だろうがブランド物でなかろうが、全く気にならない魅力がそのリングにはあった。

 私の職場は指輪OKのため、問題なく普段からつけることができる。

 色々試した結果、左手の人差し指と中指につけるとしっくりすることがわかった。

 薬指には未来の結婚指輪のために、今は空席にしておきたいし。



 左手をかざし、輝くリングを見ていた時だった。


『………。ひのめ。姫城ひのめ。』


 ビクッと脳が反応し、顔を上げてしまった。

 どこからか、私を呼ぶ声が聞こえたのだ。

 弟の夕希の声でも、妹のよみちの声でもない。


「気のせい…?」


『…ひのめ!!』


 私の独り言に応えるように、脳内に声が響いた。

 聞いたことのない女の子の声だ。


「誰…?いったい、どういうこと…?」


『私は神よ。今、ひのめの心に直接語り掛けているの。』


 …あれ、私は疲れているのだろうか。

 リングを拾った高揚感か、それとも日々のストレスか。

 幻の声を聞いているのだろうか。


『ひのめ、今ひのめが指につけているドリームリングは、私が誤ってその世界に落としてしまった物なの。本来は神のアイテムで、特別な力が宿っているわ。』


「ドリームリング…特別な力…。」


 驚いた。

 本当にこれは不思議な指輪だったのか。

 神様と名乗る女の子がドリームリングと呼んだそれを、私は眺めた。


『ドリームリングの使い方はシンプル。人差し指と中指にはめて、決めポーズをしながら願いを言うと何でも叶う力があるわ。』


「決めポーズ…?」


『あー、それは何でもいいよ。Vサインでもピストルポーズでもいいから、リングを目立たせるようなポーズだと成功判定になるから。』


 なかなかにふざけたアイテムね…。

 でも、もしその力が本当なら、とんでもないリングなのでは…?


「……もしかして、神様はリングを回収しに来たのですか?」


 そうだろう。

 こんな、本当に神のような力を宿すリングが実在するのだとしたら…。


 ………イヤだ。


 これは私が、手にしたものだ。


 私は悪くない、落とした神が悪いのだ。


 拾った私が、リングをどうしようとそんなの勝手だ…!


『いや、特に。使い方がわからないだろうと思って、アドバイスしに呼び掛けただけだよ?』


 え……と、神様は意外にもリングの所有権の放棄を早々に私に伝えた。


「いいんですか…?」


 思わず聞き返してしまった。

 さっきまでの威勢が嘘のように消えてしまった。


『リングを落としたのは私のうっかり。でも、リングを拾ったのはひのめ自身の選択。私にひのめの自由を奪う権利はないわ。』


 なんだか丸め込まれてしまったような気がしたが、どうやらリングは私が使ってもいいようだ。


「ど、どうなってもしりませんからね!?」


『どうなってもいいよ?ひのめの行く末を、高笑いしながら見物させてもらうわ~。』


 本当にどうでもよさそうな口調を最後に、神の声が頭から消えていった。


「……。なんだったの…?」


 指に残されたリングを見ながら、私はしばらく動けなかった。


 本当に神が言っていたことは真実なのだろうか?

 このリングに、そんな力が…。

 そんな魔法みたいなことがあるわけない、夜勤明けできっと疲れて幻聴でも聞いたのだ。


「姉ちゃん、昼飯食べないなら片づけるからねー!」


 夕希の声が部屋まで聞こえる。

 うるさいなぁ…。

 ……そうだ、試しに唱えてみるか。


「ドリームリングよ、昼食を私の机までワープさせなさい。」


 ベッドに寝ころんだ姿勢のまま、左手を天井に向けて高く上げた。

 ふふ、我ながらアホみたいなポーズだ。


 その瞬間。


 一瞬だが、リングの宝石がキラッと光った。


 慌てて私は跳ね起き、机の上を見た。

 さっきまで何も置かれていなかった机の上には、見慣れた食器と昼食であろうパスタが置かれていた。


「……あれ?昼飯が消えてる……。姉ちゃんが部屋まで運んだのか?」


 夕希の声が聞こえてきた気がしたが、今はそれどころではなかった。


 本当に。


 本当に、これは夢のような、願いか叶うドリームリングだったのだ。


 この力さえあれば、私は…!


 湯水の様に妄想が沸き、私は喜びを堪えきれなかった。

読んでいただき、ありがとうございます!

女性向け小説というのは難しいですね、ただ女性主人公でイケメンを出せばいいだけではない…。

奥が深いですが、やりがいがあります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ