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唯一無二の冒険者  作者: 鷹の亮
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3話 冒険者入門編

少し調べてみてわかったことがあります。

私の作品は欠陥だらけのようです。

簡単に言えばつまらない…


でも、続けます。


妄想を形にしたいので。


「ここが組合か。思ったより大きいな」


 二年が経った。春。


 僕は冒険者としての第一歩を踏み出し、冒険者登録する目的で組合に足を運んでいた。



 東京駅を出て直ぐのところに組合はありビル群の中で一際目立っている。

 写真で見たより数倍大きく感じられ、胸が高鳴った。


 視線を左に動かせば、薄っすらだが迷宮の存在を確認することが出来る。


 僕はあそこに挑戦するんだ。

 妄想するだけで口元に笑みが浮かぶ。

 おっと、涎も出てしまった。


 金に目を眩んではいけない。自重しよう。



 自動ドアを通り予め渡されていたパスをゲートに翳し中に入る。

 中は清潔感があり広々としていて、高級ホテルのロビーを思わせた。


 なんかよく分からないけど高価そうな家具やシャンデリアがあって、父さんと違い馴染みがない僕にとっては場違いな感じだ。

 組合内を物珍しそうに眺めていると、視界の端にこちらの方へ近づいてくる人影が映る。


「よう、新入りか?」


 肩を叩かれ振り向くと、サングラスをかけた禿頭のオッサンが話しかけてきた。

 肌は浅黒く、スーツの上からでもわかる鍛えられた体つき、顔には傷が走っている。


 正直言って怖い。ヤクザとかそんな感じ。

 初っ端から変な人に絡まれてしまった。


 こんな時は碌なことがありゃしないと思った僕は逃げた。


「ぎゃーー!」

 すぐに捕まりました。 いやもう一瞬で。腕をぎゅっと握られています。


「お、お金はあいにく……」

「何言ってんだ? つか、逃げんなよな!」

「ひえっ、命だけは……!」

「誰と勘違いしてるか知らねーけどよ、俺は命なんて獲ったりしねーよ」

「そう言って、本当は……?」


「だからしねぇって! 入り口で新入りだと思って、声をかけただけだよ!」


「あ、そうだったんですか……」

 と言いつつも、僕はいつでも逃げれる準備はしていた。おっさんにバレないようにしていたつもりだった。


「だから! オレはそんなことしねえって! 身構えんなよ」

 なのに、おっさんにはバレていた。

 魔法は使えないけど、身体術にはそれなりに自信があった。元の高校でもトップクラスだった。

 それをおっさんはあっさり見破った。

 僕はこのおっさんには叶わないと思った。


「すみません。初対面の人に失礼なことして」

「なんだよ急に静かになって気持ちわりーな。よくある事だしいいぜ。おい、新入り名は?」


「はじめまして。ぐ、紅蓮 海人です」


 正直名字を言うか迷ったが、後で「どうして言わなかったんだ」って問いただされるよりましだと思った。


 僕の名前を聞くとサングラス越しにおっさんの瞳が大きくなった。

 まあ、知っていないはずがないよね。紅蓮と聞けば、誰もが父さんを思い浮かべる。 それほど紅蓮 聡は有名なのだ。


 実は一年半前のあの事件から僕は父さんと暮らさず、アパートを借りて一人暮らしをしていた。 追い出されたと言った方が適切かもしれない。

 幸い一人息子を見捨てるほど父さんは薄情者ではなくて、生活費は仕送りしてらくれていた。

 だけど、父さんとの約束で今日で打ち切りになる。


「知っての通り、はい、紅蓮 聡の息子で……(おい、危ねぇえぞ!)」


 いつの間にかおっさんは10メートルくらい遠ざかっていて、血相を変えて声を荒げた。



 え……何が?



 声を出す前に背中に凄まじい衝撃が走った。

 身体が前に傾く。

 床との距離がぐんぐん縮まり、そして、僕の視界は暗転した。


(雑魚が……)

 最後にそう聞こえた気がした。



「うぅぅ……」

 目覚めると、僕はベッドの上にいた。いつものベッドとは桁違いの生地の質感で家ではないと分かった。

 それで、組合に来ていたことを思い出す。

「僕はおっさんと話していて、何かを背中に受けて……」


 恐らく倒れて気を失ったんだろう。で、誰かにここまでまで運ばれた、といった感じだろうか。


 それにしても、ここ、どこだ?



 まだ背中に痛みがあったが体を起こし、辺りを見渡す。

 ベッドと小さいテーブルしかない簡素な部屋だが、ベッド、テーブル、壁のデザインや天井のランプ、部屋にあるもの全てが高級感を漂わせていた。


 同時に既視感を感じた。


「まるで高級ホテルのような……あ! もしかして組合の中なのか?」


 僕は確認するため、部屋から出ようとドアに手を掛けた、その時。


「海人元気になったかー!」


 おっさんが容赦なく開けたドアで吹っ飛ばされた。


 力が思うように入らず、体を支えきれずに僕は床に尻餅をついた。


 筈だった。


「おっと、危ねぇじゃねぇえか」


 瞬時に動いたおっさんにお姫様抱っこされた。

 加齢臭というのか、よくわからない臭いが漂ってくる。だけど、なぜか嫌悪感はない。

 気のせいか身体も火照り始める。


 なんだこれ。いい匂いじゃないか。もう少し嗅いでいたいような……


 って、僕はそっちの趣味はない筈だ! 絶対に!

 頭を振り、不可視の領域から脱する。


「だ、大丈夫です。ありがとうございます」

「自己紹介がまだだったよな、オレはダンデイだよろしくな紅蓮 海人」


 名前に劣らない風貌、まさしくダンディだ。


「さっきはすまねぇーな、ウチの後輩の馬鹿が。アイツらはお前が紅蓮 聡の息子と知ってな少しちょっかい出すつもりで魔法を放っただけでな…… 。怪我をさせるつもりはなかったようだし許してやってくれ」


僕が紅蓮 聡の息子と知り、喧嘩をふっかけられることは今までに何度かあった。

世間から父さんがよく思われていないのも知っていて息子の僕が狙われるのも時間の問題だなぁと思っていたから、実際、遣られてもそこまで腹は立たない。


それより、手加減してもらったものを真正面から受けたことが恥ずかしい……

「それはそれで傷つきますね……」


 僕が意気消沈すると、ダンデイは歯を見せて豪快に笑った。

 いや、笑いごとじゃないから。僕が思ったより弱かったってことでしょ?

 聡の息子だからこのくらいの余裕だろみたいな軽い感じで魔法放ったら、僕は気づきもせず直撃したってわけですか……情けない。


「まさか、魔法が使えないっていう話を聞いたときはオレも流石に驚いたな!」


 もとから知っていたような、芝居掛かった口調でダンデイは言った。


 そのあと、二人で少しだけ話し、用事があるとかでダンデイはそそくさと部屋を退散した。

 ダンデイの匂いが薄れるにつれ、

 心にぽっかりと穴が空いた寂しさが僕を襲った。

読んで下さりありがとうございました。

来週には投稿します。

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