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妹のために魔法少女になりました  作者: 槻白倫
第5章 お姉様と王子様
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第四話 クラスメイト女子に対する無自覚俺TUEEEE

感想、評価、ブクマありがとうございます。

もうすぐ百話に届きそう&七十万PV突破。嬉しいです。

「深紅ー! 聞いて聞いて!」


「どーしたよそんなにはしゃいで」


 俺は深紅が教室に戻って来た途端、深紅の元まで走り寄る。


 深紅は俺の様子を見て少しだけ驚いたような顔をするけれど、すぐに嫌な予感がするといった顔になる。


「実はね、さっき階段から落ちた子がいたんだけど」


「そのテンションで言う事じゃねぇな。普通に大事だぞ?」


「大丈夫! 俺が助けたから!」


 えっへんと胸を張って言う。


「こうね、落ちてきたところを、俺がキャッチしたの! ぱっと投げて、さっと抱きかかえたんだ!」


「あー、まぁ、お前なら出来るだろうな」


 深紅は納得したように頷く。


 クリムゾンフレアの組手の相手である如月黒奈であれば、それくらいは容易であると深紅は思っているのだろう。


「深紅、今認めたね?」


「ああ」


「ふっふーんだ! 俺に筋肉がある事を認めたね! 俺のこれはちゃーんと力こぶだもんね!」


 言って、俺はふんっと腕に力を入れる。そうすれば、ぽこっとちゃんと筋肉が盛り上がる。


 これぞ筋肉! これが筋肉! 力、イズ、パワー!


 ドヤァっとした顔で深紅を見れば、深紅は呆れたように俺を見る。


「お前、まだそんな事気にしてたのか……」


「するよ! いい!? これは筋肉なの! 俺の鍛え抜かれた筋肉なの!」


 俺がそう主張すれば、深紅は一つ溜息を吐いてから少し前かがみになり、俺の太ももの裏に腕を回す。


「え、なに?」


 困惑している間に、深紅は俺を持ち上げる。


「うえぇ!? なに!?」


「軽っ、これで筋肉あるとか笑うわ」


 言いながら、深紅は俺の席まで俺を持ち上げて運ぶ。


 深紅は俺を持ち上げる間、左腕はいっさい使わず、右腕の力だけで俺を持ち上げる。


 俺の席までくれば、深紅は椅子の上に俺を降ろす。極自然な動作で。苦しそうな仕草も、疲れたような仕草も、無理をしているような仕草も見せない。


 まるで鞄を椅子に置くように、自然に俺を椅子に座らせる。


「これが筋肉だ、黒奈。お前のは筋肉の収縮な」


 言って、深紅は腕を曲げて力こぶを見せてくる。さっき見た通りの、鍛え抜かれた肢体が持つ筋肉だ。


「むぅ……! 腹筋だったら俺もあるし! 見てみろ俺の腹筋!」


「だからはだけさせようとすんな! 場所を考えろ場所を!」


 シャツの前を持ち上げようとすれば、即座に深紅に止められてしまう。


 確かに、教室でやる事ではない。女子もいるのだし。


「じゃあ、後で見てよ。俺の腹筋われてるから。もうバッキバキに割れてるから」


「いや見ねぇよ。第一お前の腹筋割れてねぇじゃんかよ……」


「薄っすら見えるのー!」


「薄っすらじゃ意味ねぇだろうが」


 言って、呆れたように深紅が溜息を吐く。


「って、そういやお前、さっき女の子助けたって言ったよな?」


「うん、言った」


「ぱっと投げて、さっと抱きかかえたって言ったよな?」


「うん、言った」


「何を投げた?」


「深紅の鞄」


「俺の弁当ぐちゃぐちゃになったじゃねぇか!」


「あ、痛い! 痛い痛い!」


 深紅は俺の頭に拳をぐりぐりと押し付ける。やめて! 禿げる! 禿げちゃう!


「はぁ……ま、女の子助けるためじゃ仕方ねぇけどよ」


「そーそ、仕方なーい、仕方なーい」


「お前が言うな。……んで、お前は怪我ねぇのか? どっか身体痛むところは?」


「しいて言えば頭が痛い」


 患部を抑えて深紅に言ってみるも、気のせいだと言ってまったく取り合わない。深紅がやったんじゃろがい!


「どっか痛くなったら言えよ?」


「頭が痛い」


「どっか痛くなったら言えよ?」


 とりあう気は無いらしい。


「へーきだよ。全然痛くないし」


「なら良いけどな。やせ我慢だけはすんなよ? それ以上痩せたら浮いちまうからな」


「浮かないし!」


 俺はどんだけ軽いと思われてるんだ! それに、風船じゃあるまいし! 体重が減っただけで浮くわけないじゃないか!


 そんな風に、いつも通り深紅とお喋りをしていると、ふと強烈な視線を感じた。視線の方を見やれば、戦さんが俺の事をジッと見て……っていうか、睨みつけていた。いや怖い。そんなに睨まないで。普通に怖いから。


 俺と目のあった戦さんは、ちょいちょいと俺を手招きする。


「どうした、黒奈?」


「ううん、ちょっと戦さんに呼ばれたから行ってくるね」


「戦? ……ああ、分かったよ」


 深紅に見送られながら、俺は戦さんの席へと向かう。


「どうしたの戦さん? そんなに睨んで」


「私の睨んでいる理由が分からないのはあんたが持ってる者であり、私が持たざる者だからよ」


「ごめん、ちょっと何言ってるのか分からない」


 急に難しい事を言わないでほしい。


「とりあえず座りなさい」


「はい」


 戦さんの隣の席の椅子を借りて座る。


「じゃあ、和泉くんが教室に入ってからの一連のあんたの行動を言ってみなさい」


「え? なんで?」


「いいから」


「……えっと……深紅のとこまで行って、深紅と話して、深紅が俺を抱えて俺の席に運ぶ……くらいかな?」


「そのくらいにどれほどの情報量が入ってるか分かる?」


「分かんない」


「あんたが分かろうとしないだけよ!」


 言って、戦さんは俺の頬をぶにゅっと両手で掴む。


ひゃめへふははい(やめてください)


「いい? まず、和泉くんにあんな子犬のようなテンションで駆け寄れるのはこのクラスであんただけなのよ?」


 子犬て。誰が子犬だ。


「それに、あんた何された? 抱っこされてたわね? しかも片手で。力の入った和泉くんの腕は正直眼福だったけど、それにしたってあんたね、和泉くんに抱きかかえられるのなんてあんたくらいなのよ? それをなに? え、俺何かしちゃいましたって? あんた和泉くんに憧れる私達に対して俺TUEEEEするのもいい加減にしてくれないかしら?」


おえふええ(おれつええ)?」


 いったい何を言ってるんだ戦さんは。ていうか、そろそろ手を離してほしい。普通に喋らせてほしい。


 戦さんの手を掴んで離してと意思表示をすれば、戦さんは不服そうにしながらも俺の頬から両手を離した。


 ようやく解放された頬をすりすりと手でさすりながら、俺は戦さんに言う。


「俺の妹とかは深紅に抱きかかえられたりするよ?」


「そりゃああんた、あんたの妹は幼馴染枠じゃない。あんたと同じでしょ」


「確かに」


「でも私達は違うのよ。ただのクラスメイト、ただの他人よ。抱きかかえられるなんて、してもらえるわけないじゃない」


「だから恋び――んむっ!?」


 恋人と言おうとしたら、慌てた戦さんに口を押えられて、それ以上の発言を強制的に止められる。


 そして、威圧感たっぷりの笑みを浮かべた戦さんが俺に顔を近付けてから、周りに聞こえないくらいの声音で言う。


「あ・ん・た・ねぇ? なんで人が居る場所でそうほいほいそのワードを口にしようとするの? 他の女子に聞かれて、私が敵視されたらあんたのせいだからね? いい? 次にそのワードを人前で言ったら、容赦なくあんたの頬をひっぱたくから。いい?」


 戦さんの言葉に、俺はこくこくと頷く。


 確かに、これから告白しようと頑張る戦さんに対して、今のはちょっと配慮が無さ過ぎた。うん、反省だ。


 俺が頷けば、戦さんは俺の口から手を離す。


「それで、あんたはなんか策を考えてきたの? お昼はあんたと一緒に食べるから、和泉くんとは食べないとしても、他にもアプローチの仕方ってあるじゃない?」


「あ、うん。一応考えてはきたよ」


「ほうほう。正直あんまり期待してないし、なんなら不安だけど……」


「失礼な。俺だって真面目に考えてきたよ」


「それじゃあ言ってみなさい……って、言いたいことろだけど、そろそろホームルーム始まるわね」


「じゃあ、お昼に言うね。期待しといて」


「はいはい。精々期待するわ」


 手をひらひらと振る戦さんに、俺はばいばーいと手を振って自分の席に戻った。





 気の抜けた声を出して手を振ってから自分の席に戻る如月を見て、私は色々と不安になる。


 仮にも、私は如月を脅している身だ。あんな適当な写真で脅しかけて、その場の勢いと圧力、それにブラフとはったりをかましただけで、如月は自分がブラックローズであると白状した。


脅している私が言うのもなんだけれど、本当に色々と心配になってくる。


 だって、あんな根拠のない写真で頷くとは思わないじゃない。あいつがブラックローズから如月黒奈に戻る瞬間の映像でも見せつければまだ証拠としては強いけど、私が見せたのはネットのどこにも存在しない水着姿のブラックローズの写真だけなのだ。


 元々気が弱いのかもしれないけれど、仮にもファントムと戦うブラックローズがあんなので大丈夫なのだろうかと少し心配になる。


 それに、脅されているというのになんだあの脱力感は。昨日だって私との電話でも話を聞きやしないし、今だってまるで友達のところに話をしにきたような気安さだ。


 まったく、なんなのあいつ……。


 一応、昨日釘は刺しておいたけれど、いつ和泉くんに私の事をばらすかも分からない。あの様子じゃばらしてないようだけど、問題はそれだけじゃない。隣のクラスの浅見碧。あいつの存在も少しだけ気掛かりだ。


 あいつは如月の事となるととんでもない情報網があるし、行動力だって、その行動思想だってぶっ飛んでる。この事を勘づかれでもしたら、いつ私に牙を向くかわかったもんじゃない。


 はぁ……我ながら厄介な相手を好きになって、厄介な相手を利用してるな。でも、これは私が始めた事だし、和泉くんを好きになったのも事実。和泉くんの一番の理解者である如月をこっちに引き込めている間に、和泉くんのハートを射止めないと……。


 ……だって、私は……。


「……」


 暗い方へと向かう思考を止める。


 好きになってしまったのなら仕方ないのだ。そう自分に言い聞かせる。


 この恋に一直線になる。


 この恋に全霊を注ぐ。


 この恋に心血を注ぐ。


 この恋を成就させる。


 だって、そうじゃなきゃ……。


 ああ、ダメだ。また暗い方に考えちゃう。いけない、いけない。和泉くんとの事を考えるとすぐにこうなっちゃう。


 私は気持ちを切り替えて、自身の席でぽけーっとしている如月を見る。


 一応、あんたには悪いと思うけど、私の恋のために手伝ってもらうわよ。


 私のそんな意気込みとは正反対に、如月はぽけーっとしている。こいつ本当に大丈夫なのかと不安になりながらも、今一番の協力者に期待するしかなかった。


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[気になる点] あーそういえばラスボス疑惑の幼馴染が居たな…… バレたら即殺ですよ。間違いなくおうちの力で闇に葬られますよ……
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