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妹のために魔法少女になりました  作者: 槻白倫
第3章 俺達はヒーロー
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第七話 テスト終了やったね

昨日投稿しようと思ったら、データが壊れて書き直しになりました……。


私は悲しい。



 終業を告げる電子の鐘の音が鳴る。その音を聞いた生徒達は張り詰めていた空気から解放されるかのようにはぁと息を吐く。


 ようやくといった開放感や、やっとといった達成感からくる溜め息。どちらにせよ、皆の溜め息からは安堵の色が見て取れる。


「よし、それじゃあ、一番後ろのやつから解答用紙を前に回せ」


 担当教諭の一声で、一番後ろの席の人が自身の解答用紙を前の席に回す。


 全員の解答用紙を集め終わると、担当教諭は教室を後にした。


 途端、少しだけざわめいていた教室が、途端に騒がしさを増す。


 固まった肩を慣らす者。隣の者とお喋りを始める者。さっさと帰りの準備をする者。各々が各々好きなように過ごす。


 俺も凝り固まった身体を(ほぐ)すために、両手を組んで伸びをする。


「んっ……んんっ…………はぁ」


 凝り固まった身体が解されていくのを実感し、思わず声が漏れる。しかし、これほどざわめいている教室だ。誰も俺の声なんて気にもしないだろう。


「黒奈さんや、声が聞こえておるぞ」


「おお、すまんねぇ」


 深紅が変なノリで来るから、俺も変なノリで返す。


「隣の横波くんのことも考えてあげなさい」


「おお、すまんねぇ」


 ちらっと深紅と反対の席に座る横波くんを見やれば、顔を赤くして気まずそうに視線を逸らしていた。


「すまんねぇ横波くん」


「い、いや。別に、大丈夫……」


「すまんねぇ」


 ちょっと顔が赤いけれど、本人が大丈夫だと言っているなら大丈夫だろう。けれど、なんで横波くんは顔を赤くしていたのだろうか? 知恵熱……は、失礼か。気を張りすぎて疲れたのかな? それとも、俺が腑抜けた声を出してたから恥ずかしくなったのか? なんにせよ、次からは気をつけることにしよう。


「それより深紅、テストお疲れ様」


「ああ、お疲れ」


 俺が普通にそう言えば、深紅も普通に返して来る。


 そう。先ほどのチャイムを持って、一学期の期末テストが無事、終了したのである! やったね!


 本日を持って、一学期期末試験最終日。その最終科目を終了したのである。


 俺は机に突っ伏し、はふぅと息を吐く。


「しかし、この後もまた、疲れる予定が待っているのである……」


「言うなよ、考えないようにしてたんだから……」


 深紅はテストよりも疲れたような顔で言う。


 今日は、この後にこの間会った少女と、その仲間達から話を聞くことになっているのだ。


「まだ話も聞いてないのに疲れた顔してるな」


「疲れる、というよりは、気が重い、だな。身の丈に合わない話をされてもな……」


「身の丈っていうか、深紅は完全に門外漢だもんねぇ」


「わかってるなら協力をしろとか言うなよ……」


「アドバイスだけしてあげればって言ったんだよ? 別に本格的に手伝えって言ってないし」


「俺が苦労するんだから、どっちでも同じようなもんだろうが!」


 言いながら、突っ伏す俺の頬を引っ張る深紅。


「い、いひゃいいひゃい! ひゃめへ!」


「餅のように伸びるほっぺだ」


「ひょにゃにのみにゃいひょ!!」


 むにむにと好き勝手に引っ張る深紅。


 最後に一際引っ張ると、ぱっと乱暴に離す。


「ううっ……痛い……」


 頬を引っ張られ、思わず涙目になってしまう。


「はぁ……本当に気が重い。なぜ俺はあの時承諾してしまったのか……」


 溜め息を吐き、本当に面倒臭そうにする深紅。


 いや、面倒というよりは、本当に気が重いといった感じだ。今回のことは、完全に門外漢の深紅には自信が無いのかもしれない。


 それに、中途半端に教えることの半端さが嫌なのかもしれない。完璧主義とは言わないけれど、深紅はきちんと物事を済ませたいタイプだ。深紅はチーム戦は完全に門外漢だから、アドバイスと言っても、本当に基礎の基礎しか教えられないだろう。基礎以上のことをどう教えようか、考えているのかもしれない。


 悩んでいる深紅を見ると、気軽に話だけでも言ってしまって悪かったと思ってしまう。けれど、悩んでいる彼女は恐らく俺達の後輩だ。後輩に良い格好をしたいわけじゃないけれど、先輩として少しでも力になってあげたいとは思う。


 深紅にもその気持ちがあったのかもしれない。だから、話だけでもと言う俺の言葉に頷いてくれたのだし、今も悩んでいるのだから。


 俺は痛む頬をむにむにとさすりながら、深紅に言う。


「なにか手伝えることがあったら言ってね? 俺、手伝うから」


「当たり前だ。お前には馬車馬のように働いてもらうからな」


「できれば馬車のように働きたい」


「それ引っ張られてるだけだからな? 楽しようって魂胆がまる見えだぞ?」


 ジトッとした目を向けて来る深紅に、にへっと笑みを浮かべて返す。楽したいです。


 まったくと深紅が息を吐くと、タイミングよく担任が教室に入ってくる。


 俺と深紅はいったん話を切り上げる。


 クラスメイト達もホームルームをすぐに終わらせたいらしく、すぐに静かになった。


 担任もさっさと職員室に戻って仕事を終わらせたいのか、話はあっという間に終わった。


 そうして、ホームルームが終わると、クラスメイト達は帰る準備をして教室を後にする。


「俺達も行くか」


「うん」


 深紅と俺もかばんを背負って教室を後にしようとする。


「あ、和泉! 俺達これからゲーセン行くんだけど、お前も一緒にどうだ?」


 が、深紅にクラスメイトから声がかかる。


「悪いな、これから用事があるんだ」


「お、デートか?」


「そんなとこ」


 ニッと気さくに笑ってはぐらかし、軽く挨拶をして教室を後にする。


 俺が話かけられたわけではないけれど、俺もクラスメイトではあるので、最後に小さく手を振っておいた。


 深紅に声をかけてきたクラスメイトはぎょっとしたような顔をした後、顔を赤らめながら控えめに手を振り返してきた。


 手を振るのはちょっと子供っぽかったかな? 次から気をつけよう。


「ん、どうしたの?」


「いや、別に……」


 深紅が呆れたような顔を向けてきたのでどうしたのかとたずねれば、処置なしというように首を振って言った。


 なんなんだ、いったい……? まあ、いっか。


 途中で碧を捕まえて、俺達は待ち合わせ場所の喫茶店へと向かった。



 〇 〇 〇




 学校から出れば特になにがあるわけでも無く、俺達は無事に喫茶店『リフィール』にたどり着いた。


「ねー、別に付いて行くのは良いんだけどさ? アタシいても意味なくない?」


「碧だって一緒に居たんだから、なにか良い案無いか考えてよ」


「考えたって素人の浅知恵だよぉー」


 先に店内に入り、ぶーたれる碧を窘める、というより、協力を要請する。文字通り、頭数は多いに越したことは無いのだから。


 俺達が先に来てしまったようで、彼女達の姿はまだ無い。


 先にコーヒーやらケーキやらを食べている。ちなみに、俺の奢りだ。この間のモデル代が支払われていたので、少しでも日頃の恩返しをしようと自ら言い出した。俺偉い。


 冗談はさておき、痴漢の事など色々心配をかけたので、そのお詫びだ。碧を連れてきたのは正直お詫びをしたかったという理由の方が強い。手伝いはおまけに過ぎない。


 碧には痴漢のことを話さなかったのだが、深紅が話さないと後が怖いと言って勝手に話していたのだ。そのため、碧にはかなり心配させてしまった。具体的には、毎朝迎えに来るくらいには心配させた。休みの日まで家に来たときは、さすがにもう大丈夫だからと説得した。


 その後、お茶をして普通に帰っていたので、納得してもらったと思うが……時折クラスに顔を出しては周囲の男子生徒を牽制しているので、どうやらまだ完全に納得はしてないらしい。


 ていうか、クラスの男子は痴漢なんて……いや、俺の着替えで顔を赤くするような奴らだ。油断はできない。俺はまだ別室で着替えをすることに納得はしていないぞ……!!


 ともあれ、二人にはお礼のつもりだから好きなものを頼んでいいと言ったのだ。言った、のだけど……なにも店で一番高いもの頼まなくたっていいじゃないか。しかも、碧にいたっては俺にあーんまでしてくるし、それじゃあ意味ないじゃないか。


 まあ、コーヒーは飲んでるみたいだし、良しとするか。


 ちなみに、俺はコーヒーが飲めないので、ウィンナーココアだ。ウィンナーが一杯入ったココアではない。クリーム一杯のココアだ。


「それにしても、来ないね」


 俺達が店に着いてからもうすでに三十分も経過している。待ち合わせの時間に遅れて来るなんて、ちょっと感心しない。


「ちなみに、待ち合わせは二時な」


 深紅に言われ、俺は自分の腕時計を見る。


 現在、一時三十二分。


「それなら先に言ってほしかったな!? すみませーん! このランチAセット一つください!」


 深紅に言いながら、俺はランチを頼む。お昼まだ食べてないからお腹ぺこぺこだよ!


「すまん。歩いてる途中で気付いたんだが、家過ぎてたから、戻るのも面倒になって言わなかった」


「そこは言ってほしかったな! 俺着替えたりお昼食べたりしてきたのに! 二人もランチ食べる?」


「アタシは食べるー」


「じゃあ、俺も」


「すみませーん! さっきのランチセット二つ追加で!」


 二人の分も追加注文する。マスターのおじ様は、俺達を見て微笑みを浮かべながら頷く。


 うん、相変わらず、渋くてイケてるおじ様だ。


 俺はココアを一口飲み、自分を落ち着かせる。


「今からでも着替えて来るか? お前ん家なら、ここから近いだろ」


「いーよ。面倒だし。俺だけ私服なのもやだし」


 制服は堅苦しいからあまり好きではないのだけれど、今からわざわざ家に帰って着替える程ではない。外食をするときにソースやらジュースやらがはねるのが嫌だけれど、注意すれば良い話だ。それに、堅苦しいのは、ネクタイを外してボタンを二つ程外せば少しはましになる。


 ネクタイを外してかばんの中にしまい、ボタンを二つ程外す。


「わー、くーちゃん色っぽーい」


「んなわけないじゃん」


「いやー。すべすべ肌が綺麗だよー」


「そう? 碧のお肌もすべすべだと思うけど」


「くーちゃんはもっちもちだよー」


 言いながら、俺のほっぺを軽くつまむ碧。


 そんな俺達の様子を見て、深紅は苦笑を浮かべる。


「なんか、女子会に紛れ込んだ気分だ」


「男女比二対一だけどねー」 

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