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妹のために魔法少女になりました  作者: 槻白倫
第3章 俺達はヒーロー
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第四話 メイドで御奉仕

宣告の通り、深紅の章は削除しました。


修正をしつつ、別の形で投稿させていただきます。


その際は、前書きにてお知らせいたします。

 とりあえず、幸せそうに倒れた桜ちゃんを起こし、鼻血を丁寧に拭いてあげた。その際、最初は俺がやっていたのだが、桜ちゃんの鼻血がとめどなく溢れてきたので花蓮と交代した。


 全員が席に着き、一息着いたところで俺達は食事を再開した。


 唐揚げを食べながら、桜ちゃんははぁと熱を持った吐息をこぼす。


「夢にまで見たブラックローズのメイド服姿。あ、ツーショット良いですか?」


「良いけど、ご飯食べ終わってからね?」


「わーい!」


 俺が許可を出せば、両手(もろて)を上げて喜びをあらわにする桜ちゃん。


「それにしても、よくメイド服なんて持ってたね。普段から着てたの?」


「そんなわけないでしょ? 深紅に押し付けられたの。まったく、いらないって言ったのに……」


 まあ、それでもこんなところで役に立ったのだから、少しは感謝をしても……いや、やっぱりしない。いらないものはいらない。今度深紅の部屋にこっそり戻してやる。


 心中でそんな事を企んでいると、桜ちゃんは甘えたような声音を出す。


「ブラックローズ! またあーんしてください!」


「ダメよ。鼻血出すでしょ?」


「出しません! 気合いで耐えます!」


「本当かなぁ……」


 少々不安になりながらも、俺は箸で唐揚げをつまむ。


 まあ、本人が望んでる事だし、いっか。


「はい、あーん」


「あーん!」


 唐揚げを差し出せば、ぱくっと勢い良くかぶりつく。


 唐揚げを一口で口の中に入れ、幸せそうに頬に手を当てる桜ちゃん。


「ひわあへ~」


 本当に幸せそうに言う桜ちゃん。俺にあーんされただけで幸せだなんて、幸せのハードルが低すぎる気がする。まあ、幸せを感じないよりかはましだけれども。


「姉さん」


「誰が姉さんよ」


 俺は魔法少女になることを許容はしたが、男を捨てたわけじゃないぞ?


「男の人は兄さん。女の人は姉さん。当たり前でしょう?」


「むぅ……!」


 確かに、今の俺は女の子だけど! それでも兄さんと呼んでほしい!


「そういう顔が、余計姉さんっぽいんだけどなぁ」


 ふふっと楽しそうに笑う花蓮。


 そういう顔と言われ鏡か何かで確かめようとしたけれど、隣からぱしゃりとシャッターを切る音が聞こえてきた。


 見れば、桜ちゃんがこちらに携帯を向けていた。


「ブラックローズ。こんな顔です」


 言いながら、桜ちゃんが携帯の画面を見せてくる。


 そこには不満げに頬を膨らませているブラックローズの姿があった。


「かぁいいですねぇ~」


 呑気に写真に対して感想を言う桜ちゃん。


 俺としては、俺ってこんな表情をするんだと、意外感を覚えていた。


 ブラックローズに変身をしても、別段表情の出し方を変えているわけではない。いつも通り、如月黒奈と変わらない態度を保っているつもりだ。喋り口調とか雰囲気は変えているけれど、それ以外はまったくもって変えていない。


 ということは、なにか? 俺は特に違和感覚えることなく、どっちでも、いつもこんな表情してるのだろうか? ブラックローズなら絵になるが、如月黒奈では厳しいだろう。


「もうちょっと表情には気をつけよう……」


「ええ? 良いじゃないですかぁ! とっても可愛いですよ!」


「うん、可愛い」


 桜ちゃんは裏表無く、花蓮はからかうような笑みを浮かべて言う。


 花蓮はともかく、桜ちゃんの純粋な意見を聞くとどうにも気恥ずかしい。


「今なら良いけど、男の時にやっても気色悪いでしょう? だから、ちょっと気をつけようかなってーー」


「そんなわけない!!」


 思って、と続けようとした言葉を、花蓮が大きな声で遮る。


「兄さんはだらし無い顔とか、拗ねた顔が可愛いの! 頬を膨らませてるのも可愛いし、眠そうに目を細めてるのも可愛いの! それを無理矢理抑えるなんて間違ってる! どんな理由であれ、無理した顔の兄さんは見たくない!!」


「花蓮……」


 前半はよく花蓮の趣味全開のような気がするし、なにやら可愛いを連呼されて気恥ずかしいやら納得いかないやらだけど、最後の言葉にだけは感動した。


「そっか。花蓮がそう言うなら、このままでもいいかな」


「そう、そのままで良いの。兄さんはなにも気にしないで良いの」


 うんうんとしたり顔で頷く花蓮。桜ちゃんも同意するように頷く。


 なるほど。確かに、無理した顔をしていればどんな理由であれ、親しい人は心配するもんな。


「って、変な方に話が逸れた。それで? どうしたの、花蓮?」


「ん? ああ、うん。そうだったそうだった。姉さん、あーん」


 俺に聞かれ、自分が声をかけたことを思い出す花蓮は、言いながら大きく口を開く。


 それだけで、花蓮がなにをご所望なのかが分かった。


 俺は苦笑をしながら、唐揚げを箸でつまむと、花蓮の口まで運んだ。


 花蓮はぱくりと唐揚げを食べる。


 要するに、花蓮は俺に甘えている桜ちゃんが羨ましかったのだ。だから、桜ちゃんと同じことをした。ただ、それだけだ。


「うむ、姉さんにあーんしてもらうと、より一層美味なり……」


 何かを悟ったような顔でそんなことを言う花蓮。


「分かるなり。とても美味しいなり……」


 そして、そんな花蓮に便乗する形で変な喋り口調で言う桜ちゃん。


 お互い、なぜだか神妙な顔つきをしている。


「もう一度なり」


「しかり、しかり」


 言って、ひな鳥のように口を開ける二人。


「さすがに何度もやらないよ。お行儀悪いからね」


「「えー」」


「えー、じゃありません。さっさと食べないと、どんどん冷めちゃうよ?」


 桜ちゃんの鼻血の対処でただでさえ冷めてきてしまっているのだ。完全に冷めきってしまってはせっかくの唐揚げが台なしだ。


「そうね。熱々の内に食べよう!」


「黒奈さんの手料理、余さず食べます!」


 調子良くそう言って、二人は各々食べ始める。


 俺も、唐揚げが無くならない内に食べよう。もうけっこう二人に食べられちゃってるしね。変身を解くのはその後で……ってわけにもいかないか。桜ちゃんがツーショットをご所望だし。


 この後に開催されるであろう撮影会は諦観して、俺はもくもくとご飯を食べた。





 ご飯を食べ終わり、空になった食器類を水につけた後、少しの撮影会をしてから食器を洗った。


 因みに変身を解いて着替えるのも面倒なので、メイド服のままお皿を洗っている。


 宣言通り、俺の作った料理を残すことなく食べてくれたので、食器の上は全て空。油やドレッシングが乗ってるくらいだ。


 そのことを嬉しく思いながら、袖を捲ってお皿を洗う。


「あぁ……一家に一人欲しい……こんなメイドさん、欲じぃ……!!」


「羨ましそうに見てもあげないから」


 俺がお皿を洗っている様子を眺めながら、二人がそんなことを言っている。


 二人に見られながらお皿を洗うというのも中々にやりづらい。


 ていうか桜ちゃん、最後本気で悔しそうにしてない? なんか、駄々こねる子供みたいになってるけど?


「そうだ、桜。今日はもう遅いし泊まっていけば? 良いよね、姉さん?」


「姉さん呼びは定着なのね……親御さんが良いって言えば、良いよ?」


 桜ちゃんが家に泊まるのに、特に否やは無い。布団も余分にあるし、着替えだって花蓮のを貸せば良いし。


「電話してみます!」


 桜ちゃんは即座に携帯を手に取ると、親御さんに電話をする。


「あ、お母さん? 今日お友達の家に泊まっても良い? え、お父さんが寂しがってる? 大丈夫、机の脚にでも抱き着かせておけば寂しさも薄れるはずだよ。うん。分かった。じゃあ今日は花蓮ちゃん家に泊まるね。ばいばーい。ということで、今日はよろしくお願いします!」


 電話を切りながら、嬉しそうに言う桜ちゃん。


 お父さん、とても適当にあしらわれてたけど、良いのかなぁ……? なんだか不憫に思えてきたよ……。


「分かったよ。それじゃあ、私はお風呂沸かしてくるから」


 お皿洗いも終わったので、俺はリビングを出て一旦自室に向かって着替える。いつもの魔法少女の衣装になったところで変身を解いて、部屋を出る。


「サービスタイム終了っと」


 家に泊まると決まってから、桜ちゃんは更に機嫌をよくしていたので、もうブラックローズじゃなくても大丈夫だろう。


 俺は元の姿に戻ると、お風呂へ向かう。


 浴槽に洗剤をかけ、ごしごしとスポンジで洗う。


 しばらくそうしていると、ポケットに入れていた携帯がぶぶぶと震え着信を知らせるメロディが流れる。


 一旦スポンジを置いて浴室から出る。


「はいはい、今出ますよー」


 着信音を鳴らしつづける携帯にそんな独り言を言い、泡を水で落として、手に着いた水をタオルで拭ってから携帯を手に取る。


 ディスプレイを見やれば、星空輝夜と表示されていた。


 輝夜さん? いったいなんだろう?


 輝夜とは連絡を取り合っているが、電話とは珍しい。


 何か急用でもあるのかと思い、俺は即座に応答をタップする。


「もしもーー」


『ちょっとなんでメイド服なんて着てるのよ!? 着るなら事前に言ってよ絶対見に行ったのに!!』


 ぜんっぜん急用じゃなかった。むしろどうでもいい部類の話だった。


 俺はすぐさま情報の流出元に当たりをつけると、溜息混じりに言う。


「なんでメイド服着るって輝夜さんに申告しなくちゃいけないの?」


『ワタシも見たいからよ!!』


「桜ちゃんに写真送ってもらったんじゃないの?」


『もらったけど、生で見たいのよ! それに、あーんもしたらしいじゃない! 今度ワタシの家に来なさい! 一日中奉仕させてあげるんだから!』


「そんな横暴な……」


 なんだ奉仕させてあげるって。どこぞのお転婆姫様かなにかか?


『だってずるいじゃない! 桜だけメイド服姿見られて! ワタシだって見ーたーいー!!』


「駄々っ子か!」


『だってぇー!』


 そんな声とともに向こう側でじたばたと暴れる音が聞こえてくる。それと、ちょっとなに暴れてるの輝夜と、内木さんの声も聞こえてくる。


 本当に駄々っ子のようだ……。


 俺は痛くも無い頭を抑えながら、溜息混じりに言う。


「分かった。今度見せるから。それで許して」


『本当!? 絶対よ!? 定期テスト明けの週末に予定空けとくから、黒奈も空けておきなさいよ!!』


「あ、テスト後は無理かも」


『どうして!?』


「うーん。話すと長くなるから、また今度ね」


『え、今教えてよ! 気になるじゃない!』


「でも、そろそろ休憩終わるんでしょ? 内木さんの声、こっちにも聞こえてるよ?」


 先ほどから、輝夜、時間がと少しだけ焦った声で言う内木さんの声が聞こえてきている。


「俺、ちゃんと仕事する輝夜さんの方が好きだな」


『うぅ……わ、分かったわよう。その代わり! ちゃんと後で教えなさいよ!? いい!?』


「うん、分かった」


『後、メイド服と巫女服と婦警さんの服も着るのよ!?』


「うん、分かっ……って、注文増えてない!?」


『うんって言った! 言質とったから! それじゃあね!』


「え、ちょっと!?」


 俺の抗議の声など聞かぬとばかりに即座に通話を終了した輝夜さん。


 俺は呆然としながらも、恐らく本当に今言った服を着せられるのだろうと考えると、自然と溜息が出た。

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