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3.大空の下でご飯を

「はぁ、疲れた……」


必死に魔獣の足を折って、そこから慎重にじわじわトドメをさす。

そんなことを何回も続けて約1時間。

私とフェリルは前に見つけた、何故か魔獣の寄らないそんな草が生えている場所で、転んでいた。

魔石の回収を終えたその頃には、もう私はへとへとだった。

あれだ。やっぱり戦闘は疲れる。

特に魔獣はそもそも生き物でないはずのに、やけに怯えた視線を向けてくるから、何故かトドメをさし辛くて……

そのせいでさらにゆっくりになったがきちんとトドメはさしました。

最後らへんは無抵抗になってくれたのでやりやすかった。


「クルル………」


それにしてもなんでフェリルあんな場所で震えてるんだろう……

ブラックウルフがそんなに怖かったのかな……正直ブラックウルフを倒しているときに鏡でも持ってきてあげた方が良いのかもしれない。


ちゃんと己を知るって大切だしね!


まぁ、そんなことよりも今はもうそろそろご飯にしないと……


「クルッ!」


私が干し肉を入れていた袋を開けた途端、今まであれだけ震えていたはずのフェリルが全力でこっちに飛んできて、その変わり身の早さに私は思わず笑ってしまう。

だが、そんなことを指摘すればフェリルはヘソを曲げるので、敢えて何も言わずにフェリルの身体を私の膝へと乗せる。

今からフェリルには大切な仕事をしてもらわないと行けないので、機嫌を損ねられるわけにはいかないのだ。

私はフェリルを膝に乗せたまま、そこらに落ちている丁度良いくらいの枝を拾って、干し肉とパンをさす。


「それじゃぁ、フェリルお願い!」


「クルルッ!」


そして私はその枝をフェリルの前へと差し出した。

その途端、フェリルの目の前に小さな幾何学的な模様のついた円が生まれる。


「わぁっ!」


「クル!」


そして次の瞬間その魔法陣から炎が飛び出し、枝に突き刺さったお肉とパンを炙り始める。

それはあの魔獣を全滅させていたフェリルが発動しているというのが信じられないほど精密にコントロールされたもので、思わず私は感嘆の声を漏らしてしまう。

けれども、それが仕方ないんじゃないかなんて自分で思ってしまうほどそれは綺麗な光景だった。

他にも魔獣が魔法を使っていた所を私は見たことがある。

けれどもその時はこんなにも綺麗ではなかった。

こんなに綺麗に発動しているのはフェリルだけだ!


そして私がフェリルの魔法に気を取られている間にもお肉は温められていっていた。

もうパンは焼き目が付き、魔法が止められていて、干し肉はじゅうじゅうと音を立てて表面で脂が跳ねている。

さらには辺りに香ばしい香りが漂い始めて……


「もう食べちゃおう!」


「クルルッ!」


そして私たちは早速食べる準備に取り掛かった。

と言っても、ただお肉を小さいのと大きいのに切り分け、そして小さい方をパンに差し込むだけ。


「はい!これフェリルの分ね」


「クル!」


そして大きい方を私はフェリルへと差し出した。

それで、パンもある私と丁度半分になったはずなのだが、だが何故かフェリルはお肉を受け取ろうとしなかった。

そのお肉を嘴で突っ張り、私へと渡そうとしてくる。


「ふふ」


そしてフェリルが小さな方のお肉でいいと言ってきていることに気づいた私は思わず笑ってしまう。

その気遣いが凄く嬉しくて。

気遣いどころか、心配さえ私は家族にして貰ったことはなかったから。

だからもしかしたら魔獣狩りも、資金を貯めるなんて口実にしているけども、本当はフェリルが見守ってくれていることが嬉しくてやっているだけなのかもしれない。

そんなことを考えていたら、思わず口元が私はにやけてしまった口元をフェリルに見られないように手で隠す。

あぁ、多分今の私の口元はひくひくしている。

こんな時ぐらいもう少しクールにフェリルにお礼を言いたかったのに、嬉しくてどうしようもなくて堪え切れない。


それくらいフェリルの気遣いは嬉しくて。


「ありがとう!でも、そのお肉じゃパンに挟めないから。その大きなお肉はフェリルが食べて!」


「クルル!」


だからこそ、私はフェリルにそう告げた。

するとフェリルはそのことに今気づいた、そんな顔をしてお肉を私の方へと突き出すのをやめる。


「んんー!」


そしてそのことを確かめて、私はパンへとかぶり付いた。

その瞬間、焼いてさっくりしたパンが、調味料がふんだんに使われている脂ののったお肉と合わさり、私は思わず声を漏らしてしまう。

お肉もぱりぱりして、堪らず私は二口目に突入する。


「クル!」


そんな私の様子をみて堪えられなくなったのか、フェリルもお肉へと豪快に齧り付いた。


「クルルッ!」


そして満足したのか、羽を震わせて美味しさを表現する。


「ふふっ」


そのフェリルの姿に私はまた思わず笑っていた。

今のフェリルは本当に幸せそうで、そしてそのフェリルの姿こそが私にとってはより大きなお肉を食べることよりも、もっともっも幸せなことだった。

だから、私は身体を震わせて踊るフェリルを撫でながら次ももう少し大きくお肉を切り分けてあげようそう考えて、そしてこの幸せを堪能するように、またパンへとかぶり付いた……

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