表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S-Door  作者: 海月歌
16/17

森の奪者

マンゴーって名前は可愛いよね

 気づくとマンゴーは俺の血を舐めていた。よく見るとマンゴーの爪が鋭利状に伸びていた。その鋭さは肉ごと持っていかれそうになるほどである。幸い、直撃しなかったので、軽傷で済んだのだが。

(俺があいつと戦うしかないってことか! )俺は冷静に構えを取る。それを見てか、マンゴーはなぜか顔を引きつらせる。

「俺と戦うだけでも万事に値するというのに、なんだその態度は! ムカつくぜ!! 」

 マンゴーは手に付いた俺の血を振り払い、俺目掛け突進し、右手を振り下ろした。俺はその右手に当たるように自分の靴を蹴り投げる。マンゴーはとっさに靴をはじきとばすがもう遅い。俺の電撃を喰らわせる。

 マンゴーは左手で俺の電撃を受け後方に弾き飛んでいった。倒れているマンゴーを見ると左手の爪が欠けている。これはもう俺の勝ちだ。しかし、勝利宣言はまだ早かったようだ。

 マンゴーは重たそうに体を上げる。

「ちっ……。なかなかのものだな。だが俺の爪を壊したところでいい気になるなよ?」

 そう言い放ってマンゴーは[爪]を左手に纏わせる。すると爪が伸び始め先程の鋭利状に戻ってしまった。つまり、何度も再生できるということか。

「成程な……。無限大に再生可能ということか。こいつは厄介だな。」

(しかもあいつは爪を欠いたときにまるで痛みを感じていなかった。これが一番のくせ者だ。)

「そうだ。さらにこの爪と()()で最強コンボだぜ!」

 マンゴーは[犬]の文字を体に纏わせる。するとみるみる奴の体が変化していく。

 その姿はさながら獣である。しかも獣になって硬くなりつつ爪は鋭いままである。これでは俺の電撃をしても大破することはできないだろう。これが奴のWORDコンボ!


 マンゴーはさらに速く俺を狙う。そのスピードは人間体の四倍は速いであろう。俺は電撃を飛ばすが、容易く避けられてしまった。スピードに気を付ければ対処は簡単だろうがそうはいかない。

 俺はマンゴーの猛攻をもろに受けてしまう。体は次第と赤染みていくがこちらから反撃が出来ない。WORDが出せず、両手でガードするしか防衛策が無い。間合いを取ろうとするが、奴のスピードに追い付くことがまずできない。ならば、

「はっはっは! どうした旅人さんよぉ。肉になりたくて仕方ないかぁ!?」そして奴は一撃を振り下ろす。


 グサッ! 鋭い音。その音はマンゴーの爪がセヴンスの……蹴り飛ばしたもう片方の靴を突き刺していた。

「なっ!これじゃあ右手が使い物にならないじゃあないか!」

 爪は靴をしっかりと貫いており、なかなか抜けない。そのチャンスをセヴンスは見逃さなかった。

(電気拳!)

 セヴンスの正拳がマンゴーの腹に直撃する。対するマンゴーはまともに受けたので動くことすらできず痺れていた。故に次のセヴンスの一撃必殺を躱すこともできないであろう。

(お前の負けだ、マンゴー。)

 セヴンスはWORDを振り上げた片足に纏わせ、電気を帯びた足をマンゴー目掛けて、振り下ろした。俗にいう、かかと落としである。マンゴーに直撃!


 マンゴーは苦悶の声をあげ、地面に倒れた。…………どうやら気絶している様子である。この様からもう一時間は目を覚まさないだろう。この勝負、セヴンスの勝ちだ。

 セヴンスは次に仲間の方を見た。仲間もあと一息で山賊を打ちのめしそうである。あっ、打ちのめした。

「おお! ついにマンゴーが敗れたのか! これで俺たちは!」

 仲間たちは声を荒げる。どうやら全員無事なようだ。良かった。


 **********

 マンゴーの爪でロープを切られてはまずいので、マンゴーを真ん中に山賊を囲うようにしてロープで縛る。

「いいか。ルトロシティの『魚っ!』という店だ。そこで雇ってもらってくれ。ただし、ほかの店に浮気なんかするんじゃねえぞ。わかったな。」

「はい、セヴンスさん。浮気するのは女だけにします。」

「お前、彼女いないだろう。」仲間からのツッコみ。ナイスだ。


 暖かいそよ風が鼻孔をくすぐる。妙に心地いいのだが、同時に風は俺を強く前に押し出すようだ。

「じゃあ行くわ。またどっかで合うかもな。」俺は別れを告げる。

「待ってくれ。俺もその旅についていっていいか?」

 そう言ったのはテッカン。いったいどうしたのか。魚屋で働くのが嫌なのだろうか。

「いいぜ。でもちょっと破天荒な旅になるかもな。」

 テッカンは二カッと笑い、荷物を持ち、仲間とお別れをしてきた。……仕方ないな。

 そして俺たち二人は森の中を歩き始めた。森がささやくようにさやさやと揺れた。



 **********

 暗く影もない部屋たちが間隔的に並んでいる。廊下にだけ照明が許されており、部屋の中と廊下はまるで別次元である。

 ここはとある刑務所。C級以上の凶悪犯罪者が収監されている。まさに凶界

 その廊下には携帯剣を携えた黒髪の青年、ライトが歩を進めている。その目的はとある人物に会うためである。その人物とはライトを苦しめた爆弾鬼。

「バング=ボーン №14541」

「バング=ボーン、聞きたいことがる。俺の声は覚えているだろう。」

 特殊な素材で作られた拘束服を着せられた男が反応する。

「アァ…………。忘れたことは無いぜ。毎晩貴様の声がチラつくんだよ。」

 そう言って男は顔を上げる。それはかつての爆弾鬼の面影ではない。男の肌はただれ、目は白く濁り、鼻は削れている。これは奴自身の能力でこうなったのだが、やはり痛々しい。


「そうか。ではいくつか聞くぞ。まずお前は反国集団、『誓黒』のメンバーだと聞いた。奴らは何を企む。そしてなぜ、ルトロシティを攻めた?」

「まあ、隠す必要はないか。それはな、文化の中心街であるルトロシティを火の海にするためだ。そして俺は『アルファ』の直属メンバーではない。」

「何だと?それではお前はいったい。」

「まあ正確にいえばそいつらの部下という事だ。俺はそいつらの命令で今回は動いた。話は以上だ。今日は帰れ。」

 そう言われライトはバングの顔をもう一度見て去って行った。しかし、バングは暗い部屋の中で二つ目の顔を露わにしていた。

(ストロウムさんが助けに来てくれる!!! あのキザな警官をぶっ殺してやる!!)

 凶悪の声が鳴り響く。凶界とはまさにこういうことである。




ボッブス=アンツィーネ 年齢:10歳

WORD:火

ライバル:ザック=ナップ

特技  :剣の指導

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ