鉄くず
新たな敵の『奪者』が登場です。
目の前のテッカンは戦わなければ今日は生き残れないと言った。どういうことだろうか。
「俺たちは山賊。ボスに戦利品を渡さなければ、即処刑だ。だから、俺たちは毎日を懸命に生きているんだ。」
テッカンの一言に仲間も頷いている。そんなバカげた話が真実だということなのだろうか。だとしたら彼らはどんな過酷な環境で生きているのだろうか。
「この世界は貧困層であふれている。俺たちもその中の一人っていうわけさ。仕事もなくここへさまよっている。つまり、社会のクズってやつだ。」
確かマジアが言っていたな。だが納得できない。自分をクズと蔑むことも、この世界が貧困の問題を放っていることだ。
「なあ。それでもさ、お前とは戦いたくない。」
「…………なんでだ。戦うしか道はない。」
違う、もっと考えろ。自分で諦めているだけなんだ。道をなくしているにすぎないんだ。
「道はある。お前ら、山賊辞めて働け……。」静かなる急所を貫く。
テッカンと仲間は予想外だったようで戸惑っている。これがこの世界の常識なのだろうか。
「ほかにどんなツテがあるんだ。俺たちは革命を待っていればいい。」
「革命がくるとは限らないだろう。それに、ツテならある。」
ツテという言葉に反応したテッカンとその数名。倒れていた山賊もそれを聞いていた。
「知り合いに人手不足を抱えている魚屋がある。セヴンスの知り合いと伝えれば、話は通るだろう。」
「それは本当か!?」数名の山賊が言う。テッカンもまたその然り。全くもってイエスだ。
「俺たちはどうすれば……。」テッカンは完全にゆだねている。ようし、この距離だ。
「俺はお前が本当にクズだったならば、何も言わなかっただろう。だがテッカン、お前には強い芯を持っている。だから言ったんだ。なあ、いい加減迷宮をでてみないか。」
テッカンは深く考えている。俺の言葉が少しでも届くといいのだが。そして奴は答えを出した。
「…………わかった。こんなことを言われたのは初めてだ。だが、仮に抜けるとしてボスがだまっていない。魚屋の件も俺たちが山賊だとすれば警軍に引き渡すだろう。」
やはり、用心深さをもっているか。まあそれも当然なのだろうが、やはりこの男はかなり固い芯を持っている。だが俺はテッカンと、またその仲間と友達になりたい。
「大丈夫だ。俺を信じてくれ。」俺はまっすぐテッカンに投げかける。
「……そうか。疑ってすまなかった。みんなも異論はないか?」よかった。伝わってくれた。
「もちろんだ」 「いくぞー!」 「働くぜ」 などかつての山賊は意気揚々になっていく。みんなの目にはわずかだが灯がともっている。あとは……。
「よし、じゃあお前らのボスと話すか。」
懸けてもいいかもしれない。テッカンは心の内を淡色に染め上げる。テッカンは思った。この男は世界を変えてくれるかもしれない、と。
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「アァ? グールを抜けたいだぁ?」
そう発したのはグールのボスである。いかにも怒りをあらわにしているが、恰好はみずぼらしい。なぜかそれがお似合いに感じるのは自分だけであろうか。
「ああ。俺たちはこの旅人と進んでいくことを決めた。というわけで抜けさせてもらうぞ。」
テッカンはかつてのボスに強気な発言を取る。仲間もボスに睨むという対抗をみせる。さてこのボスがこの対抗をどうとらえるだろうか。
「くっくっく。いいだろう。抜けるといい。」
おお! どうやらあっさり許しが出たようだ。しかし何をもって奴はニヤニヤしているのだろうか。その理由は次の奴の一言に凝縮されていた。
「おいお前ら! 今日は人肉パーティーだぜぇえ!!!!」
そう言って山賊が俺たちを取り囲む。この男、かつての仲間を……。
「グールをコケにしたんだ。この俺、マンゴー様がお前らを喰ってやるよ。」
山賊は一斉に襲い掛かる。危機的状況だ。というかボスの名前が可愛いな。マンゴーって。マンゴーって。
俺そう考えていた内に山賊数名が向かってきた。剣を持っているせいか、WORDは使ってこないらしい。俺は剣を躱し反撃する。相手の実力は全員日本のヤンキーと何ら変わらない。ただ相手の武器が鉄パイプから剣に変わっただけである。俺は余裕で山賊を打ちのめし、ほかの仲間を見た。
仲間数名は背中を預けながら、戦っている。テッカンはなにやら鉄腕で戦っている。鉄腕が直撃した敵は大きくふっとばされている。テッカン普通に強いな。
俺は仲間数名の方に助太刀しようとしたその時、
ザシュッ! 鋭い音! これは……腕に傷が!!
「旅人さあん。美味しいなあ……。」
人物紹介
フレムグ=アンツィーネ 年齢:41歳
WORD: 炎 創
趣味 : 川釣り
友人 : マジア=ショー(魚屋の店主)




