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S-Door  作者: 海月歌
セヴンス=アンツィーネ
13/17

いってらっしゃい

冬休みです!久々に投稿ラッシュです!!!!

 《セヴンス》

 午後六時、いつもの夕飯の時刻である。俺は今、カレーライスを食べている。そして、この時を今に至るまで待ち焦がれていた。俺は三人を見まわす。

「今日のカリーライスは一段と美味しいね。」とボッブス。口周りに白米を付けている姿が可愛らしい。

「おかわりもあるわよ。」と言うサナエさんに、それに即答しておかわりをもらうフレムグ。いつもの日常である。今日になってこの毎日がこんなにも温かったのかと俺は気づいた。

「なあ、みんな。少し話があるんだ。」ついにこぼしてしまった。

 三人は不思議そうな表情でこちらを向く。まあ当たり前だ。

「俺は散々三人に世話をかけてしまった。明日の朝、俺は旅に出ようと思う。日本にも帰れるかもしれないしな。」次々出てくる勇気の水を飲みほしていく。そして飲み干してしまった。


 静まる時間。燃え上がる暖炉の火。おかわりされたフレムグのカレーライス。

 一番始めはフレムグだった。

「いいんじゃねえか。ここにいても何も進まないしな。」少しばかりか淡泊である。

「少しばかりか寂しくなるけどセヴンス君のためよね。」サナエさんは寂しそうな表情をしていた。

「お兄ちゃんと過ごした時は全部楽しかったよ。」ボッブスはにこっとはにかむ。白米はまだついていた。俺は米がついていることを指摘すると、慌てて取ろうとする。

「話はそれだけか。なら一言いいか。」俺は頷く。

「セヴンス。お前はもう俺たちの家族だ。俺たちアンツィーネ家の一人だという事を忘れないでくれるか? 」

「ああ。今までありがとうございました! 」

 俺は立ち上がって深く頭を下げた。胸が苦しくなるような衝動を抑えようとするが、体は震えてしまった。ここにきてまで俺は三人に気づかわせてしまうのかと思うが、最後の甘えとして自分を許した。


 *********

「えっ! あのバングを捕まえたのか!?」フレムグが心底驚くような表情に変わる。どうやらC級の犯罪者は世界中に轟いているらしい。

「指名手配犯だぞ。よくいけたな。ひょっとするとお前、かなり強くなれるんじゃねえの。」

 そのつもりだ。日本に戻るためには様々な試練がくるはずなのだから。

「すごいや! もう僕は抜かされちゃったみたいだね。」とボッブス。

「そんなことないぞ。お前の走りも良かったぞ。」

「負けちゃったけどね。次の文化武闘会に向けて頑張らなきゃ。」

 文化武闘会? なんだそりゃ。困惑した表情になってしまう。

「学校が主催する文化祭と武闘会のことだ。マラソン大会と警軍の入軍パレードと並ぶ街の三大行事の一つだ。ちなみに二日間やるぞ。」フレムグが説明してくれた。

 なるほど、楽しそうだ。さては武闘会であの子ににリベンジしようとしているな。

「開催日が近くになったら連絡するよ。ちなみに自身の屋台も出せるからフランクフルトでも売ってみたら?」ボッブスは笑顔でお金のあのジェスチャーをする。やめなさいっ!

「わかったわかった。その日になったら会いに行くよ。」

「約束だよ? 絶対に来てね!」

 ボッブスが子供らしくはしゃぎだす。そんな光景につい笑った。そんな時間にごちそうさまをした。



 朝だ。持っていくものをリュックに詰め、玄関に向かう。そこには三人が待っていた。

「じゃあな」、「がんばってね」、「地図を持っていきなさい」。そんな言葉に耐えられそうになったので、最後に全重みを乗せ、

「行ってきます。」俺は返事も聞かずに家を飛び出す。とうとう耐えられなかったからだ。俺は泣きながら草原を一人歩き始めた。







 ************

 真っ暗な世界にいくつかの廃墟が影を残し弱弱しく立っていた。ある廃墟の中には人間が数人座っていた。

「今日は少ないな。他はどうしたんだ。」奥の青年が言うそれに答えたのはマフラーをかけた銀髪の青年であった。

「ベアームは遅刻で、キュウビは原因不明。もう一人は忙しいからね。」

 それに筋骨隆々の男が反応した。

「どいつもこいつもちゃらんぽらんだぜ。おいウォルテイン、少し痛い目みせた方がいいんじゃないか?」男は奥の青年ウォルテインに投げかける。

「それも一理あるが、俺たちは仲間だ。そういう考えをもっていると滅ぶ。違うかトラリオス?」

「まあそうだけどよぉ。ストロウム、てめぇはどうだ。」

 筋骨隆々のトラリオスは次に赤髪の狼のような人相のストロウムに投げかける。そこまでして同意をもらいたいのか。

「俺もウォルテインに賛成だ。第一ウォルテインがリーダーなのだからな。言う事は絶対だ。」

 その言葉にようやくトラリオスは諦めがついた。一段落ついて銀髪シウが痺れを切らしたのか、

「それで、今日はどうしたんだい。何か重要なことでも?」とウォルテインに聞いた。

 シウの左にはのっぺらぼうの仮面をつけた人間が座っていた。奴もこの集団の一員なのだろう。

「ああ。ついにこの時が来た。愚国に神罰を下す時がな。」

 その言葉に全員が反応する。全員からは闘志が滲み出ている。

「俺たちはこの闇の中をさまよい続けた。ならば光をつかむ権利があるはずだ。同胞よ、全てを捧げ、この国を光へと導こう。」

 トラリオスやストロウムは嬉々として叫ぶ。シウやその右にいるおかっぱの女の子(メタルアイ)も叫びこそ発さなかったが、うれしそうな表情だ。


 咆哮に目を覚ました月が彼等を照らす。『誓黒』なる集団を狂狼に変える月光である。ウォルテインは月を見上げ、掴むように手を翳し彼らにとっては偽物の月を握りつぶした。




一章が完結しました!!!! ありがとございます

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