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S-Door  作者: 海月歌
セヴンス=アンツィーネ
11/17

無則の闘い

 《セヴンス》

 ある空間内では、ライトと爆弾鬼が戦っているが、こちらはまだ両者とも動く気配はない。

 こちらにはエトロリオットという仲間がいる。だが、前にもいった通り彼はどう見ても戦闘向きではないな、という勝手な偏見をしてみる。


 敵は三人。全員フードを被っている。こんな晴れた日に暑くないのかと、時折心配してしまうが、それは己がいまだに平和ボケしていることを実感させられた。俺はもう分かっているはずだ、この勝負にルールなど存在しないと。

 俺は一歩を前に踏み出す。同時に俺から一切の音が遮断された。この不利と思われる局面をどう切り抜けるか、それを考えなければならない。


 先手はフード達。三人は右左前に各ちらばり、俺に向けて[鉛]を具現化する。

(((必殺、鉛三連撃!)))

 鉄のように重い鉛が三方向から襲う。この鉛に直撃すると最低でも骨が折れるだろう。


 俺は一つ一つに対処することもできないので、全ての鉛を躱そうとする。しかし、敵はこうなることを予め予想していたのか、鉛のコースは計算されていた。二つは躱したが、残り一つが俺に、かかったなと言わんばかりに襲ってくる。鉛は俺に直撃する。そうなる未来を無理やり変えたのは、エトロリオット。彼は俺を鉛から庇い、片腕で受け止めた。鉛は威力を失い地に落ちるが、エトロリオットも吹き飛ばされる。このとき、彼の骨からの鈍い響きが俺に己の慢心さを知らしめていた。

 俺はとっさのことに体を動かせないでいたが、すぐに彼のもとに駆けていく。ボロボロになりながらも彼は俺のことを心配するかのような言葉を出す。これを聞いて、俺は実感した。

 (何が非戦闘向きだ。めちゃくちゃ恰好いいよ、あんた。俺は勘違いしていた。WORDが全てではない。人間の強さこそがそのままに繋がるんだ!)



 俺は敵へと振り返る。そして能力を発動する。俺の周りに電気が発生する。

 フード達はこの展開を予想していなかったようで焦っているように見えた。

「この男、早急に抹殺しないと、バング様に御手をわずらわせてしまう、いくぞ。」

 フード達は再び俺を苦しめた三連撃を仕掛けてきた。だが、もう俺は慢心しない。冷静になろう。この場において一番の打開策は……。

 鉛が三方向から発射される。計算されたコースからは逃れることはできない。

 だからこそ俺は逃げなかった。一か八かの大博打の覚悟で、電気を鉛にぶつけた。


 強い力を受けた鉛は反発され、持ち主に帰ってきた、逃げ場のない持ち主たちに。

 鈍い音が響く。フード達は地面に伏せたまま、痛みを感じていた。骨が折れたのだろう。これではもうWORDは使えない、俺たちの勝利だ。

 俺はまたエトロリさんのもとに駆けよる。

「大丈夫ですか、エトロリさん!?」

「ええ、それにしてもお手柄でしたね。」

「いやいやあなたの手柄です。助けてくれてありがとう。」

「いいんです、さて一段落ついたところで、もう一役お願いできますか。」

 エトロリさんは俺に微笑む。何かを期待してい

るのだろうか。とにかく恩人の頼みには応えたい。



 《ライト》

 一方、俺は大玉と対峙していた。『爆弾鬼』バング、奴の能力には中和性が原理とされていた。奴にはもう冷静でいさせる理由はない。だから怒らせるためにあの余裕の表情で話したり、勝利宣言を出しておいた。奴には忠告をしておいたが、おそらくWORDを使ってくるだろう。俺を絶対的に殺すために。

(奴は使うか、いや絶対に使ってくるだろう。奴は『爆弾鬼』なのだから。)

 案の定、奴は[爆]を使ってきた。この威力はとてつもないが、こちらが冷静に判断して避ければダメージは入らない。そのための挑発であった。

 当初は優勢だったが、奴の思考力は挑発で使い物にならなくなるほど、お粗末なものではない。

 バングはフェイントを交え、本命の[爆]をだした。俺は対処しきれず吹っ飛ばされる。

 (読んでいるのか…………大した頭だ。)

「バレバレだぜぇ。経験というものがいかに差を開くか、よくわかったろぅ?。今までは俺様の演技。あのうざい笑みも消えたなぁ。絶望中かぁ?」

「だからさっきも言ったろう。俺は倒されない、負けるのはお前だと。」

 俺は吹っ飛ばされる前に[風][流]という風を操る能力を使って受ける爆風を最小限に抑えることができた。つまりこの技は守備能力。永久に守り続けることができる。

 今、アスファルトの地面がぼこぼこになっている状況で[爆散]は使えない。こちらも動きにくくはなるが、それは相手も同様。むしろ奴の方がデメリットを抱えている。そしてバングの能力の原理を崩せば、完全勝利だ。



 バングは[爆]をライトに繰り返し放つ。WORDを使うな、というものはすでにハッタリと踏んでいた。ライトも対処を繰り返し、WORDの差を少しでも埋めようとする。肉弾戦は五分五分なのだが。

 バングは一撃を与えようと壁を踏み台にして、ライトを蹴り上げようとするが、これは迂闊であった。

 ライトの[風]によって大きく吹き飛ばされてしまった。

(ちっ、肉弾での俺様の呼吸を読みきっているだと! 奴は能力で鉄壁の守りを敷き、俺に能力を使わせることを諦めさせて、肉弾戦に持ち込もうとしている。これがあの野郎の勝ちパターンだ。だったら、能力を使ってやるよ。」

 バングは、蹴りや拳を囮とし、本命の能力を出す機を狙っていた。

(あの野郎の防衛技術は高い。故にその戦術に頼り切って、勝ちパターンを減らしていくんだ。奴はきっとカウンターを狙っている。だから、仕掛ける、カウンター読みの!!)

「爆弾を!!」

 バングは叫ぶ。ライトはそれを聞いて今度は確信したように心の中で、笑う。


「[界閉]。」

 その声と同時に電撃が放たれる。電撃はバングの爆心源に当たる。そして奴の中和性は崩されて、奴は、

「なにっ!やめろ、まさか――――――」

 その一言が最後となり、コントロールできなくなった爆炎とともに、爆発した。

 ライトはやはり前もって[風流]によって威力を弱めていた。が、元の威力が強すぎたために残った建物の壁に打ち付けられた。バングは形は残ってあるが、片腕を失った。これが悪の末路である。



 《セヴンス》

 バングとフード達は三時間後に警軍によって連行された。一応生きてはいるが、これからはじまる拷問によって殺されるだろうとライトは俺に伝えてきた。

「今日は本当にありがとう。君のおかげでなんとかこの街を守れたよ。」

「俺は何もしていない。それよりも俺はライトとエトロリさんに出会えたことが良かったよ。」

 俺の一言にライトは微笑して、

「いずれまた会うだろう。その時はまたなにか頼んでしまうかもしれない、なんてね。」

「はは、まあそれじゃまたな。」

 《ライト》

 セヴンスは去って行った。俺は君と会ったとき、もう頼らなくてもいいくらいに強くなってみせるから。

 俺は決心する。強くなろうと。

 一方エトロリオットは病院で一週間くらいを過ごすのであった。




風流は風の流れを操るてきな感じでとらえて下さい。まあ彼には俳句が上手という設定はつけておきましょう。

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