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S-Door  作者: 海月歌
セヴンス=アンツィーネ
10/17

疾風と疾走

PC版が縦書きができるようになったのですが、見にくいですね。どうしようか。


『爆弾鬼』のバング、その名は、国中に轟くほどであった。その実力は、警軍の隊長と善戦できるレベル、つまりかなり強いことになる。

 奴はいままで二百三人を殺害し、それもすべて爆発による殺傷である。右頬には龍のタトゥーがはいってあり、体格は大柄で、手が長い。

 実に凶暴な人相でライトを睨む。対するライトは構え、勢いよく突き刺しに来た。バングはそれをたやすくかわす。容易くである。赤子の手をひねるように。


 なぜか、それは経験の差である。ライトの繰り返される剣撃は見事といえど見切られてしまう。だから、バングには解ってしまう、この剣撃が()()()()()()()

 ライトは剣をバング目掛けて投げた。左手に[風]を出して。

 勢いよく風が吹く。それにより剣も加速された。これで等間隔がずれ、受け身を取る前に刺せる。

 その案はよかった。並の相手になら一撃必殺だろう。しかし、敵はあの『爆弾鬼』。[爆]の文字を使い、手を前に広げ、自身の眼前を、爆発させた。


 およそ、一メートル程の射程だが、威力は十分であった。さらに伴う爆風により、剣の軌道がずれ剣は石ころと化す。これはライトにとって予想通りだった。だったのだができればこれで終わってほしかった。



 ********

 舞台はマラソン大会、観客がにぎわう中、二人の少年が競っている。茶髪の子がボッブス、黒髪の子が、ザックである。二人ともライバルには負けたくないのか真剣である。

 この競技はWORDで相手を妨害できる変わったレースであり、少年らの後ろでは、能力による争いが絶えない。もちろん観客が妨害するのは禁止事項であり、これは選手同士の闘いなのだ。

「負けないよっ、ザック。」ボッブスは息を切らしながら、そう宣言する。

「俺が勝つ、そう言ったろっ!」ザックもまた息を切らしている。

 ザックは[疾]をだし、体に纏う。次の瞬間、彼の一歩が疾風のごとく速い。あっという間に、ボッブスと差が開く。ザックは再び余裕の表情を浮かびながら走り去っていく。


 ボッブスはザックの戦術に感心しつつもお得意の火事場の馬鹿力で加速していく。その差は徐々に縮まっていく。ザックの能力は永続じゃないからだ。

 ザックもまた十分に承知している。だから効果が切れると、すぐにもう一度WORDを纏う。

 WORDは非常に体に負担をかける。だから効力が永遠に続くということはどんな能力者であっても不可能に近い。ボッブスはそれを知っているから、あえて温存している。ザックもWORDの基礎を知っているだろうが、彼はああ見えて非常に激情家であり、目の前のことに精いっぱいになる。そこを直せば彼はもっと強くなれるだろうが、どうだろうか。



 *********

 マラソンで熱中の渦中にまた、静寂を好むものもいた。その一人がユキノであった。服屋の奥の部屋には彼女と以前セヴンスを案内した三つ編みの女性が座っている。

「まったく、サナエはどこへ行ったの?」ユキノが子供のように駄々をこねる。

 間髪入れずに三つ編みの女性が、

「息子さんの応援で抜けておりますよ。まあ、こんな時に服屋に寄る客はいないから、人手不足にはならないでしょう。」

「あーつまんない!ねえレイラ、遊ぼーよ。」

「いいですよ、何をいたしましょうか。」

「昼寝ごっこしよ?」

「………………………まったくいつまでも子供のままでございますね。ハル先輩?」

「いいでしょ、久しぶりの来訪にはしゃいじゃって眠くなっちゃった。」

「仕方がないですね、じゃあ少しだけ。」

 2人は布団の中へ。すやすやタイム。ユキノは羊を0匹、レイラは50匹数えて、やっと眠ることができたのであった。


 ドッカーンンンンン!!!!

 ******

 大きな爆抜音。しかし、それはある空間でしか聞こえない静の音である。

 ライトとバングはしばらくの間、拳で戦っていた。ただ、双方ともWORDを警戒している。

 バングは能力の関係上、能力をばんばん使った方が有利になるのだが、奴はライトの能力を最後まで見ていない。つまりもし、ライトが反射能力を持っていたらこちらが大深手を負うからだ。


 警軍は二つの強みを持っている。一つは集団戦法。もう一つは情報力。相手の能力がわかることは対策が立てられるということ。ライトたちは緊急指令だったため情報力が不足したまま戦っているが、普通なら、相手を確実に捕えるために対策を用意するのが、鉄則なのだ。


 バングはこのことを知っている。緊急であること以外は知っているのだ。だから、自分用に対策が立てられているだろうと考えるのが最も冷静な判断なのだ。そしてバング、有効打を思いつく。

 ライトは肉弾戦の途中で気づいていた。バングの一連の深読みに。

 (奴は冷静さを兼ね備えており、これは経験からくるものだろう。だからこそWORDをあえて使わない、まだ思わせることこそ、勝利のカギなのだ。)

 ライトはある時間稼ぎをしていた。仲間の応戦のためのものである。そのことばかりを考えてしまって他に反応が遅れてしまった、バングのWORDによる攻撃に。

(なにっ!WORDだと!)バングから基となる[爆]ともうひとつの文字が隠れている、この文字からなる合体技、[爆散]である。

 (くっ![風][流]!)ライトは慌ててWORDを出すが、遅かった。

 バングは[爆散]のエネルギーをもった右手を地面にたたきつける。

 爆発が広がるのは、一瞬のうちであった。同時に周辺五メートルが半壊になっている。レンガ造りの建物もぐちゃぐちゃに崩れていった。


 ライトに爆発と爆風が襲う。バングとは五メートル差。死に値するほどの威力を受ける。並の使い手でもこれは防げないだろう。

 だが、爆煙が晴れる中、警官は制服がボロボロになりながらも、立っていた。息が絶え絶えになりながらも、大きな傷はもらっていなかった。

 バングはこれで確信した、敵の能力は反射じゃないと。おそらく風で爆炎を止めた、中和させたことになる。俺の爆発と同じ原理だ。WORDは負担がかかる。息が絶え絶えなのが良い証拠だぜ。奴は守り一方の攻めなし戦術。体術は申し分ないことから、風で守り、拳で攻撃する戦法なのだろう。要するに近距離戦!

「てめえの技は見切った。もうこの俺、バング様には勝てねえよ。」

 だが、ライトはバングの勝利宣言に笑みを浮かべ、

「勝たなくていいんだ。だけど負けることもない。だからこの勝負は君の負けだよ。

「あ?何言ってんだ。さっきの爆発で頭がイカれたか。」

「いや、イカれてなどない。俺は街を守れればそれでいい。君は負ける、これはもう揺るぎない事実なんだ。残念だよ、君の思考力がその程度で。」

 頭に血が上るバング。聞いていてイライラする。愚民の笑い声よりも、天使の囁きよりも、俺はこの劣勢のくせに余裕の表情の男の一言が、無性に、イライラするんだよううううう!

「てめえは灰も残らず殺してやるっ!」

「じゃあ忠告だ、この戦い、もうWORDは使わない方がいい。」

 青年の笑みは崩れない。


すやすやタイム

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