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第一話「魔砲少女 結乃すくらんぶる!」③

 「解った……けど、武器とかって、なんか無いの?」


 刀持った相手に素手でグーパンとか……ちょっとしんどいよ?

 剣道三倍段って言うくらいだし。


「んっと、結乃ちゃん……薙刀やってたんだっけ? そうなると長物の方が扱い慣れてるって事だね……なら、この辺でどうかな?」


 目の前に雲みたいなのが湧いてきて、柄が長い斧みたい感じの形になると、そのまま地面に突き刺さる。

 これは……いわゆる矛槍とかハルバードとか言うやつ……ゲームで見た事ある!

 

 長さは2m位あって、私の身長より長い。

 これだけあると狭い空間だと取り回しが大変なんだけど……ここは開けてるから、思い切り振り回せる!


 持った感じもさすがに、競技用なぎなたとかと違って刃の部分がずっしり重いんだけど、そこはそれ……握る場所を変えて、バランスのいいトコを持ったり、必要に応じてグリップを変えてリーチを調整する。

 

 変幻自在のリーチと間合い……それが、なぎなたの真骨頂!

 

「いいね……そう言えば、武器とかじゃんじゃん作れる能力があるんだっけ! どこまでやれるか解かんないけど……やってみる!」


 そう言って、私はハルバードを手にとって、脇を締めて正面に構える……いわゆる正眼の構えを取る。

 一応、基本中の基本みたいな構えだけど……攻防一体のスタンダード故に最強とも言われる構え!

 

 私の構えに応えるように八相の構えで刀を振り上げた4体ほどの侍が一斉に正面から間合いを詰めてくる。


「おお、構えはちゃんとしとるなぁ……でも、薙刀に八相で突っ込むって、その時点で解っとらんね!」

 

 大きく踏み込みながら、突き! まともに胸のあたりに食らった一体が吹っ飛ぶ!

 更に右へなぎ払って一体! 返す刀で左へ振り下ろして、もう一体に叩きつける!

 

 たちまち、二体が半分になって爆発したように吹き飛ぶ!

 更に勢い余って地面を叩いた瞬間、地面が爆発してその土砂を浴びただけでもう一体が吹っ飛ぶと紙切れになる。

 

「あ、あれ? なんか弱くない? こいつら……」


 思ったより呆気なく倒せてしまって、思わず呆然。


「いや……結乃ちゃんが凄いんだよ……なに、今の動き! すっごい!」


 肩の上でクロちゃんが驚いたような声を出す。

 いや、驚いてるのはこっちなんだけど。

 

 身体が軽いなんてもんじゃない……何と言うか、吸い込まれるように身体が動いてしまった。


 力加減を間違って、武器に振り回されそうだったんだけど、力技で押しとどめてしまったし、反応速度も尋常じゃない!


 なんか、敵の動きがスローモーションみたいになってたし!

 

 な、なんじゃこりゃーっ!

 

 更に、5体! 後ろから向かって来る! 今度は刀を地面に向けて、ナナメに構える脇構えでの突撃!


「だーかーらー! そんな隙だらけの構えで突っ込んでくるとか、お前らバッカじゃろー!」

 

 瞬時に振り返りながら、柄の方に持ち直し相手の左側、下段から足元を薙ぎ払う!

 

 全員まとめて足を砕かれて、後ろから来てた奴らは文字通り秒殺!


 と言うか……こいつら、一集団が一斉に同じような動きをする上に、決められた動きしか出来ない感じ……今のだって、反応すらできなかったみたいだし……。


 こんなじゃ、道場の小学生とかの方がよっぽど手強いよ?

 

「次っ!」


 そう言いながら、気配を感じて、顔を動かすと矢のようなものが通り過ぎていった。

  

 見ると20mほど離れたところに弓を構えた、やはりお侍みたいなのがズラリと並んで、矢を放ってくる!

 

「ちょっ! 弓矢とか反則じゃろーっ!」


「大丈夫! わたしが止めるっ!」


 クロちゃんがそう言うと、空中に半透明なラップみたいなのが現れる。

 矢はそれに当たると、呆気なく跳ね返される!

 

 更に正面から5体並んで突っ込んでくるけど、それも薙ぎ払っておしまい!

 と言うか、大きく振った余波だけで相手が吹き飛んでしまった……。

 

 思ったよりも無茶苦茶だった……。

 

 けれども、敵も接近戦では分がないと判断したのか。

 攻撃パターンを切り替える!

 

 今度は、弓持ったやつが次々と地面から湧いてきて、四方八方から矢が放たれる。

 

 数が多い! クロちゃんのバリアーみたいなのが全部止めてくれてるんだけど。

 守ってばかりじゃ、いずれジリ貧になるのは目に見えている!

 

「ク、クロちゃん! 魔法とかでなんとかなんないの!」


 ここは思い切って、突っ込んでいくしかないかもしれないけど。

 さすがに、飛び道具相手だと躊躇してしまう。


 いくらなんでも、薙刀と弓矢なんて、異種格闘技戦なんて経験ない……。


「うーん、結乃ちゃん……さすがに拳銃なんかは触った事無いよね?」


「平和な日本の女子中学生にそんな経験ある訳ないじゃろ……と言いたいけど。VRゲームでならあるよ! ガンフロとか言うやつ! ゲーセンでちょっとやった程度なんじゃけどね!」

 

「ええっ! ガンフロってゲーセンにも進出したのっ! な、なんか進歩してるんだね! でも、ガンフロ経験者って事なら、ぶっつけ本番でもきっとなんとかなる! よし、じゃあ……こうなったら、こいつでやっちゃえっ!」


 クロちゃんがそう言うと、ハルバードが消えて、その代わり空中に何処かで見たような拳銃が二丁現れる。

 すかさずそれを拾うと、手近な木の陰へダッシュ!

 

「クロちゃん……これ何? どっかで見た事あるような気もするんだけど……。」


「ワルサーP38! 三代目怪盗の愛銃って事で日本でも結構有名! 弾の心配なんて要らないから、もうバカスカ撃ちまくっちゃえ! 構えと撃ち方くらいはわかるんでしょ? なら、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるって!」

 

 クロちゃん、何だかノリノリ。

 そういや、その銃の名前、エンディングテーマの歌詞にもなってたよね。

 私だって知ってる。


 だけど、ここは一言、言わせて欲しい。


「ねぇねぇ……ここは魔法とかで炎の矢ーっ! とかやるとこじゃろ? 拳銃片手にガンアクションってなんか違くない?」

 

「やっぱそう思うよね……わたしも何でこんなになっちゃったんだか……。わたしも、派手にファイアーボールッ! とかライトニングーッ! バリバリーッ! とかやりたいんだけど、出来ないんだよね……実は、物理で殴るのが基本なの……。じゃあ……ここはちょっと、魔法少女っぽく変身でもしよっか! 制服のままで戦って、汚しちゃったら困るだろうし……。それに、実はさっきから肩の上だと、振り落とされそうになってちょっと大変なんだっ!」

 

 クロちゃんがそう言うと、クロちゃんの姿が霧みたいになって、私の身体にまとわり付く。

 

「んじゃ、いくよー! 来たれっ! 夜の闇よりもなお深き闇……夜天の星空をも穿つ闇! ほらほら、結乃ちゃんも、わたしに合わせて思い切り決め台詞を叫ぼうっ!」


 なんかゲームとかアニメな感じのクロちゃんの謎口上が始まった!

 そうだね……ここはやっぱノリノリでいかないと!


「「……深淵の果てより来たりて、我が敵を討つ刃陣と成せっ!! 黒の節制、ここにありッ!」」


 一瞬ピカッと光ったと思ったら、私のカッコがクロちゃんみたいな黒い軍服みたいな姿になってた。

 

 帽子とスカートに大きく「ⅩⅣ」ってギリシャ数字が入ってて、なんともカッコよかった!

 

 けど、私……一瞬裸になってた気もするんだけど……気のせいだよね?


「おお、なんか……カッコイイ!」


 思わず、その場でくるりと回ってみる。

 ロングスカートとか普段履かないけど、思ったよりも足も動かしやすい。


『ふふん……この姿はね……「黒の節制」って言うんだ! ちなみに、わたしは今、結乃ちゃんと一体化してるような状態。これならもう防御は完璧だし、わたしの本気モードを結乃ちゃんも使えるはず。……銃も弾切れになったら、どんどんポイしちゃっていいから!』

 

 どこからともなくクロちゃんの声。

 声でない声……頭の中に直接響くような感じ。

 

 そんな事をやってるうちに、左右に回り込んでた武士が同時に現れる!

 

 タイミングを揃えて、同時に刀で切りかかってくるんだけど、とっさに腕で受け止めたらあっさり刀の方が折れた!

 

 反射的に肘で顔のあたりをド突いたら、バゴッ! とか言って、もんどり打って吹っ飛んでった!

 もう一体も蹴っ飛ばしたら、同じようにワイヤーアクションの映画みたいに吹っ飛ぶ!

 

 うーん? 何と言うか、この人達……さっきより鈍くさいし、軽くなってない?

 

 木の陰から飛び出す形になった私に、雨のように矢が降り注ぐんだけど、シールドなしでまともに当たってるのに、全然効かない。


 それどころか、矢の動きが遅くて掴み取れたり、払ったりと……なんか楽勝。


 おまけに、私……なんか片眼鏡みたいなのをかけてるんだけど、眼鏡越しの視界になんか真ん中に十字を切った照準器みたいなのが表示されてる。

 

 クロちゃんに聞いてみたら、クロちゃん用の照準器みたいなもんらしい。

 良く解かんないけど、眼鏡のレンズに写ってる輪っかの真ん中と、銃の照星を合わせて撃つと当たる……とかなんとか。

 

『まぁ、とにかく、撃ってみて……これなら、素人でも当てられると思うし!』

 

 言われるがまま、割りと重たい引き金を引く。

 ダブルアクションとか言うタイプの拳銃……いわゆる安全装置のレバーとかそんなのは無い。

 

 爆発音と金属音を混ぜたような独特の音。

 

 バキーンって感じで凄いうるさいんだけど、反動は全然どってことない。

 

 ガンフロの銃を撃った時の反動って、結構凄かったんだけど、実物の方がまるでオモチャみたいだった。

 

 けれど、その威力はさすがと言った所で、撃たれた侍は一発で何かに殴られたみたいに吹っ飛ぶと、動かなくなって紙切れに戻る。


 良く解らないけど、一撃必殺って感じ!

 

 おまけに、向こうの反撃は当たっても、小石が当たった程度にもダメージを受けない。

 

 実は、四方八方からビシバシ撃たれまくってるんだけど、大半を避けきれる上に当たってもこっちはなんともない。


 さすがに、まともに矢が当たるのは気分的に嫌だったけど、ドーム状にバリアーが張られると、もう矢が届くことすらなくなる。


 その代わり、こっちに撃たれた相手はどんどん倒れていくから、もう片っ端から撃ちまくる!

 

 何と言うか……身も蓋もない戦車みたいな戦い方なんだけど。


 こちとら、銃なんてド素人で自分が動きながら撃って当てるとかそんな無理!


 映画なんかでは、走りながらとかジャンプしながら撃ちまくったりとかやってるけどさ。

 実際は、止まって落ち着いてよく狙って撃たないと当たらないみたい……。


 ……けど、クロちゃんも「いけいけーっ!」なんて言ってるくらいだから、こんな調子で良いんだろう。

 

「さ、さすがに品切れ……じゃろ? み、耳がキーンってするよぉ……。」


 もう何回目か解らないくらいの弾切れ。

 クロちゃんに言われたように、拳銃を投げ捨てるとすかさず新しいのが手に湧いてくる。

 

 おかげで弾切れとか考えずにもう撃ちまくり……軽く100発位撃ったんじゃないかな?

 

 倒した数とかもう訳解かんないけど、ちょろちょろ歩きながら、動くものをひたすら撃ちまくってたような感じ。

 やられた回数とかは、それ以上なんだけど……全部ノーダメ。

 それにしても……流れ弾があっちこっちに飛び散ってたようで、建物の壁とか弾痕だらけ。

 なんか良く解らないけど、お空にもヒビ入ってる……どうなってんの? これ。

 

 最初の頃はなかなか当たらなかったけど、さすがにそれだけ撃ちまくると視界のマーカーと照星のズレみたいなのがわかるようになって来て、10発7中くらいは当たるようになってきた!

 

『……まだっ! 上見て……多分、切り札とかボスキャラって感じのが出てきたよ!

 なんか強そうだよ……気をつけてっ!』


 言われて、上を見るとたくさんの針金みたいなのが複雑に絡み合って、5mくらいの大きな鳥……。

 ーー鳳凰って奴ーーの形を形取る!

 


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