第十一話「君の想い」②
--------------------------------------------------
第十一話「君の想い」②
---3rd Eye's---
--------------------------------------------------
その時、清十郎は意識を青龍に乗せて、東京八王子上空にいた。
高度はおよそ3,000m。
暗い山々を抜けて、街の明かりが数を増やしていく。
一面に広がる地上の星。
それは遠くに行くに連れて、密度を濃くして果てしなく広がっているように見えた。
(これは……やはり、そうなのか……。この結界の配列……関東一円を使った超巨大魔法陣が形作られつつあるのか……。これは、相当まずい事態になりつつあるぞ……何故、誰も気付かないのだ!)
不意に……何かの気配を感じる。
……発見された事を清十郎も悟る。
(なんと! もう発見されたか! だが、この気配はっ!)
数多くの気配が迫る……数はおよそ50!
距離は約20km……遠くから無数の光る小さな点が迫る様子が見える……その速度は尋常でなく音速近い。
恐らく一分もしないうちに会敵する……退避は間に合いそうもなかった……。
(この速度! 飛鳥かっ! それにしてもこの数は何だ! 青龍! 直ちに迎撃せよ!)
この数が偵察のはずがなかった……3つの集団に分かれた半包囲を意図したコース。
明らかに、迎撃行動と考えるべきだった。
清十郎の命に応じ、青龍がその細長い身体をくねらせながら、幾多の雷光を放つ。
けれども、飛鳥は青龍の下位にあたるとは言え同じ雷属性を持つ聖獣でもある……その効果は薄かった。
数体ほど、雷に耐えきれずに落ちていく様子が見えたが、それだけだった。
あっという間に清十郎の操る青龍は、飛鳥の群れに取り囲まれてしまう。
(くっ! 駄目か……だが、単純な速度では青龍では飛鳥には敵わない……。ブレイクッ! 急降下で速度を稼いで一気に振り切るっ!)
やむを得ず、青龍を急降下させる清十郎。
あっという間に市街地が近づく……だが、先程の雷光は晴天の夜空にはあまりにも目立ちすぎたようだった。
幾人かの通行人がこちらを指差して騒いでいる様子が視認できた。
(いかん……目立ちすぎたか……ぐわっ!)
追いすがる飛鳥のうち一体が勢い余って激突してきた……青龍は姿勢を崩すと、墜落するように更に地上へと近づく。
一方……翠は焦っていた。
「どうして! 飛鳥! 私は牽制だけで攻撃までは命じてない! ダメッ! 止まりなさい!」
彼女の言うことを全く聞かず、飛鳥は次々と青龍に体当たりを仕掛ける。
一体、逸れたものが眼下の国道を通行中の車に直撃し、雷光に包まれた車が激しくスピンしつつ反対車線に突っ込み、対向車と激突し爆発炎上する!
たちまち、後ろを走っていたダンプカーが激突、横転し、夜の甲州街道は怒号と悲鳴が渦巻く惨劇の舞台へと姿を変える!
「そんなっ! 私は! ただ先輩と話し合おうと……い、今のは! 私……なんて事を! ああっ!」
(正義の為すのだ! 戦うのだ!)
眼下の惨状に半狂乱に成りかけた翠にどこからともなく声が響く。
「ああ……違う……ダメッ! けど、これは私が……なんで、どうして! こんなコトに!」
苦悩する翠を他所に、青龍が反撃を開始する……。
それは被害を目の当たりにし、これ以上やらせてはいけないとした清十郎の判断なのだが。
その熾烈な反撃は、翠の視線からは自らへと降り注ぐ雷のように見えた。
さすがに至近距離で青龍の強力な雷撃を浴びては、如何に雷光の聖獣飛鳥と言えど耐えきれず、次々と落とされていく。
落とされる度に、突き刺さるような痛みが翠を苛む。
「先輩……なんで! 私が即座に先輩だと解ったように……先輩も私だと解っているんじゃないですか! 私はこんなに先輩のことを……なのに……なんで撃つの! ……もう! やめてぇっ!」
翠の叫びに応じるように、飛鳥は次々と青龍めがけて特攻を開始する。
「くそっ! 敵は一般市民への被害もお構いなしなのか! そこまでして僕らを! 何ということだ……僕の認識が甘かった……。青龍……上空10000まで退避! その高度なら飛鳥では追ってこれまい……直ちに撤退せよ!」
清十郎としては、帝都の様子見程度の偵察行だったのだが。
想像以上に早く発見された上に、ここまで容赦のない迎撃行動に出てくることは想定外だった。
飛鳥の統率のクセに、見覚えがあることに引っかかりを感じながら、彼に出来たことは更に数を増した飛鳥を振り切るだけだった。
だが……飛鳥を率いた翠の方は……。
「……許せない……結界崩し……。お前さえ……お前さえ、居なければ……こんな事にならなかった……。お前らの世界と私達の世界を繋ぐ? そんな事はさせない。皆を絶対に取り返してやるんだから……絶対に思い通りになんてさせない!」
暗い目で……つぶやく翠。
彼女がもう少し思慮深ければ……。
飛鳥が外部から干渉されていた事にも気付いたのかもしれない。
けれど……彼女は気付かない。
そうなるように、仕向けられていたのだから……。
お詫び。
前回、次回更新あさってとか嘘ついてました。(汗)
とりあえず、続きアップ。
なお、別企画をおっぱじめたので、そっちに注力するので、こっちの更新ペースは下がると思われ。
とりあえず、エター化はさせないので、それだけはご安心を!




