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第十話「ふたりの非日常的邂逅」①

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第十話「ふたりの非日常的邂逅」①

---3rd Eye's---

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「……暇ですわね。あおい先輩」


 真冬の最中にも関わらず、コートも着ないでソフトクリームを食べながら、彼女はそう言った。


「開口一番がそれってどうなんだい? 篠崎しのざき後輩。ところで、その季節感ガン無視な絵面はどうなんだろう? 私の方が寒くなってきたよ」

 

「冬の屋外で食べるソフトクリームってなかなかオツですわ。夏だとすぐ溶けちゃうけど、今の時期だと長々と味わえるので、幸せ気分になれます。よろしければ、一口どうです?」


「私は……さすがに遠慮しとくよ。今日は、この下にタイツ履いてるし、貼るカイロも完備……それでも寒い」


 そう言って、葵は寒そうに両手をこすり合わせる。

 

 黄昏時の公園のベンチ。

 所在なげにしている黒髪ロングのセーラー服の女子高生……伽耶と、赤い髪をポニーテールで纏め上げた背の高いダウンジャケットにジーンズスタイルの女子大生風の葵。


 この二人はもう二年ほどの付き合いで、かつてはライバル……今は親友とでも言うべき間柄だった。

 

 彼女達は何をしてるのかと言うと……一言で言うと、ただの暇つぶしである。

 

「だって、しょうが無いじゃないですか……先輩たちが居ない学校生活なんて、退屈でしかありません」

 

「そんな事より、君は受験生でしょ? こんなとこで暇です! ……とか言ってる場合?」


「わたくしは、推薦枠ですでに合格確定組なのですよ……それより、中室先輩の様子はどうでした? 今日、様子見に行くって言ってましたよね?」


「駄目ね……相変わらずの引き篭もりで絶賛現実逃避中。妹ちゃんもすっかり暗くなっちゃったし……こうなったら、二人で押しかけて引きずり出すかっ!」

 

「前にそれやって、二度と来るなとか言われちゃったじゃないですか。」


「そだね……私達に出来ることはもう何もない……か。あの加奈子って娘と引き合わせることができればって思ったんだけど……。色々調べた挙句、故人だったって事が解っただけ……もう、どうしょうもない……」

 

「あの女が全て悪いんですわ……何もかも中途半端なまま、突然姿を消して……どうしたのかと思ったら……。お亡くなりになってたなんて……わたくしとの決着も……何もかも……。人の断りもなく勝手に……ふざけるなっ! って言ってやりたいです。」

 

伽耶かやちゃん……死者は悼むものであって、悪く言うもんじゃない……。本人だって、さぞ無念だったと思うよ……私だったら、化けて出るだろうね。」

 

「わたくしとしては、いっそ化けて出てきて欲しいくらいですわ。同じ女として、執念と根性が足りないっ! そう思いますわ!」

 

「そうだね……後始末くらいきっちりしていって欲しかった。……本人は死んじゃったら、そこまでだけど……残された側は……。やれやれ、やるせないね……彼女と一度くらいちゃんと話しとけばよかった。

 無念なのは私達も……同じ……か。それにしても……今日は、なんだか静かだねぇ……」

 

 そう言って、葵は周囲を見渡す。

 

 時刻は16時過ぎと言ったところで、日も赤く染まり始めた頃。

 逢魔が時とも呼ばれる時間帯でもあった。

 

「先輩……この公園って、こんな寂れてましたっけ?」

 

 そう言いながら、伽耶も訝しげな様子で周囲を見渡す。

 

 そこそこ大きな公園なのでいくら冬の夕方といえど、いつもなら主婦の井戸端会議やら犬の散歩。

 同じような学校帰りの高校生とか、全力で遊ぶ子供たち……そんな光景が常なのだけど。

 

 不思議と全く人影がなく……この公園にいるのは、葵と伽耶の二人だけだった。

 

「伽耶ちゃん……なんか、変だよ? これ……静か過ぎる」


 線路沿いの公園……大通りもほど近く、いつも静けさとは無縁のはずなのに……。

 車の音も電車の音も聞こえない……全くの静寂。

 

 その異様な雰囲気に葵も伽耶も緊張した面持ちになる。

 

 すかさずベンチから立ち上がるとお互い背中合わせになって、重心を落とした半身の構えで周囲を警戒する。

 

 まるでよく訓練された兵士のようで……女子大生と女子高校生の身のこなしではないのだけど。

 

 この二人……VR戦場を共に駆け抜けた歴戦の猛者。

 その戦場での苛烈な経験は一般人にあるまじき戦士の勘と言うべきものを二人に身に付けてさせていた。

 

「葵先輩……時計の文字盤見て下さい」


「時計? なにあれ? 鏡文字?」


「そうです……それに、人の気配も全くしない……いえ、中央のあたり……何かいます」


 伽耶に言われて、葵も目を凝らすと、薄ぼんやりと10人ほどの人影のようなものが見えることに気付いた。

 

「……なに、あれ? 透けてない? マジモノの幽霊?」


「さぁ? けど……あれ、しっかり地面に足跡残してます……つまり、実体があってブッ飛ばせるって事です。少しだけ安心しましたわ……何が起きてるのか解らないけど……人の意志が関わってるとなると、ちょっとした非日常ってとこですわね……。葵先輩……わたくし、ちょっとワクワクしてきました。先輩も……ですよね?」


「しないよっ! まったく……けど、あいつら、こっちに気付いてないのかな? なら、物陰にでも隠れてやり過ごす……とか?」


「そうですね……いっそ普通に声でもかけて見てもいいかもしれませんね。相手が銃とか持ってても、わたくし達なら、リアルで弾丸見切るくらいは出来ますからね。近接戦なら、むしろそれはわたくし達の本領……。普段の生活では何の役にも立たない能力ですけど、まさにこう言うときに打ってつけです! わたくし……たまに目の前で銀行強盗とか起きないかな……とか思ってましたの」

 

「ははは……伽耶ちゃん、相変わらず物騒な思考回路してるねぇ」


 そう葵が伽耶に答えた瞬間。

 二人の肩にポンと手が乗せられる。

 

「でぇええええっ!」


「は、はいっ? なんで、気配なんて……!」


 驚愕する二人……今の今まで二人の周囲には誰もいないはずだったのに……。

 

 その男は……そこにいた。

 

 二人共、素早い身のこなしで、振り向きもせず素早く前方へ飛び退きながら、振り返る!

 

「おやおや、お嬢様方……驚かせてしまったかな? 実にすまないね。それにしても、君達はどうやってこの鏡像空間に入り込んだのかな? その身のこなし……一般人とはとても思えない……まるで幾多の実戦を掻い潜った歴戦の兵士のようではないか……。さて……これは、どうしたものかな?」

 

 そこには、青い眼の口ひげを生やした背の高い中年男が居た。

 黒い喪服のような背広にぼさっとした長髪。

 

 いわゆる伊達男と呼んで良い雰囲気、そして渋い声……。

 けれども、その目付きは濁ったように暗く鋭く。


 その視線に二人も思わず、凍りついたように動けなくなる。


さて、しばらく敵サイドパートです。


何気に全作品皆勤賞な葵と伽耶のコンビの登場です。


時系列的には、ガンフロから二年ほど経ってますが。

二人が転ロリの世界に来る前です。


最後に出てきた胡散臭い男については、説明不要かもしれませんね。

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