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第九話「遠い世界の物語」④

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第九話「遠い世界の物語」④

---Yuino Eye's---

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「すまない……気が利かなくて……。だが、貴重な情報だ……重ね重ね礼を言わせてもらう。

 結乃くんも……色々非礼……お詫びしよう」


 そう言って、政岡さんが頭を下げると、私も思わずペコペコと頭を下げる。


「いやいや……私、全然気にしてないし……。でも、そうなるとその「吊られた男」ってのがこっちにも居るとかそんな感じかな? って言うか……そもそも使徒って何?」

 

「結乃くんも……その辺にしておこう。だが……くろがね君を始末する事に必要以上に執着して、様々な指令をこちらに押し付けてきたのが誰かは解っている。何より、牛鬼クラスの怪異を使役できる術者となると、現世護手総帥……久我島天禅くがじまてんぜん! 恐らく、奴がその「吊られた男」とやらと、少なからぬ繋がりを持つのは間違いない。奴は我々のトップではあるのだが……先代総帥との代替わりの過程に不審な点が数多くあってな。何かと強権で押し通す強引なやり方に反発しているものも多くいる……」

 

「おいおい……ソイツはまたとんでもねぇ大物の名前が出てきたな。だが、そんなもんは関係ねぇ……大惨事を引き起こしかねなかった上に、俺らを捨て駒扱いするとはいい度胸だ! 現世護手の総帥だぁ? そんな会ったこともねぇ奴なんぞ知るか! ボケェッ! 野郎には、きっちり落とし前付けさせねぇと、こっちの気がすまねぇ! それに、なんぞよからぬ企みを企ててるんじゃろ? 俺は、クロ助と結乃ちゃんに助太刀するぜ……紅葉ちゃんも賛成だろ?」

 

「はいっ! 私は結乃ちゃんの友達ですからっ! 何があっても結乃ちゃんの味方で居ます!」


「やれやれ……やはり、君らはそうなるか。僕も手伝うのはやぶさかではないのだがね……相手が相手だ……事は慎重に運ぶ必要がある。そう言えば、譲……牛鬼を操ってた術者は抑えられたのか?」

 

「ああ……と言っても、部下が見つけた頃には、呪詛まみれの焼死体になってやがったけどな。向こうさんもそれなりの覚悟の上だったってこった……胸クソ悪ぃ話だがな。……学校内の仕掛けも火炎の術式と組み合わせてあったらしく、痕跡くらいしか見つからなかったそうじゃ……」

 

「さすがに、証拠を残すようなヘマはしないか。だが、自決や証拠隠滅に火を使うとなると紅衆の手口だな……。今回の件で上に少し探りは入れたのだがな……だんまりだ」

 

「清十郎……お前の親父さんはなんて言ってるんじゃ? それと中菱の旦那は?」


「父上は「己が正義に忠実であれ」との事だ……我が家の家訓だからな……父上らしい。元々我が政岡家は、反総帥派の代表格……だから、父上も結乃くん達を連中に売ったりする気はないそうだ。本件については、僕の判断を尊重するそうだ……だから、その点は安心して欲しい。だが、中菱のご当主はだんまりだ……身内の紅葉も危うかったと言うのに何を考えているのやら……。紅葉……君はしばらく家に帰らないほうが良い……何か良からぬ企みが進められているようだ。とりあえず、今晩はうちに泊まっていくといい……部屋なら空き部屋がいくらでもある。良ければ、結乃くんも……現状、単独行動はあまりお勧めは出来ないし、ご家族を巻き込んでしまう恐れもある」

 

 なんか、紅葉ちゃん達現世護手ってのも一枚岩じゃないのね。

 ……と言うか何か色々ややこしくて訳が解かんないよっ!

 これって、内部抗争とかそう言うやつ? 


 けど、お言葉には甘えることにする。

 お母ちゃんも緊急招集がかかったとかで今夜は、家にいないみたいだし……。

 

 クロちゃんが狙われてるとなると……私が狙われてるも同然。

 今、家に帰るのは確かに危ない……。

 

 と言うか……お母ちゃんの緊急招集って、絶対うちの学校の騒ぎが原因だよね……。

 

 500人もの生徒がまとめて集団昏倒とか、普通に大騒ぎ……。

 あの後、救急車とか消防車、警察がごちゃまんとやって来て、大騒ぎになってたし……市内の病院も大規模災害でも起きたような騒ぎになってたと言う。


 岡山は割と医療が充実してるから、なんとかなったみたいだけど、他の県だったらまさに無理ゲー。

 余裕で、全国ニュースもの……なんだけど。

 

 こう言うのも前例があるそうで、穏便に済ませるらしい……実際、ニュースでも華麗にスルー状態。

 地元のローカルニュースで、学校でガス騒ぎとかなんとかチラッとやってただけ。


 ……情報統制ってヤツの現実を嫌が応にでも思い知らされる。

 

 何と言うか……なんか、とってもややこしい事になってきたなぁ……。

 

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「今日は、ホント色々あって疲れちゃいましたねー。」


 チャプンという水音と共に、紅葉ちゃんの間延びした感じの声が響く。

 

「う、うん……そだね……。」


 なんだか、とっても広いお風呂に圧倒されながら、一糸まとわぬ紅葉ちゃんを横目でちらりと見る。


 彼女の割りと大きめのふたつのそれはお湯に浮かぶようにゆらゆらと揺れてる。


 と言うか……これがお湯に浮かぶとか、初めて知ったんですけどー。

 私のは……とマジマジと見て見るんだけど、そんな浮かんだりしないし、お湯の中で揺れたりはしないよ?


 これは……この感情は女としての敗北感とか嫉妬と言うやつなの?

 何と言うか……なんか無性に悔しい……ぐぎぎ……。

 

 クロちゃんは……湯船に入ると余裕で溺れるので、洗面器にお湯を張って、タライ風呂状態。

 おうちでもこんな調子だったけど、本人的には至って満足してる様子。

 

 まぁ、クロちゃんも色々あって大変だったし……このお屋敷に居る分には安全って言う話だし……。

 

 気分転換には、こう言うのも悪くないよね。

 

 ちなみに、クロちゃんはマイクロボディだから、凹凸も何もって感じで……例えるならキューピー人形。

 ……と言ったら怒られたけど。

 

「あはは、やっぱ広いお風呂は良いねぇ……。これぞ、裸のお付き合いってヤツ? 二人もすっかり仲良しさんだねー」

 

 クロちゃんの何とも言えない感想。

 考えてみれば、なんなんだろ? この状況。


 成り行きで、皆でお泊まり会みたいな感じになって……。

 

 女の子三人で買い物行ったり、ワイワイやって、政岡さんのお屋敷には、とっても広いお風呂があるって言うんで、お風呂タイムと洒落込んだワケなんだけど。

 

 紅葉ちゃん、私より背丈ちっちゃいのに脱いだら、結構凄かった。

 私は……背丈はあるんだけど、お胸さんは何と言うか……ハイ、完敗でございます。

 

「結乃ちゃん……色々とご迷惑おかけしてごめんなさいです」


 そう言いながら、紅葉ちゃんが湯船の淵に腰掛ける。

 頭を下げた拍子に目の前で双丘がたゆんと揺れるのをぼんやりーと見つめる。

 

 紅葉ちゃん、普段ツインテールにしてる髪も下ろしてるせいか、なんかすごく色っぽくて、思わずドキッとする。

 同性なんだけど……ちょっと目のやり場に困って、何となく湯船にブクブクと沈み込む。

 

 ついこないだまで、喧嘩してた間柄だったのに……お風呂で裸のおつきあいとか。

 

 考えてみればなんだこれ?

 

「むふー! 二人共、ご立派なモノをお持ちですなー」


 クロちゃんが何だかふくれっ面でそんなことを言う。

 クロちゃんは……まぁ、見事なまでに真っ平ら。

 

 なんでも、生前も病気の関係で成長止まっちゃったとかで、今の私と大差なかったらしい。

 

「あ、あはは……私はせいぜいBくらいかなー? 紅葉ちゃんはDとかEとかそれくらいありそうだよね?」


「はい? そ、そうなんですよね……なんか、胸ばっかりどんどんおっきくなっちゃって……。お姉ちゃんにもけしからんとか、からかわれますし、男の人にジロジロ見られたりするし。……やっぱ、ヘンですか?」

 

「紅葉ちゃん……それは永遠のAカップなわたしへの挑戦かな? んん?」


 クロちゃんがなんだか無い胸を張りながら、紅葉ちゃんの胸に向かって、水鉄砲攻撃。

 微妙な所に当たったらしく、アンだかなんだか、色っぽい声を出してガードする紅葉ちゃん。


 クロちゃん……あかんです。

 

「紅葉ちゃん……とりあえず、自重しよっか!」


 そう言って、紅葉ちゃんの手を引いて、湯船に引っ張り込もうとしたら、なんかお尻滑らせちゃったみたいで……盛大にドボンと落ちる。


 と言うか……紅葉ちゃん、女子同士と言えども少しは恥じらおう。

 少なくとも……大股開きでドボンとかそりゃ無いと思う。

 

「ふええ……何するんですか……思い切り、お湯飲んじゃいました!」


 紅葉ちゃんが抗議しながら、立ち上がる。

 

「んっと、ごめん! でもさ、紅葉ちゃん……少しは恥じらいというものをだね?」


「んっと……お姉ちゃんと一緒の時はこんな調子ですよ……別に女の子同士……隠すほうがむしろ恥ずかしいですよ? あ、そうですっ! せっかくなんで一緒に洗いッコとかしません?」


 まぁ……私もお兄ちゃんが居た時はお風呂一緒に入ってたけどぉ……そんなの小学生の時だもん。

 

 そんな事を思いつつ、やたらアグレッシブな紅葉ちゃんに何かもう為すがままな私。

 

「ふふっ……結乃ちゃんのお背中、スベスベですっ!」


 背中流してもらうのも悪くないなぁ……とか思ってたら……。

 ……なんか時々背中にモニュっと当たるんだけど、背中流すのってこんなだっけ?

 

 と言うか、この娘って、スキンシップが激しいような……まさかそっちのケは……ないよね? 紅葉ちゃん。

 

 何て事やってると、突然クロちゃんが「キャアッ!」なんて可愛らしい悲鳴をあげる。


 何事かと思ったら、換気口の隙間からダイブしてきたカマドウマさんがクロちゃんの洗面器の中にインしたとこだった!

 

 別に害はないのだけど、その宇宙生物を思い出させるキモい外見に加え、何故か人に向かってくる習性があって……。

 ジャンプして向かって来られると、まさに恐怖オブ恐怖!

 

 次の瞬間、慌ててこっちへ逃げてきたクロちゃんの頭の上にぴょいーんと乗っかるカマドウマさん。

 

「ク、クロちゃんこっち来ないでっ! 頭っ! 頭ーっ!」


「ウソッ! マジで! 結乃ちゃん、これ取って! 取ってぇえええっ!」


 もはや、移動爆弾状態のクロちゃんが泣きながら、こっちに来る!

 逃げようと思ったら、紅葉ちゃんに盾にされてて、立てないしっ!

 

 容赦なく接近するクロちゃんとカマドウマさん……あ、なんか目があった……!

 

「「「ッキャアアアアアッ」」」

 

 色々限界状態だった三人分の悲鳴が夜の静寂に木霊する。

  

 すると……なんか、遠くからドタドタと足音が近づいてくる。

 

 あれー? このパターンって?

 とっても、とってもイヤな予感……。

 

「なんじゃっ! 敵襲かいっ! お前らっ! 無事かっ!」


 お風呂場のドアをガラリと開けて、宇良部さん乱入っ!

 

 思わず、思い切り目が合う……。 

 ……しばしの硬直と水を打ったような沈黙。

 

「うにゃぁあああああっ!」


 クロちゃんの悲鳴ではっと我に返ると、洗面器をぶん投げる!

 

「で、出てけーっ!」

 

「す、すまん! お、俺はそんなつもりはっ! ぐはぁっ!」


 パカーンといい音と共に命中し、のけぞる宇良部さん。 

 ある意味、何と言うか……お約束だったけど……こっちは死ぬほど恥ずい。

 

 どうしてこうなったの?

 

「……ごめんなさい。譲先輩のラッキースケベ体質……舐めてました」

 

 ボソッと紅葉ちゃんがつぶやく。

 

「なんじゃそりゃあああああっ!」

 

 私のツッコミの叫びが木霊した……。

いえーい! 女子中学生のサービス回だぜ!(笑)

ちょっと気分転換も兼ねて、もののの一時間程度で書き下ろし、追加しました。


今朝はなんか時間帯が微妙だったらしくて、空振った感否めず……で、本日二回目アップ!

明日もアップするかどうかは、これからの執筆がどこまで捗るか次第です!


ちなみに、田舎名物のカマドウマさん。


都会の人には馴染みにないでしょうが……山近い田舎ではものすごく身近な虫です。

便所コオロギと言う酷い別名もあります。

暗くて湿ったところが大好きで、目が退化してるので、お風呂場やトイレでのエンカウント率が高い上に、物音にやたら反応すると言う困った習性があります。


こんな風に大騒ぎしようものなら、ぴょんぴょんと突撃してきます……いや、ホントマジで。(汗)

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