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第九話「遠い世界の物語」①

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第九話「遠い世界の物語」①

---Yuino Eye's---

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「なるほどな……君は、異世界の住民でもありながら、元々この世界の住民だったという訳か。」


「そうよ……だからこそ、わたしはこの世界に戻ってこれたんだよ」


 そう政岡さんが告げると、クロちゃんも真面目な顔で応える。

 

 あの戦いの後、私達は政岡さんのご自宅に招待されて、事情を聞きたいと言う政岡さんの要望に答える形で、これまでの経緯を説明した。


 私が紅葉ちゃんを助けて死にかけて……そんな私をクロちゃんが助けてくれた事。

 本当は人間でなくなっている事なんかも含めて……。

 

 素性の分からない人達にするべき話じゃないと思ったのだけど。

 紅葉ちゃんも宇良部さんも命懸けで一緒に戦ってくれた。

 

 私、馬鹿だから難しいことは良く解らないのだけど。

 この人達は信じるに値する……そう思ったから、全部打ち明けることにした。

 

 この政岡さんも、気難しい人に見えたのだけど。

 

 目の前で共通の敵と力を合わせて戦い……。

 あれだけの騒ぎだったにも関わらず、けが人もほとんど出さずに済ませた事。

 

 それに、宇良部さんや紅葉ちゃんの口添えもあって、諸々を棚に上げて、私達の話を聞いてくれていた。

 

「向こう側の世界ねぇ……まぁ、俺達が相手取ってる怪異共とは、明らかに別モンだもんな……クロ助は!」


 お気楽そうな感じでクロちゃんをヒョイと持ち上げて、頭の上に乗っける宇良部さん。

 

 ちなみに、クロ助ってのは宇良部さんがクロちゃんに付けたアダ名っぽい。

 なんか、宇良部さんはすっかりクロちゃんを気に入っちゃったらしくて、さっきからずっとこんな調子。


 クロちゃんもクロちゃんで割りと男の子慣れしてないみたいで、最初は困ってたんだけど、なんかすっかり懐いちゃったみたいでデレデレ。

 

 この宇良部さんって、絶対モテるよね……。

 

 正直、私も助けに来てくれたあの時、胸がキュンってした。

 あんま色恋沙汰に興味のない私なんだけど、まさにチョロイン状態になってる自覚はあるよ?

 

「そうだな……にわかには信じられないのだが……。魔術体系が我々の使うものとは全くの別物……それに、あのような魔術と物理両面で防ぐような防護結界……。僕らには、とても再現できない……それにしも異世界……か……そんなものが実在するとはな……。しかし、君が異世界から来たのだとして、その世界間を転移する技術はその世界では一般的なものなのかな?」

 

 政岡さんからの鋭い質問。

 確かに、そんなのが一般的だったら、私らの世界にも知らず知らずのうちにクロちゃん達の世界の住人が入り込んでしまう……。

 クロちゃんの世界とこちらの世界でどれくらい格差があるか解らないけど……お互いロクな事になりそうもない……そんな気がするよ?

 

「異世界間転移は一般的じゃないね……さすがにね。 知ってる限りだと、魔王様くらいかな……そこまで出来るのは……。わたしはこっちの世界の出身で、こっちと繋がりがあったから……その繋がりをたどる形で、なんとかこっちに戻ってこれたんだけど……それだって、かなり無理してる。異世界転移って次元の狭間って空間を経由するんだけど、コアストーンとわたしの魂だけをこっちに転送するのが魔王様でも精一杯。……わたしもその上で、こっちで身体を再構築しようとしたんだけど。物凄い長い時間、身体のない状態で居すぎたせいで、身体練成が上手く行かなくてね。たまたま波長の合った結乃ちゃんの助けを借りて、こんな形でこちら側に干渉できるようになった……そんな所」

 

 ああ、そう言えば、クロちゃん初めて会った時……自分が見えるとかなんとか言ってすごく驚いてたっけ……。

 てっきり、私も死にかけてたせいで……とか、そんな風に思ったんだけど……。

 

「ふむ……なるほど、そうなると諸々の話の辻褄は合ってくるな。では、君がこちらに来た目的は? なんの意味もなくそんな博打のような真似をするはずはない。もちろん、強制はしないが……出来れば、そのあたりも聞かせてもらえないかな? 僕らも君には、借りがある……何か力を貸せるかもしれない」

 

 宇良部さんと紅葉ちゃんが揃って頷く。

 私だって、その辺は一緒……と言うか、クロちゃんのお願いなら私は問答無用で手助けするつもりなんだけど。

 

「理由……か……そうだね。結乃ちゃんにもきちんと説明してなかったからね……それは……。

 うん、色々考えたけど……やっぱわたし一人でどうにか出来ることじゃないし、この世界にも関わりあること……。だから……話、聞いて……くれる?」

 

 クロちゃんの言葉に政岡さんも頷く。

 

 そして……ぽつりぽつりとクロちゃんが語る……とても長いお話。

 

 それはもう一つの世界の物語。

 

 クロちゃん達は元々次元の狭間って所で魔王さまって人のところで、放浪生活みたいなのを送ってたんだけど……。

 クロちゃん達も意図せず、向こうの世界の二つの勢力の間に割り込むような形で、その世界に戻ってきて大戦争の引き金みたいになっちゃったらしい。

 

 もちろん、クロちゃん達はあっちの世界でも規格外みたいに強くて……全世界を相手に戦争をするところだったんらしいんだけど。


 その流れを変えちゃったのが、他ならぬクロちゃん。

 

 敵の一方の帝国ってとこのお姫様と一騎討ちをやって、なんか仲良くなっちゃったらしくて……一緒に、世界を平和にする為に戦うってそんな感じになっちゃったんだって……。

 

 けど、相手の方がこっちの世界の人間を召喚して対抗してきたもんだから、もう歯止めの効かないメッチャクチャな戦争になっちゃったらしい。

 

 最初は、相手の方も二人だけだったらしいんだけど……。


 こちらの世界の住民を召喚する技術とクロちゃんみたいなマテリア体と似たようなのを作る技術ってのを相手が入手して……相手は、全然自重しなかったみたいで、あっという間に数百とか数千人とか、とんでもない数になってしまった。

 

 一人一人はクロちゃんほど強くないのだけど……数が数……おまけに、最初の二人がとんでもなく強くて……。


 クロちゃん達もやられてたまるかとばかりに仲間や眷属みたいなのを大量に作り出して、一年近くにも及ぶ大戦争に発展……私が見た夢の光景もその戦争の一幕。


 その戦争の結果……。

 辛うじて、クロちゃん達が勝ったらしいのだけど。

 

 クロちゃん達の方もタダで済むわけが無く……。

 クロちゃんの友達や仲間も大勢死んじゃって……あっちの世界はほとんど滅亡に近い有様になってしまったらしい。

 

 けど、その過程で、全てを仕組んだヤツがこっちの世界にいて、更にそいつが日本で何かしでかして……。


 その結果、たくさんの人死が出て、そのどさくさで、向こうの世界にこっちの人達が大量に送り込まれた……と言う事が解ったのだと言う……。


 その何かを阻止、あるいはその全てを仕組んだ奴をこっちで倒す事が出来れば……結末を変えられるかもしれない……そんな希望にすがって、こっちの世界と明確な繋がりを持つクロちゃんがこっちの世界に送り込まれた……。

 

 要約すると、そんな感じ。

 これって、あれだ……ガチムチな人がアイル・ビー・バックってやる奴だ!

 

 パラドックスとかちょうちょの羽ばたきで台風が起きるとかなんとか言うやつだっけかな。

 

「……ひとまず、わたしが話せることはこれだけ。けど、結乃ちゃんのとこからネットで調べた感じだと、こっちじゃそんな大事……起こった気配も無い。なんかわたしの知ってる頃より、世界情勢とか一段とキナ臭くなってるけど……。魔王様も……因果の起点ってのがこっちにあるから、それより前の時間軸へ送り込むって言ってたから、それはまだ起こってない……それだけは確実に言えるんだけどね……」

 

 クロちゃんがそう言って、話を区切ると私も含めて誰もが絶句……するかと思ったのだけど。


 政岡さんと宇良部さんの二人は妙に納得がいったと言う様子だった。

さて、前作……打ち切りエンドの様相でしたが。(汗)

その後の物語の概要ってとこです。


割りと重要なところだったんで、色々難儀してました。

どこかで、くろがねの現実世界への旅立ちの前夜の話とかもやりたいもんですね。


ちなみに、結乃ちゃんは割りとアホの子なので、いまいち解ってません。(笑)

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