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第八話「襲い来る怪異」③

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第八話「襲い来る怪異」③

---Yuino Eye's---

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「結乃ちゃん……はっきり言って、アイツ相当やばいよ。重防御、白兵戦タイプ……多分、対魔術師戦に特化してるんじゃないかな? つまり、わたしと同系統……けど、こんなのが偶然現れるってのも腑に落ちない。この襲撃……狙いは恐らくわたし……その上で対抗できるだけの戦力を送り込んできた……そう考えるのが妥当。どっちにせよ……こちらの手の内は明かさない方がいいかも。」

 

「だからって、黙って見てろって言うんか! クロちゃん……このままじゃ宇良部さんたちだって、勝てないんじゃないの?」

 

「結乃ちゃん、良く聞いて……! 宇良部さんたちの戦い方を見てる感じだと……弱点に魔力を込めた一撃を叩き込む……それを狙ってる感じ。となれば、魔力を凝縮した銃弾をその弱点に撃ち込めば、アイツにも効くと思う。けど、その弱点ってのがわたし達には見えない。目を瞑って2-3cmのピンポイントに当てるようなもんだから、正直宝くじかな……。紅葉ちゃん……確認なんだけど……銃って使えたりしない?」

 

 クロちゃんが紅葉ちゃんに向き直ると、そんな風に提案する。

 

「わ、私が……ですか? 銃なんて、触ったこともないですよ! でも、確かに飛び道具でピンポイントでほころびを撃ち抜けば……牛鬼相手でも致命傷を与えられるかも……」

 

 そっか、弱点を見破れる紅葉ちゃんが、クロちゃんの銃を使えば近づかなくても狙い撃てる!

 動き回ってる相手に当てるのは難しいけど、足止めさえできれば……。

 

「紅葉ちゃん! 私も手伝うから、一緒にアイツをやっつけようっ! クロちゃん! アイツの足止めって出来ない?」

 

「そっか、止まってる目標に当てる程度なら、紅葉ちゃんでもやって出来ない訳じゃない……。どうしよう……シールドで固めるって手もあるけど……アイツ、パワー物凄いから、たぶん簡単じゃないよ?」

 

 なら、私がアイツの足止めを……と言おうとして、思いとどまる。

 居るじゃないか……もっと頼りになりそうな人達が!


「宇良部さん! アイツの足止めって出来る? あの牛太郎君は、私達が仕留めて見せるからさ!」


「へぇ……結乃ちゃん、なんか自信満々じゃねぇか……。なんか、秘策があるってこったな! そう言う事なら、ここは任せろっ! 清十郎! こっちに魔力を回せ! こうなったら、人外同士の力比べと行くか!」

 

『そうだな……浄眼使いの紅葉に攻撃役を任せるのは悪い策ではないな。譲……ここはお互い出し惜しみはナシだ! 全力でやるぞ!』

 

「おうとも! 紅葉ちゃん、結乃ちゃん! 頼んだっ! 行くぜっ! 我らが真祖温羅うらの名において! 末裔たる我にその力の片鱗を与え給え! 鬼神降臨ッ! 臨兵闘者皆陣烈在前ッ! オゥラアアアアアアッ!」


 宇良部さんが、九字を切ると、なんか鎧と本人が一回り大きくなる!

 

 ガ、ガチムチだーっ!

 

 そして、牛男に突っ込んでいって、何をするのかと思ったら……。

 振り下ろされた斧をガッツリ掴んで、斧もろともそのまま逆に持ち上げて、地面に叩きつける!

 

 なんちゅう力技っ!

 

 そのまま、牛男が倒れ込んだとこへ横蹴りで思いっきり、その横っ面を蹴っ飛ばす!

 

 牛男は盛大に転がると、すぐさま起き上がって、咆哮と共に両手を構えて突っ込んでくる!

 宇良部さんは、牛男の両手を掴むとガッツリと四つに組み合って、力比べの体勢に入る!

 

 宇良部さんもでっかくなってるんだけど、相手の方はもっと大きい! それでも、一歩も下がらず互角の状態!

 

「オンドレ舐めんなド畜生ッ! こちとら、鬼の末裔! フルパワーならコレくらいやれんだ! ちったぁ恐れ入ったか! この牛タン野郎がっ! 調子こくのもたいがいにせいやっ! ゴルァッ!!」


 ガラの悪い罵声と共に踏ん張る宇良部さん!

 どちらも互角! なにより、動きが完全に止まった! 今がチャンス!

 

「んじゃ、紅葉ちゃん……両手で軽くグリップを握って、足を開いて……そうそう、いい感じ! ダブルアクションだから、トリガー重いけど思い切って一気に引く……。ワルサーは命中精度は悪くないからね……照準に合わせて撃てば、この距離ならほぼ真っすぐに飛ぶ!」


 クロちゃんが紅葉ちゃんの肩に乗って、例のワルサーP38を握らせている。

 紅葉ちゃんも緊張した面持ちで銃を握ってるんだけど……肩も腕も震えてて、狙いが定まらない様子。

 

「紅葉ちゃん……私が撃つから、紅葉ちゃんは私の目になって!」


 そう言って、紅葉ちゃんの背後に回ると、紅葉ちゃんの手に自分の手を添えて、トリガーは私が受け持つ形にする。

 

「紅葉ちゃん、まず一緒に深呼吸しよっか! ……ねぇ、クロちゃん! 一発二発外してもかまわないよね?」


「そりゃもちろん……ぶっちゃけ初弾なんて観測弾……一発で当てようなんて思わなくていいよ。けど、宇良部さんに当てちゃ駄目だよ? それだけ注意してね。」


「おうっ! 俺も流れ弾くらい根性で避けたるから、気にせんでブチかましたれっ!」


 ちゃんと会話を聞いてたようで、宇良部さんも振り返らず軽口を叩く。

 紅葉ちゃんも少しは緊張が取れたのか、私に身体を預けてくると震えが徐々に収まってくる。

 

 昨日、拳銃撃ちまくって解った事なんだけど、当てようと思って力むとかえって当たらない。

 力を抜いて、自然体で撃つとその方が当たる……クロちゃんによるとそれが射撃の極意なんだってさ。

 

 一瞬の間……。

 私ももう一回深呼吸すると、紅葉ちゃんに照準の微調整を任せて、指示を待つ……。

 

「結乃ちゃん! 今っ!」


 紅葉ちゃんの声に応えるように、ワルサーの引き金を引く!


 牛男のお腹に、弾が当たったのが見えたのだけど……チュイーンとか言って弾かれた!

 

「うそっ! いくら9パラだからって、跳ね返すとかどんな腹筋よっ! いや……外した……のかな? 紅葉ちゃん! 今の誤差としてどれくらい?」


 クロちゃんが慌てたように叫ぶ!

 当たって平然としてるってのなら、まだ解るんだけど、跳ね返すって意味わかんない!

 

「もう少し下……だったみたいです……なら、今度は私がっ!」


 そう言って、紅葉ちゃんが決意を込めた目でトリガーに指をかける。


「結乃ちゃん! ワルサーに魔力を循環させて、銃弾に凝縮させるイメージをっ! 要するに銃撃への対策をしてたって事……なら、わたし達の魔力を総動員して最大出力であんちきしょーにブチ込む! 単純な物量の暴力なんだけど……構うもんか! 狙いとトリガーは紅葉ちゃん! 頼んだ!」

 

 魔力を循環させて、装填された銃弾へ凝縮……言われたようにイメージすると。

 私の身体がポウッと光って、その光がワルサーの装填済みの銃弾へ集まっていく!

 

「ゆ、結乃ちゃん……こ、これ! とんでもない魔力なんだけど……。」


 紅葉ちゃんが震える声を出す。

 ごめん、何がどうとんでもないのか解かんない……。


「……結乃ちゃん……これ、わたしから見ても凄いよ? この一発で昨日のパンツァーファウスト並の威力あるよ……。結乃ちゃん……魔力のコントロールについては、わたし以上? でも、これならアイツの腹筋だろうが撃ち抜けるはず! 紅葉ちゃん! やっちゃえっ!」


「は、はいっ! 撃ちますっ!」


 紅葉ちゃんがトリガーをひくと同時に、物凄い音がして、反動で紅葉ちゃんがふっとばされる!

 けど、そのまま私が抱き留めて……勢い余って、一緒に尻もちをつく。

 

「ど、どう?! 当たった?!」

 

 一見、牛男は一瞬ビクンとしたものの平然としているように見えた……。

 けど、ほどなく宇良部さんを振りほどくと撃たれたお腹を抑えながら、凄まじい絶叫を上げる。

 

「直撃っ! 今度はきっちりぶち抜いたけど……ほころびってのに当たったかどうか……まだ解かんない!」


 クロちゃんも一緒にふっとばされたので、弾着は確認してなかったみたいだけど、当たったのは確実のようだった。

 辺りの空気が震えるほどの咆哮! そして、お腹から蜘蛛の巣のようにヒビみたいなのが全身に走っていく!

 

「紅葉ちゃん! 結乃ちゃん! お見事だぜっ! なんて威力じゃっ! たった一発で存在自体が崩れかけてやがる! 清十郎! ここが決め時だ! あれやっぞ!」


『ああ……鬼魔駆逐きまくちく急々如律令! 白虎よ! その牙を持ちて、我らが敵を討ち滅ぼせっ!』


「紅蓮の鬼の手よ……我が手にやどりて、怨敵を焼き払う滅火めっかと成せ! 開放っ! 滅火掌ほろびのてッ!」


 宇良部さんの右手が赤から白に変わったと思うと、刺々しい針のようなモノがびっしりと生える!

 そして、左手の方は対象的に真っ赤な炎に包まれ、その炎が腕の形を象る!


「いくぜ……その名も、凍牙紅蓮双撃とうがぐれんそうげきッ! セイッ!」


 強烈な踏み込みと共に、右の正拳突き! それは吸い込まれるように、正確に紅葉ちゃんの撃った所に当たる!

 

 次の瞬間、牛男の全身が凍りつき、ヒビが大きくなり、全身へと広がり、氷柱みたいなのが全身から生えるっ!

 

「まだまだっ! コイツでトドメだ! 捻り潰したる! 往生せいやぁッ!」


 更に、炎に包まれた左手が巨大化すると牛男を握りしめる!

 

 最期の力を振り絞るように、牛男が手の縛めを振りほどこうとするのだけど……。

 バキッと言う致命的な感じの音がしたと思ったら、次の瞬間、ガッシャンと言う音と共に、その身体がバラバラになる!


 そして、その破片に火が点くと……灰のようになって消えていく。

 

 しばらく、油断なく身構えたままその光景を見つめていた宇良部さんも力を抜くとこっちへ振り返る。

 

「よっしゃ! ここまでやりゃ、さすがにくたばったろう……。終わったぜ! 紅葉ちゃん、結乃ちゃん! それにチビ精霊さんも……お前らのおかげで勝てたようなもんじゃ……。曲がりなりにも鬼の名を持つ怪異だったからな……さすがに、俺達だけじゃ厳しかった……。コイツはまさに、俺達全員の勝利ってやつじゃな!」

 

 振り向いて、ビシっと親指を立てる宇良部さんに私も同じように親指を立てて応える!

 

 その言葉を聞いて、気が抜けたらしく、紅葉ちゃんがクタッと身体を預けてくる。

 

「わわっ! 紅葉ちゃん! 大丈夫っ!」


 慌てて声をかけるのだけど、返事がない……脱力しきってて、気絶しちゃったみたい……どうしよ?


『無理もない……浄眼を使い続けていたようだったからな……それに、彼女は実質初陣のようなものだ。すまんが、結乃くんと言ったかな……しばらく、そのままにしてやっておいてくれ。もうすぐ、現世護手の増援部隊がそこに到着する……色々後始末が大変そうだな……これは』

 

「清十郎っ! 鬼退治なんぞやって、この程度で済むとか、こんなもん普通に奇跡って言うんじゃ! おいこら! 外法衆! てめぇらも仕事だ! 牛鬼ぶっ潰したからには、敵の術者にもカウンターが行ったはずだ! こんなもん、自然発生して襲撃してくるとかあり得ねぇ……。どっかでクソ術者が血反吐吐いて、ぶっ倒れてるはずだから、草の根分けても探し出せ! こんな舐めたマネしゃあがった落とし前はつけさせねぇとな!」

 

 宇良部さんが声を張り上げると、黒子の人達もバラバラと立ち上がって、散っていく。

 

 こうして……。

 私達の学校を舞台とした異形との戦いは終わりを告げた。

そんな訳で、戦闘パート終了。

尚、ストックが切れたので、明日の更新はお休みさせていただきます。


次回は、まとめパートとなるのですが、色々難儀している模様。(汗)


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