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第一話「魔砲少女 結乃すくらんぶる!」①

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第一話「魔砲少女 結乃すくらんぶる!」①

---Yuino Eye's---

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「ほんじゃ! お母ちゃん! いってくるけんね!」


 そう言って、私はお母ちゃんに手を振って、家の玄関を飛び出した!

 

「結乃ちゃん! 本当に大丈夫なんか? ちゃんと病院行った方がえぇと思うで!」


 お母ちゃんが心配そうにそう声を返しながら、後を追おうとするのを私は制止する。

 

「大丈夫じゃけん! もうピンピンしょーるから、こんなで病院行ったら、仮病とか言われるのが関の山じゃ! 心配せぇんでええよっ! ほんじゃ、もう行くわっ!」


 言いながら、もう走り出す。

 中学までの道のりは結構あって、約1.5kmってところ。

 

 振り返ると山……我が家はその山の麓の公共住宅。

 なんだけど、それぞれの建物に星座の名前が付いてて、なんかお洒落!


 うちは、さそり座なんだって……なんか、そんな歌あったなぁ……なんて事を思ったりもする。


 尚、実際は結構地味でかつボロい。


 冬場は隙間風が吹き込んで来て、家の中で上着着ることだってある。

 まぁ、岡山は冬場でも氷点下いかないし、雪もほとんど降らないから、他所よりはマシみたいだけどね。 


「ねぇねぇ、結乃ちゃん……お母さんがああ言ってるんだから、学校くらいお休みしたって良かったんじゃない?」


 コートのポケットから、顔を出しながらそんな事を言ってくるのは、くろがねちゃん。

 ……私はクロちゃんと呼んでいる。


 クロちゃんは身長10cm程度の小人さん。

 元々はもっと大きかったんだけど、色々あってこうなった。


 正直言って、良く解らないんだけど。

 

 私がこうやって、元気に走り回っていられるのも彼女のおかげ。

 私の命の恩人であり、相棒にして、新しい友達!

 

「いやいや、クロちゃん。今日行かんで、どうすんのって話なんじゃ。中菱の馬鹿……変な噂とか絶対広めると思うんじゃ……じゃけん、先に釘刺しとかんと!」

 

「うーん、暴力とかダメだよ? 君の身体……わたしと同じマテリア体なんだからね? まずは、加減を覚えないと大変な事になるよ! 今だって、そのつもり無いと思うんだけど……時速40kmとか出てるの気付いてる?」

 

 クロちゃんにそう言われて、慌ててブレーキを掛ける。

 いつのまにかバイクの人を追い抜いていたらしく、唖然とした顔をしながらめっちゃ見られてった。

 

 私としては、軽いランニング程度のペースで走ってたつもりだったんだけど……。

 

「あはは……ごめんね! そぉじゃなぁ……気ぃつけんとなぁ……。しっかし、すっごいなぁ……なんか、私スーパーマンみたいじゃのぉ……。」

 

「みたいじゃなく、スーパーマン顔負けなんだよ? 車とかも気をつけないと……事故ったら、君じゃなくて、相手の方が大変な事になっちゃうからね。」


 クロちゃんのお説教。

 これでもう何度目だろう? けど、いちいちごもっとも。

 

 ちなみに、クロちゃんはこう見えてハタチのお姉さんらしい。

 

 でも、見た目はチンチクリンのお人形サイズ。

 

 カッコは銀河鉄道の車掌さんみたいな黒くて厳ついカッコなんだけど。


 私の夜のお供、くまたろう(ぬいぐるみ)より、ちっさ可愛い! 


「ん、クロちゃん先生! ご指導ありがとなぁ。けど、学校じゃ大人しくしててくれんといかんよ? いちお、姿は消せるんじゃったっけ?」


「ふふふ……普通の人には、わたしの光学迷彩術式は見破れないよ? 向こうの世界では、スパイみたいな事だってやってたんだよ。それに中学なんて、文字通り、とっくに卒業してますよーだ。」

 

 ドヤ顔のクロちゃん。

 魔法の世界の……ではなく、この世界の中学……なんだって!


 そもそも、クロちゃんは元々こっちの世界の東京住まいだったらしい。

 すっげー! 首都東京住まいっ!! まじカッコイイ!


「ほら、クロちゃん! ここが私の通う中学校じゃ! 北岡中って言うんじゃ!」

 

 話をしてるうちに、北岡中学校の校門の前に到着。

 いつもよりだいぶ早く着いたせいで、まだまだ全然人影も少ない。


「おおっ! なんか校庭めっちゃ広っ!」


「そ、そーなの? こんなん普通じゃろ?」

 

「うーん、視点が低いせいかな? けど、私の行ってたとこはまっすぐ100m走なんて、出来なかったけど。この学校の校庭……150m走だって出来るよ!」


 そう言いながら、クロちゃんは指で四角を作って覗き込んでる。

 

 ……私も真似てみる。

 目標の大きさが解ってれば、これでおおよその距離が解るんだとか。

 

 なるほど、解らんっ!


「あ、雪宮さんっ! 昨日はどないしょうたの?」


 竹野さん。

 お下げ髪の真面目な子。

 

 クロちゃんは…と思ったら、すでにポッケの中に引っ込んでた。

 良い勘してるっ!

 

「やっほー! 竹野ちゃん! さすが学級委員! 早いんなぁ。」


「もうっ! なんか事故にあったとか何とか言う話聞いて、心配してたんよ!」


 竹野さんは学級委員とかやってる真面目な娘……ちなみに、割と標準語。

 私はおじいちゃんがガチガチの岡山弁ネイティブだったから、自然にこうなったけど、他の皆の多くはこんな調子。

 

 正直、私だってそんなに方言喋ってる自覚は無いんだけど、クロちゃんなんかに言わせると時々何言ってるのか解らなくなるくらいには、方言入ってるらしい。

 

 けど、不思議と皆にはちゃんと通じるし、テレビのアナウンサーの人の喋りと比べても、そんなに自分が変な言葉話してるような感じはしない。


「ぼっこぉきょおてぇかったでぇ! けど、間一髪でひらりと避けて、ご覧の通りピンピンしょーるけん。心配せんでええって……でも、心配してくれてあんがとな!」


「もうっ! 気ぃ付けないとおえんよー」


 そんなことを話しながら教室へ向かう。


 次々とクラスメイトが登校して来る。


 ツインテールの中菱の奴が俯き加減で教室へ入って来て、私の顔を見るとギョッとした顔をする。


 いつもの取り巻き連中が囲んでワイワイ始めるのだけど……まるで聞いてない様子に呆れたらしく、散っていった。


 ちなみに、中菱家ってのはこの辺に昔からある旧家で、なんでも室町時代位から住んでるって話。

 まぁ、要するにイイとこのお嬢様……夏休み明けに東京からこっちに転校してきた。


 でも、いつもツンケンしてるし、取り巻きと一緒に陰険な嫌がらせとかやって来て、割りとどうしょうもない奴……黙ってれば、そこそこ可愛いのに……残念なお嬢様って感じ!


 昨日の件もあるんだけど……あの様子だとほっといていっか。

 

 別に好き好んで関わりたいほど、仲も良くないし……取り巻き連中がタチ悪い連中なんで、正直……関わるだけでも面倒くさい。


 向こうも自分のドジで死にかけた事位解ってるだろうから、あっちから謝るなり、お礼を言うのがスジってもん。


 やがて、担任がやってきて出席を取って、授業が始まる。

 

 自慢じゃないけど、私は勉強の出来はあまり良くない。

 中の下くらいだから、平均よりちょっと下程度だけど、油断してると赤点!


 ……ほんと、自慢にならない。

 

 クロちゃんは大人なんだから、今更、中学の勉強なんて退屈なだけなんだろう……って、思ってたんだけど。


 いつの間にか、ポッケから出てきてて、机の上でちんまりと正座して熱心に授業を聞いてたっ!


 なんか超可愛いんだけど、堂々とし過ぎてこっちが驚いた。


(ちょっと! クロちゃん、何してんっ! 見つかっちゃう!)


(大丈夫! 結乃ちゃん……先生も隣の子もわたしの事、見えてないから……むしろ、結乃っちが独り言言ってるみたいに思われてるよ?)


 言われて横を向くと、隣の席の高山くんと目が合う。


(ね、ねぇ……高山くん、私の机の上になんかおるん?)


 小声で、カマかけって奴をかけてみる。

 

 けど、高山くんも明らかに机の上を見てるのにクロちゃんに気付かない様子。

 むしろ、なんか目が泳いでるし……。

 

 本当に見えてないんだ! ……クロちゃんの魔法パワーすごいっ!


 とりあえず、微笑んで見せると高山くんは赤い顔をして、前を見る。

 私、ナイス誤魔化し!

 

 クロちゃんを見ると、なんかドヤ顔。


 うーん、魔法少女ものにありがちだけど、他人に見えてないなら、好きにさせちゃっていっか。


 もし、見つかったら……説明とか困るな……クロちゃんってどう説明すればいいんだろ。

 幽霊とかでもないし、妖精さんとかでもない。

 

 魔法少女モノで、マスコットキャラやその正体を秘密にするってのは、絶対そういう事だよ。


 見つかって説明とか、どないしろと。

 私も、車に撥ねられて魔法少女になりましたーなんて、お母ちゃんや皆には言えない。

 

 とりあえず……クロちゃんは皆には見えない……そう思ってよさげ。


 なので……一緒に教科書を見ながら、授業を受ける事にした!


 ついでに、解らないとことかもクロちゃんに聞いたら、ちゃんと教えてくれた……。

 おおおっ! クロちゃん、頭よかった! さすが年上っ!

 

 しかも、説明、超解りやすかった! 先生の話より解ちゃった!


 クロちゃん、私の家庭教師になってくれたりとかしないかなぁ……?

 テストの成績とか割りと切実な問題なのよ? 赤点取って休みの間、補習で学校とか切なすぎる。


 ……お昼休み。

 

 今日は教室じゃなくて、お外でお弁当にする事にした。


 ちと寒いんだけど、教室じゃクロちゃんも落ち着いて食べれないだろうから、コート着て暖かくして、誰もいない中庭でお弁当を広げる。


 ぼっちご飯じゃないよ? クロちゃんと一緒だもん!

 

「ほい……クロちゃんの分も作っといたんじゃ! ミニおにぎり! おかずもはんぶんこしよーな。」

 

 そう言って、ピンポン玉サイズのミニおにぎりを見せるとクロちゃんの顔がぱぁっと輝く。

 

「おーっ! 結乃ちゃん! お料理スキル持ちなんだっ! しかも、このおにぎり……ちょっと大きいけど、わたし用に作ってくれるとかなんか嬉しい! ありがとねっ!」

 

 クロちゃんって、食べ物とかどうなんだろって思ってたんだけど。


 普通に私らと変わらないものを食べれる上に、身体もちっこいから少食さん。

 こんな風に、私のご飯を少し分けてあげるだけで、解決だった。

 

 それにおうちでは、私が御飯作ってるから、問題ない。

 お母ちゃんはいつも帰りが遅いし、私は一人っ子だから、晩御飯はいつも独りだったけど。

 

 これからは、クロちゃんと言う相手がいる。


 なんかそれだけでも、すっごく嬉しいな……。

 

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