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第五話「仄かなともしび」②

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第五話「仄かなともしび」②

---Yuino Eye's---

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 ……否が応でも朝は来る。

 

 目覚ましが鳴る……時刻はいつも通り朝の6時……外はまだ真っ暗。

 

 目覚めはいい方だから、すっきり目は覚めてるのだけど。

 何より、冬の朝はやっぱり寒いのだ……お布団の温かさからなかなか離れられない。

 目覚ましがいい加減うるさいから、止めようとしたら、なんか手が空振り。

 

 目を開けると、目覚まし時計を抱えたクロちゃん。

 なんか悪戯っぽい感じでニシシと笑ってる。

 

「こらぁ……目覚ましが逃げるとか反則ーっ!」


 そう言って、ジリジリとなり続ける目覚まし時計を奪回すると、目覚ましを切る。

 スヌーズ機能ならぬ、エスケープ機能付き目覚ましとか……。

 

 顔を洗って、軽く髪を梳かしたら、朝ごはんを作る。

 お母ちゃんは9時出勤で、いつも7時半くらいに起きてくるから、朝御飯と晩御飯は私が作るのが普通になってる。

 

 何とも所帯じみてるんだけどね。

 お母ちゃんは仕事で稼いでるんだから、これくらいやらないと。

 

 クロちゃんは……お料理とかやった事ないらしく、物珍しそうに肩の上で見てる。

 

「結乃ちゃん……お料理すっごい上手なんだねー。包丁さばきとか手際の良さがプロの人みたいっ!」


 プロ並みってのは、言いすぎでしょ……と思ってたら、クロちゃんがバランス崩して、おっとっと……みたいな事やってる。


「クロちゃん、そこに居てもいいけど……お鍋の中に落っこちたりとかしないでね! 落ちたら最後……ダシに……なっちゃうぞーっ!」

 

「ふにゃああああっ! わたしは美味しくないようっ!」


 そんな風に笑い合いながら、ご飯の支度……ついでに、自分のお弁当も作る。

 クロちゃんもお弁当箱やお皿を並べるくらいなら出来るから手伝ってもらう。

 

 クロちゃん用のちっちゃいタッパに小さく切ったおかずを並べるのを嬉しそうに見てるクロちゃん。

 

 なんか、姉妹とかいたら、いつもこんななのかなって思ったりもする。

 

「おはよ……結乃ちゃん……いつも悪いわねぇ……ふぁああ……眠いっ!」


 眠そうな顔でお母ちゃんが起きてきた。

 クロちゃんが慌てて、エプロンのポッケにイン。

 

「あ、お母ちゃん! おはよっ! 昨日は随分遅かったんじゃね! そう言えば、今日はお休みなんだっけ? なら、ゆっくり寝てればいいのに……。」

 

「そうじゃ……だから、たまには朝ご飯くらいって思ったんじゃけど……。結局、寝坊してしもうたよ……こんなじゃ母親失格じゃあね……。昨日は、いざ帰ろうと思ったとこで、急患がきとってな……おかげで帰りそびれてしもうたよ」

 

 お母ちゃんは病院の看護師さん。

 割りとベテランの部類に入るから、急患とかが来ると帰るに帰れなくなっちゃうらしい。

 

「ありゃりゃ……そりゃ、大変だったね……なんかあったん?」


「ごめんなぁ……一応身内にも話しちゃいかんって釘刺されとってね。まぁ……訳ありな人達が訳ありな感じで何人も運ばれてきとって……世の中、平和なようで全然そうじゃのぉてな……。ところで、今日は、何時くらいに帰るんじゃ?」

 

 なんか、はぐらかされちゃった……。

 お母ちゃんの病院って、たまに怪しげな人達が出入りしてるんだよね……。

 でも、お給料は他よりいいらしいし……その辺は詮索しちゃダメっぽい。

 

「んー、天満屋にお買い物行って、いつも通り……4時か5時には帰るよ。」


「今日は、晩ご飯、外で食べない? お買い物は……お母さんが行っとくから、何がいるの?」


「じゃあ、これ……お買い物メモ! これだけお願いじゃ! キッチンペーパーとかシャンプーとかそろそろ無くなりそうなんじゃ……。お外で食べるなら、ちょっと遅くなっても平気? ちょっとお友達と遊びたいなって……。」

 

「構わへんよ……結乃ちゃん、まだ中一なんじゃから、家のことなんかより、友達と遊んだりして良い年頃じゃろう……。でも、出来れば暗くなる前に帰ってきてね……最近、夜は物騒みたいだから……」


 そう言って、お母ちゃんは私の頭を撫でると、優しく微笑む。

 

 それから……身支度を整えたり、色々やってたらもう八時前。

 いそいそと外に出る……クロちゃんは昨日と同じくコートのポッケにすっぽり収まる。

 

 今日は、大丈夫……こっちもボロが出ないように、クロちゃんと色々対策したからね!

 

 しばらく坂を降りていくと、大学の裏通りのとこに赤と黒の派手な中型バイクが止まってる。

 隣には金髪のおっかない感じのライダースーツのお兄さんと、紅葉ちゃんという良く解らない取り合わせの二人がいた。

 

 紅葉ちゃんは、私に気付くと大きく手を振る。


「結乃ちゃん! おはようございますですっ! 良かった! 絶対、ココ通ると思ってたです! 一緒に学校行きませんかぁ?」

 

 ニコニコ笑顔の紅葉ちゃん。

 

 となりのカワサキのロゴの入ったバイクのお兄さんも、私と目が合うと軽く会釈をする。

 心なしかワタワタしてた上に、めっちゃ緊張してる感じなのはなんでだろ?

 

 私もつられて、ペコリと挨拶。

 

 私……背の順だとの真ん中くらい……150cmちょっとはあるんだけど、この人……見上げるくらいでっかい!


 紅葉ちゃんは割りと小柄なんで余計際だってるんだけど……2m近くあるんじゃないかな……なんかすっごい!

 手とかもおっきいなぁ! ピアスなんかしてて、なんか不良っぽいっ! 凄まれたら私、泣いちゃうよっ!

 

 でも……よく見ると、すごく澄んだ優しい目をしてる……。

 一見怖そうなんだけど、その目の優しさに何とも言えない好印象を抱く。

 

 お兄さんかなにか……なのかな? それにしては、全然似てないよ?

 

「えっと、紅葉ちゃんおはよ……でも、中菱のお屋敷って確か植物園の向こうじゃのーて? こっちだとかなり遠回りじゃろ? それとそっちのカッコイイバイクの人はお兄さん?」

 

「まぁ、遠回りなんですけど……結乃ちゃんと学校行きたいなって……。それに、この人……宇良部先輩って言うんですけど、結乃ちゃんのこと話したら、紹介しろってうるさくって……」


「お、おうっ! 俺……宇良部譲って言うんじゃ……紅葉ちゃんのお姉ちゃんの友達なんじゃ。今日は、紅葉ちゃんの保護者兼送迎係ってとこじゃな! 結乃ちゃんじゃったか? 紅葉ちゃんから聞いとるよ……こいつの友達になってくれたってな。どうにも……友達作るの下手くそなヤツでなぁ……いけすかねぇガキどもに囲まれとって、俺も心配しとったんじゃ! 結乃ちゃんは……思ったより感じのええ娘みたいで良かった……是非、仲良うしたってくれ! それにしてもカッコイイっていくら本当のことでも、さすがに面と向かって言われると照れるのう!」

 

 そう言って、豪快に笑う宇良部さん。

 何と言うか……今時珍しいじっちゃんを思い出すコテコテの岡山弁。

 思い切り地元育ちなんだね……なんか見た目は怖そうなんだけど、口を開けばいい感じの兄さん。

 

 いかにも乱暴で苛ついてそうな感じな口調だけど……。

 この感じが我が県民の平常運転……じっちゃんみたいでなんとも懐かしい。

 

 知らない人が聞くと何故か怒ってるとか、不機嫌そうとか言われちゃうんだよね……。

 

 紅葉ちゃんとかむっちゃ丁寧語だし、東京育ちだから……私達の会話付いてこれるのか心配……。

 なんか知らないけど、私も紅葉ちゃんとか話してると普通に標準語で話せるんだけど、岡山弁の人と話すとめっちゃなまるんだよね……。

 

「残念、カッコイイのはバイクじゃ! その大きさだとニーハンじゃな! けど、カワサキとか渋い趣味じゃ! カワサキの音……久しぶりに聞くんじゃけど、相変わらずええなぁ! しかも、この低音の効いたエンジン音……単気筒じゃなっ!」


「なんでぇ……俺の事じゃねぇのか……なんじゃ、結乃ちゃんバイク詳しいんか?」


「じっちゃんがバイク乗りじゃったんじゃ! カワサキのゼファーってのに乗っ取ったんじゃけど、知らん? じっちゃん生きとった頃は、バイクの整備手伝ったり、二人乗りで遠乗りとか付き合わされとったよ……。私も16歳になったら、バイクの免許取って風になるんじゃ!」

 

「マジかよっ! ゼファーっていやカワサキ乗り垂涎の伝説の名車じゃねぇか……。そうか……結乃ちゃんの爺さん……生きてる時に会いたかったのぉ。俺のコイツはニンジャ250SL-Ⅱってモデルじゃ、一応最新式。ゼファーと比べられたら、オモチャみてぇなもんじゃが……この単気筒エンジンの重低音……たまらんじゃろ!」

 

 そう言って、アクセルを空吹かししながら、嬉しそうに笑う宇良部さん

 なんか、すっごい気安い感じなんだけど、妙に人懐っこくて、このお兄さん……なんか気に入っちゃった。

 

 じっちゃんもバイク乗りに悪いやつは居ないって言ってたけど、ホントだね。

 いいなぁ……バイク! 頼んだら後ろ乗せてくれたりしないかな? 久しぶりに乗ってみたいな!

 

「あはは……なんなら、今度うちん? 一応、じっちゃんの形見だから、お庭にシートかけてそのまま置いてあるんじゃ。動くかどうかまでは解からんけど……動きそうなら、持ってっちゃってもええよ……じっちゃんもその方が喜ぶ!」

 

「おおっ! まじで! じゃあ、今度結乃ちゃんちお邪魔させてもらうぜ! 大型二輪の免許はさすがにまだもっとらんのじゃけど……春には俺も18だからな! ゼファーなら、レストアしてでも乗る価値はあるんじゃ!」


 宇良部さん、めっちゃ食いついてきた!

 実際、じっちゃんの形見って事で捨てる捨てられず、日に日にサビまみれになって……なんか可哀想だったんだよね。


 私がゼファーに乗れる頃なんて、どんなに早くても5年も先のことだから……。

 宇良部さんなら、大事に乗ってくれそう!

 

「そんかし……今度、バイクの後ろ乗っけてくんない? 久々に風になりたいんじゃ!」


「おう! 結乃ちゃんみたいな可愛いコちゃん後ろに乗っけるとか、むしろ約得、大歓迎じゃ!」


 思わず、私も前のめり。


 知り合ったばかりの男の人とそんな約束しちゃうとか我ながら大胆!

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