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第四話「私のともだち」①

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第三十一話「ともだち」①

---Kureha Eye's---

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 世界が変わる瞬間って、誰にだってあると思うのですです!

 私にとっては、結乃ちゃんと友達になれて、秘密を共有出来たのが、まさにそんな感じでした。


 こっちに来て、まともな友達なんて出来っこないって思ってたのに……結乃ちゃんは友達って言ってくれた。

 散々嫌がらせや、いじめみたいな事だってしてきたのにも関わらず……です。

 

 言い訳がましいけど、あれは取り巻き連中が勝手にやってた事。

 けど、私も別に止めもしなかったし、けしかけるような事だって言ってた……それにしっかり手も出していた。


 ……昨日だって、馬鹿じゃないの? なんて言われて、ついカッとなって手を出そうとした挙句、あの体たらく。

 

 私もあいつらと、同罪と言われれば返す言葉もありません……正直、みっともなくて死にたいくらいです。

 

 でも、結乃ちゃんはそんな私を笑顔で許してくれた……。

 ああ言うのを天使みたいな娘って言う……まさに、そんな言葉がぴったりだった。


 あの笑顔を見た瞬間、昨日までの私は死んだ……まさに、私が私として生まれ変わった瞬間!

 ハッピーバースディです! 私っ!


 正直、愛想笑いと見栄を張って、周りに合わせる毎日に疲れ果てて……学校行くのも嫌になりかけてましたけど。

 なんだか明日がとっても楽しみです!


 帰り際に割りと無理矢理な感じで一緒に撮ったツーショットの写真を改めて見て、何とも幸せな気持ちになる。


 思わず、私のスマホの待受にしちゃいました……この写真は私の宝物ですですっ!

 あとでプリントして、お部屋に飾らないとです!

 

 ああ、今日は眠れないかもしれませんっ!

 

 そんな風に思いながら、足取りも軽く我が家へと続く山道を急いでいると、いつの間にか山から降りてしまってました……。

 ほとんど一本道だから、迷いようもないのですが……。

 

「あれ? 人払いの結界……? なんで、こんなところでこんなモノが起動してるのです?」


 ……家の周囲の結界は、私に対しては起動しません。

 それに術式の基本構成式が陰陽式じゃなくて……これは鬼道式きどうしき? 


 つまり、これは誰か外部の術者によるもの……だれだろう?

 鬼道式の使い手となると、外法衆の人達の仕事だと思うのですが。

 そんな話聞いてません……。

 

 ひとまず、このままではいつまでたっても家に帰れないので、結界の解除を試みます……。

 私にとっては、結界の存在に気づきさえすれば、ほころびを見つけて、ほどくのなんて造作も無いこと……。

 

 そんな事をしていたら……いつの間にか背後に人の気配。

 振り返ると、金髪で背の高いお兄さん……譲先輩だった。


 思わず、身構えそうになったのだけど……よく知ってる人だから、ほっとする……。

 

「おっと! 誰か結界いじってる奴がいると思って来てみりゃ、紅葉ちゃんか! すまねぇな……実は俺達、中菱家の周辺警護のお勤め中でな……ワリィな……脅かしちまったか?」


 身長140cm台とあまり大きくない私からすると、もう見上げるくらいの長身……2mはあるんじゃないだろうか。

 何と言うか……やっぱ、カッコイイですっ!


「先輩、こんばんわです! ……えっと……そうなると、今日はお勤めって事なんですね……いつもご苦労様です……。お姉ちゃんのお役目……かなりの大物相手って聞いてましたけど……。先輩まで動員されてるとなると、相当だったんですね……。けど、日が暮れる頃には終わってるって話じゃなかったのですか? まだ終わってないなら……私、邪魔ですよね……どっかで時間つぶしてきた方がいいですかね……」

 

 私がそう返すと、先輩は無線機に何やら指示を出してから、少し考えるような仕草をする。

 

「んー、そんなとこじゃあるな……気ぃ使わせてすまんな……。実はちょっと、トラブってて、まだしばらくお屋敷には戻らん方がええ。今、お屋敷に総社のお偉いさんがぎょうさん集まっとるんじゃ……それもあって、俺達が警護役として呼ばれたって訳じゃ。紅葉ちゃんは……あまり、こっちの世界に関わりたくねぇんだよな……。まったく、誰しも生まれた家ばかりは選びようがねぇ……その辺、俺も一緒じゃ……お互い苦労するのぅ」


 譲先輩は高校二年生……私とは4つも上で、言葉使いとか乱暴なんだけど、いつも気さくに接してくれる。

 翠お姉ちゃんとよく一緒にいる上に、お姉ちゃんがそう呼ぶんで、なんとなく私も先輩と呼んでしまってる。


 けど、異母兄弟の兄よりも、先輩の方が余程お兄さんしてます。

 うちの兄は魔術師としても、人としても三流……そのくせ、プライドだけ立派なクズ……そう言わざるを得ません。


 翠お姉ちゃんを好色な目で見てることもあるし、私のことを舐め回すようにジロジロ見たりすることだってある……。

 見た目はそこそこ端正なんだけど、どことなく爬虫類系……つまり、とってもキモいヤツです!

 

 何もかもサイテー! いっそ、居なくなって欲しいと何度思ったことやら……。

 

「それにしてもどうしたんじゃ? いつもは仏頂面のクセに……今日はえらくご機嫌そうじゃな。何か良いことでもあったんか?」

 

 そう言いながら、人懐っこい笑顔を浮かべる譲先輩。

 最初は金髪でピアスとかしてて、ガラの悪いヤクザ言葉のおっかない人って思ってたんだけど。

 

 話してみたら、気の優しい良い人だった……もう一人の政岡先輩もカッコよくて、いい人なんだけど。

 立場的にも、同じ日陰者同士と言うこともあってか……何となく、お互い通じる所があった。


 それに……現世護手の人達の中でも比較的年も近い方だし、話も解るし、気も優しい……もっと年が近かったら、きっと惚れてました。

 

 でもさすがに、高二と中一だと……私なんかお子様扱い……それに、お姉ちゃんがいますからね!

 

 そう言えば……結乃ちゃんは、どんな男の子が好みなんでしょうね?

 友だちになれたのなら、そんな恋バナだってしたいです……。

 

 さっきはなんか、感極まって思わず抱き付いちゃったんだけど……。

 そ、それくらいフツーですよね? 一応、すぐ離れましたし!

 

 けど、あの瞬間の胸の高鳴りはなんだったんだろって思います。

 

 もしかして、私……女の子を好きになっちゃったんでしょうか? いやいや、待って……。

 けど……結乃ちゃんと手を繋いで街を歩いたり、ギュッとされちゃったりとかしたら……。


 な、なんか想像しただけで、胸がキュンってしましたぁっ!

 

「あー? 紅葉ちゃん……顔赤いしなんか上の空みたいな感じなんじゃが、ホント大丈夫なんか?」


 心配そうに宇良部先輩が腰をかがめて、私の顔を覗き込んで来て、私は妄想の世界から引き戻される。

 目の前に顔があって、思わず一歩下がる。

 

 けど、よく見るとほっぺに手形みたいなのがついてる……さては、また何かやらかしたのでしょうか?

 

「だ、大丈夫! 何でもありませんからっ! んっと……ですねっ! 今日、新しい友達が出来て……その娘の事考えてました……えへへ。」


 私がそういうと譲先輩は我が事のように嬉しそうに破顔すると私の肩をバンバン叩く。


「おおっ! そっか! そっか! そいや、学校でまともな友達がいないとか言とったもんな……そいつぁめでてぇ……良かったなぁっ! ええか? ダチってのはかけがえないもんだ……特にいざって時に迷わず助けてくれるような奴! そう言うダチはマジで貴重な一生モノじゃけんな……大切にしねぇといけんぞ!」

 

 そう言って、私の頭を撫でる譲先輩。

 子供扱いするなって言いたいとこだけど……お父様や兄だって、こんな事はしてくれません。


 目下、私のお兄さんになって欲しい人、ナンバーワンです!

 

 けど……いざって時に迷わず助けてくれる友達……。

 そう言われて、真っ先に結乃ちゃんの顔が思い浮かんだ。

 

 とっても可愛い、私の命の恩人……。

 

 決めました! 私もいざって時は我が身も顧みず、結乃ちゃんの助けになりますっ!

 これは、私の魂の誓い……。

 

 あの時、命をかけて助けてくれたんだから、もうそうするのが当たり前です!


 結乃ちゃんの秘密だって、絶対守る! 絶対だからね! 結乃ちゃんっ!

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