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1話 異なる世界

なんてこった・・・


ネコになってしまった黒井は仕方なくネコになったという事実を認め、今自分がいたこの裏路地から四足歩行で歩いて人が多い大通りに出た。なお、最初はまともに歩けるか不安だったが、すんなりと、まるで最初から四足歩行してたかのように歩けた。


「は、はは・・・マジか。」


大通りに出て目についたのは、自分よりも大きい人達だった。それだけなら普通なのだが普通と言い切れないところがある。

黒井の常識なら今日はハロウィンやエイプリル・フールといったイベントがある日ではない。なのに、普通に鎧を纏い腰に直剣を差している騎士っぽい人が堂々と歩いていた。他の人も黒井がいたところでは見たことが無いような服を着ていて、普通に歩いている。


「ここまで来るともうあれだな、これは異世界に来ちゃったパターンか!て、テンションあがるッ!!」


異世界に夢見る男子は多い。無論この黒井もその一人だ。

現実で嫌なことに直面するたび異世界に行きたいと何度も思っていた。

器用に後ろ足で立ち上がり右手を天に突き出す。それを見ていた親子の幼女が指を指して「ねこたんねこたん!」と言っている。その笑顔が眩しく見えた。思わず何かを抑えきれなくなりそうだ。


「いかんいかん、子供に、まして幼女に手を出したら犯罪だっつーの。煩悩退散煩悩退散」


頭をブンブン振りこみ上げてきたものを振り払う。周りから見ればネコが唸りながら首を振り始めだけに見えるが当の本人はそんなつもりじゃない。


人混みに混ざって街を歩いてみることにした。まずは情報収集だ。ネコが集められるものはなにか?

会話はできない。こちらから声をかけたが相手には「ニャーニャー」鳴いてるようにしか聞こえてないようなので意思疎通はできない。ちなみにこの世界の言語は黒井が最も慣れ親しんだ日本語だったので聞くだけなら簡単なのである。

会話が出来無いとなるとほぼ手詰まりだ。情報の基本は人に聞くことなので、あとはもうひたすら見て回るぐらいしか方法がない。

そこで問題があった。


「これは異世界転生の典型的パターンってやつか。くっ、実際目の当たりにするとこれは困ったぜ。」

街中で目にする記号のようなものが看板みたいなものに羅列されている。どうやらこの記号のようなものがこの世界の文字らしい。全くもって意味不明理解不能だ。


「言葉はわかるが通じない、文字はさっぱり。うむむ。」


詰みだ。とその場でギリギリ届く手を頭に回し困ったポーズをとる。周りの目線が集まるのを感じる。見せもんじゃねぇーぞ!フシャー!

「ガルルル」とネコらしからぬ唸り声をあげると人は黒井を見るのをやめ・・・ることなく、更に視線を集めてしまった。まるで珍妙なものを見ているそれは、黒井の豆腐より少し固めなメンタルをゴリゴリ削っていった。


「あのネコ体毛が黒って珍しくね?」


「黒いネコか、多分魔法使いサマの使い魔とかだろ?なら関わんないほうが良いかもな。うっかり魔法で消し飛ばされちゃうかもしれんし。」


「はっ、そいつぁ恐ろしいこった。んなことよりはやく飯にしようぜ飯!」


「そうだな。」と頷いて黒井に聞こえるくらいのところで話していた二人組の鎧をまとった男は目的の飯のために、人混みの中に消えていった。

その会話の中、黒井はしっかりとその単語を聞き取っていた。


「ほう、【魔法使いサマ】の【使い魔】ね。つまりこの世界にはまぁ、魔法使いとかそーゆーファンタジー要素があって、使い魔などもいるってことか。」


ますます興味が湧いてきた。あっやべっ、妄想が止まらなアバババババ・・・おっとよだれが。

少し過剰な妄想癖もまた彼の一つの個性だ。その中身について言えることは、それを知った途端誰もが彼を蔑むような内容であるが、それを知る人はいない。

その他にも気になるワードが【黒ネコは珍しい】とか、こっちじゃ黒ネコすくないのかな?と思った。

とりあえず周りの人達を、正確には髪の毛の色を見ていく。

赤、青、黄、緑、茶・・・と実にカラフルなのだが、一つ全く見つからない色がある。

そう、黒だ。黒色が少ないのではなく、いないのだ。


「つまり、この世界は黒い毛って時点で珍しいのか。猫までもそうなんだと思わざるを得ない何かがある。」


まさか毛皮剥ぎ取られたり!?やばっ、命の危機を感じるッ!!


「でも、うん。」


さっきの奴らが「黒いネコは魔法使いの使い魔かもしれない。魔法で消し飛ばされちゃうかも。」とか言っていたのを思い出した。深く考えずに要約すると、黒ネコ=危険、手出しするなと言っている気がする。

つまりは危険なことはそうそうないということってことか。


「初日から追われるって心配がなくて安心したぜ。はぁ〜っと、んじゃ、行きますかね。」


スッと立ち上がると黒井は人の足元を縫うように移動し、そのまま裏路地へと消えていった。

あとに残るは今まで黒井ネコを見ていた人々。


「あのネコ・・・なかなか、うん、きめたわ!」


そう言って人混みの中何かを決断した人がいた。

「どいてどいて〜!」と目の前の人を手でかき分けて、ネコが去っていった方向に進んでいった。人に何度もぶつかったがそれをすべて無視してまで前に進んでいく。


「危ないなぁあいつ。」


「あれ、でもあれあの【魔法学校の生徒】じゃねぇか?あの帽子とマントは。」


青を基調とした帽子とマントは黒井が見ればいかにも【魔法使い】っぽい服装であり、彼等が言うには【生徒】と言われたその人は「待っててね、ネコちゃん。」と呟き、もう見えないはずのネコの行方を追って消えていった。



どうも。さてさて今私黒井は目が覚めた場所である路地裏にてあることの検証をしていますです。

誰もが一度はほしいと思うあれです。


「さぁ!俺の能力はなんだ!圧倒的な火力か!!はたまた無敵の防御か!!」


現在ものすごく興奮している。だって、これのためだけに生きてると言っても過言じゃないし?

黒井がそこまで興奮する理由・・・【能力】である。


「と言ってもどうやって確認するかな。」


試しに黒井はゲーム知識で思いつく限りの魔法の名前を叫んだ。しかし「ファイア」「ブリザド」「サンダー」と、黒井の知る基本三種を唱えても手応えなしだった。

他にも思いつく限りの魔法を叫んだが、結果はのどを痛めただけだ。


「ぜぇ・・・なんだと・・・はぁ・・・。」


息を切らして疲れたのかダラーンと地面に横たわり、休憩する。今いるところは、人気がなく、薄暗く、大通りからも離れていてこっそり何かをするにはうってつけの場所だった。


あーあ、何でもいいから『でてくれ』。と思った時だった。


『ブゥィン』と、パソコンの起動音にも似た音とともに、黒井目の前に一つのスクリーンが現れた。


「くぁwせdrftgyふじこlp」


それの急な出現に驚き、なんとも言えない悲鳴を上げながらピョーンと飛び上がった。毛は全身逆立ち、手足からはニョキッと爪が出ていた。


「ハーッ!ハーッ!なんだよ驚かせんなッ!!」


出てきたものがゲームのメニュー画面のようなものだということに気付くのに数秒かかった。分かった途端怒りを露わにして睨みつける。大して向こうは、そのスクリーンに薄く黒井の歪な変顔を映していた。


「あ、俺ってこんな顔なんだ・・・じゃなくてメニュー画面か、『でろ』って念じたから出たのかな?」


じ、じゃあ、と今度は『閉じろ』とスクリーンを見ながら念じた。『シュイン』という音とともにスクリーンは空間から消えていった。また、『でろ』と念じると先ほどのように目の前に現れた。


「なるほどなるほど、念じるだけで操作可能か。便利だなぁ・・・」


仕組みはだいたい理解した。なら次は中身の確認だ。よーし、どれどれ・・・【ステータス】と【アイテムBOX】しかねぇじゃんか・・・え、マジでこの2つだけ?マップとかないわけ?うわぁ、欠陥品だぁ。


項目の少なさにショックをつけつつも、早速確認作業へと移る。まず【アイテムBOX】から確認した。ちなみに操作方法は目線で操作するようで、【アイテムBOX】の項目に目線移動し、『開け』と念じたら開くことができた。戻るときは上にある【戻る】のアイコンからということだろう。


「その親切さをメニューの向上に使って欲しいなぁ。っと、これはこれは?」


アイテムなしを考えていた黒井だが、以外に2つも入っていた。その2つを目線の操作で【アイテムBOX】の外に出した。すると黒井の目の前のスクリーンの後側に物が落ちる音がした。

落ちたのは、ペットボトル飲料水一本とコーラ味の飴玉が1つ。


「これ、俺のバッグの中にあったものじゃん。なんでこれだけなんだよぉぉぉ・・・。」


その内容にまた凹んでしまう。飲み物の方はまだ栓を開けていない紅茶だ。まず、ネコの手では開けられない。つまり、意味のないものとなっていた。


「目の前にあるのに飲めないこの状況。これが生き地獄か!」


飴の方も包装してあるのでうまく開けれない。泣く泣く2つを手で触りながら念じて【アイテムBOX】に戻した。いつか使えるその日が来るまで封印だ。


「さ、さぁ気をとりなおして【ステータス】見るか!」


先程までのアイテム事件を忘れ、【ステータス】を開く。すると現れたのは久しく目にしてなかった日本語の文だ。


ーーー

名前  黒井 Lv 1   

性別  ♂

種族  猫


筋力値 15

守備値 10

俊敏値 30

魔力値 10000


【スキル/魔法】

【想像】

・自分が想像した魔法に効果を与え発動させる。想像できないものは発動しない。発動キー【イメージ】【発動】【解除】

【メニュー】

【ステータス】と【アイテムBOX】が使用できる。発動キーは任意。


ーーー


ほーうへーぇふーん・・・すっげぇぇぇぇぇぇぇえ!?


「チート!チートキタコレ!チートキタコレッ!!」


つまり想像できるなら何でもできるってことじゃん!

黒井はウサギのようにぴょんぴょんと跳ねまわった。少しぎこちない動きで跳ねているので時折狭い裏路地の壁にぶつかっている。


「じゃあ、早速やってみよう。むむむっ」


『イメージ』と頭の中で唱えると・・・特に変化はなかった。まずは燃え盛る火をイメージした。ただ一箇所に燃え上がる火を慎重にイメージして、「発動」と唱える。


ゴォウ!ボボボボボッ!

想像が実体化した火が目の前の空間を燃やすように現れた。燃え盛る火は天高くまで昇り、その熱をあたりに撒き散らしている。

・・・成功だ。よしッ!


「次は・・・『イメージ』・・・えっと、水のイメージ。」


黒井は次に天から降り注ぐ大量の水を、滝を想像した。だいたい固定化したイメージを『発動』と唱える。


ドドドドドド ザーーーッ!!


「やった!・・・!?」


天から降り注ぐ水が滝のように、黒井が最初に出した火に降り注ぐ。それによって火はどんどん鎮火され、勢いが弱まっていった。しかし、その後の自分への被害を考えていなかった。

火を鎮火した水は消えることなくどんどん溜まっていき、その水が一気に黒井の方へ流れてきたのだ。予期しない出来事により黒井はパニックを起こした。


「わわわ、に、逃げないと!?」


自分が発動させた魔法から必死に逃げた。だが、黒井が逃げる速さより、水が流れる速さの方が圧倒的に速く黒井は波に飲まれてしまった。


「ガボッ・・・フボボボボ!?」


マズイマズイマズイ苦しい苦しい苦しい誰か助けて!

必死に手足を動かすが思うように水を掻けず、水面に上れなかった。口から水が入り息苦しくなり、意識が遠のきそうになる。死を覚悟した。

ま・・・だだ、『解除』

黒井は辛い意識の中、水中で『解除』を唱えた。口に出して言えないので頭の中で強く念じて唱える。すると、黒井を飲み込んで流れていた水が、一瞬で元からなかったかのように消えていた。


「ゲホッゲホッオエェッ!!」


濡れた地面に叩きつけられるように落ちた黒井は激しく咳き込み、肺にまで入り込んでいた水を吐き出した。吐き出した後、荒い息を吐いて天を見上げる。そこから見えるのは建物によって狭く見えるがどこまでも青く、澄み渡った空だ。


「はぁ、はぁ、はぁ、なんとか・・・生きてる。」


そして、黒いの意識は魔法の危険で擦り切れたところに、生き残れたという安心感が最後の決め手となり、気絶した。


気絶して数分経った時のことだった。その黒井に近寄る帽子とマントを身に着けた一人の少女が黒井に近寄っていった。


※能力について

【想像】の欠点はパニックになることや、怒りなどの、頭の中が真っ白になってしまうことです。


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