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悪役聖女の世直し旅~連載版  作者: 寺垣薫
第1章 獣士回収編

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10/11

十話 毒饅頭とイカサマ貴族(下)

本日二話目

というか、前話の後半が切れていたことに気が付かず投稿してしまいました

申し訳ありません

 その後もゴドーは三個、シルヴェーヌが一個を食べるという展開がしばらく続いた。


 36、33、32、29、28、25、24、21、20、17、16、13、12。

 饅頭はどんどん減っていく。


「さあ、これで残り九個だ。そろそろ諦めたらどうだ? この毒は子どもには耐え難い苦痛だぞ」

「ご心配して頂いてありがとうございます。でも、今日の私はついているような気がするから大丈夫ですよ」


 シルヴェーヌはまた一つだけ食べる。

 これで残り八個。


「それは俺も同じだ。今日の俺はハズレを引きそうにない。これで残り五個。もう、いつ毒饅頭を引いてもおかしくないぞ?」


 シルヴェーヌが一個を食べて、饅頭は残り四個となった。


「子どもの割には随分と頑張ったが、これで最後だ!」


 ゴドーはそう言って饅頭を三個手に取ると一気に口に入れ……そして、ニヤリと笑った。


「どうやら最後まで俺はハズレを引かなかったようだ。残念だったな。俺の勝ちだ!」


 ゴドーは饅頭を頬張りながら勝利宣言をした。

 皿の上にはポツンと饅頭が一つだけ残っている。

 もちろん毒入り饅頭だ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆




 嬉しそうに勝利宣言をするゴドーを見て、私は吹き出しそうになった。


 彼は大きな勘違いを二つしている。


 一つ、彼は「特製の毒なので回復魔法は効かない」と言っていたが、それは正確ではない。

 正確には、調合された毒を解毒する場合には、どんな比率でどんな毒を調合されたのかを知らないと回復魔法の解毒効果が極端に落ちるだけなのだ。


 二つ、彼は勝ったつもりになっているが、それは幻想だ。 

 原作知識でこの毒の正体を知っている私にかかれば通常の解毒はもちろん、口の中に入れた瞬間に毒を無効化することだって造作も無い。

 

 私は毒饅頭を口に入れて、彼に言ってやった。


「どうやら私の勝ちのようですね」

「な…な…?? なにぃっ??」


 ゴドーはまだ混乱していて状況を理解できていないようだ。


「私が最後の一個の饅頭を食べたことで、皿の上にもう饅頭はなくなりました。次はあなたの番ですが、食べる饅頭がありません。『一分以内に饅頭を食べないと負け』なのですから、あなたの負けは確定しました」


 ゴドーはプルプルと震えている。

 状況が理解できたようだ。


「おい! どうして、毒饅頭を食べて平気なんだ?」

「私はあらゆる毒を無効化できますので」

「そんなこと、ありえないだろ!」


 半分は本当だ。

 例え毒の成分を知らなかったとしても、私なら少し時間をかければ効果が極端に落ちた回復魔法でも無理やり解毒する事もできただろう。

 並の使い手にはもちろんそんなことは無理だが、私にならそれができる。

 ただその場合、完全に解毒するまで毒の激痛が続くのでかなり大変だっただろうけど。

 そう言えば、原作聖女はその状態でポーカーフェイスを貫いてゴドーに勝利したんだよな。

 やっぱり恐るべき相手だ。


「そんなことより、百万シルの支払いをお願いします」

「待ってくれ、今は手持ちがないんだ」

「掛け金もないのに百万シルの勝負を仕掛けてきたということですか?」

「う……」


 彼としては、事前に毒饅頭の位置を知っていて、しかも毒饅頭には自分にだけわかるような小さな目印をつけていた。

 さらに勝利を確実にするために、仮に私が先攻を希望しても確実に自分が先攻になるようにイカサマコインやイカサマサイコロを用意していたはずだ。

 三十六個の饅頭で交互に一~三個ずつ交互に食べていくならば、先攻をとれば確実に最後の一個を後攻側に回すことができるのだから。

 彼からすれば、勝利は約束されたものだったはず。

 しかし、現実は違う。


「こういう場合はどうなるんですか? 立会人さん」


 すると、今まで石像のようにじっとして一言も喋らなかった立会人が初めて口を開いた。


「規定としては奴隷として売り飛ばして代金の回収をすることになっています」

「奴隷って……ちょっと待ってくれよ。すぐに実家からお金を送ってもらう。少しだけ待ってくれ」

「この場合、待つ必要はあるのですか?」

「ありません」


 立会人のその言葉を聞いたゴドーは人生が終わったような顔になった。


「安心してください。奴隷はもう足りていますから」


 私の言葉でゴドーの顔に希望が浮かんだ。


「私の従者になってください。もちろん終身雇用です」


 ゴドーの顔は再び絶望に満たされた。


「嫌なら奴隷行きですが、どうします?」

「……従者にしてください」


 ゴドーの目は完全に虚ろだ。

 諦めたのだろう。


「ゴドー・元『士爵』、これからよろしくお願いしますね」

「!!!!」


 ゴドーは酷く驚いた顔をした。

 私が彼を従者にしたのは、あの高名なゴドー『男爵』だからなのだと思っていたのだろう。


「知っていたのか」


 ゴドーは吹っ切れたような顔をした。


「もちろんです。あなたを従者にするために、わざわざこの街まで来たのですから」


 ゴドーは涙を流した。




---




 ゴドー・元『士爵』はあの高名なゴドー『男爵』の腹違いの兄だ。

 小さい頃は素直で頑張り屋さんだった彼も、天才の弟と比較されるうちに歪んで折れてしまったのだ。

 何をやっても一つ年下の弟に勝てない。

 それでも彼なりに頑張ったのだが差は開く一方。

 

 そんな彼に限界が訪れたのは、密かに思いを寄せていた幼馴染が弟と婚約した時だった。

 もし、二人が両思いでなければ強引にでも割り込もうとしただろう。

 しかし、二人は相思相愛でお似合いのカップル。

 それに加えて、生まれも能力も性格さえも弟に完敗だった。


 生まれは、正室の子で次期ゴドー伯爵家当主の弟、側室の子で一代士爵の兄。

 能力は、近隣に名が轟くほどの天才な弟と、せいぜい上の下程度の兄。

 性格は、人格者の弟と、ひねくれ者の兄。


 何一つ勝てる要素はなかった。

 我慢できなくなった彼は遂に家を捨て、貴族の座を捨てて、故郷を飛び出したのだ。

 そうして気がついた時には弟の名を騙ってイカサマ博打をするようなダメ人間になっていた。

 原作では更にあと七年、つまり原作聖女に出会うまでこんな自堕落な生活を続けていたのだ。


 しかし、彼は今はまだ十五。

 今からお父様に鍛えてもらえば、弟を倒せるほどに強くなるのも十分に可能だろう。

 原作では、獣士になったことで弟に勝てる分野ができ自信を持ち立ち直っていった。

 だけど、努力した凡人が天才を倒すなんて燃える展開じゃないか。

 せっかく私の獣士になったのだから完勝させてやりたい。


 きっとお父様も喜んで協力してくれるだろう。

 ゴドーがどんな喜びの悲鳴を上げてくれるのか今から楽しみである。




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