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私は急に止まれない。小話  作者: 桜 夜幾
7/7

陽向先輩がいない生徒会


 康之介が生徒会室に帰って来て早々、ソファに座ったかと思うとテーブルに突っ伏した。

「つ、つ、疲れたぁぁぁ」

 学園祭の準備真っ直中で、康之介は中等部に行って帰ってきたところだろう。

 補佐の仕事は外回りが多い。

 昨年はこれを、初期は陽向先輩が一人で行っていたらしい。後半は色々あって二人行動になったみたいだけど。

 外回りが多いとはいえ、生徒会室での仕事ももちろんある。

 この後、康之介は部室棟へ行って、書類の不備があった所を修正してもらいに行くのだという。

「これ、本当に陽向先輩一人でやってたんですか」

「うん、そうだよ。一緒に行くから待っててねと言っても、先に行っちゃうんだ。まぁそのお陰で仕事は捗ったけど」

 芹会長が康之介の肩をぽんぽんと叩きながらねぎらっていたけど、真由先輩の淹れてくれたお茶を飲んであっさり回復するあたり、まだまだ元気らしい。

「ついでに、これ届けてきて」

「……っ! これ部室棟の最上階じゃないか! 純の鬼ぃぃぃ」

「ふうん……。今、やってる仕事が終わったら手分けしようと思ったのになあ」

「じゅ、純!」

「ほら、帰ってきたら理事長の差し入れ一緒に食べよう」

「う、うん」

 康之介が書類を持って飛び出して行くと、芹先輩が笑いながら僕にタブレットを渡して来た。

「さすが、中等部で三年間一緒だっただけのことはあるね」

「康之介は優秀なんですけどね、集中力が続かないのが難点で」

 最近、陽向先輩のお陰でタブレットなら操作できるようになってきたし。本当に周りに恵まれてるよなって思うこのごろ。僕が教えてもさっぱり覚えなかったくせに、まったく。

「これを持って職員室に行ってきてもらえる? 変更があるようだったら、そこで直してこっちに送信してくれると助かる」

「急ぎですね、わかりました」

 業者に発注するために、営業時間内に連絡をしたいのだと思う。

 たぶん、陽向先輩ならこれすらも抱えて飛び出して行くのだろう。


 凄いな。


 もはやそれしか言えない。

「帰ってきたら、皆で休憩しよう。頼んだよ」

「はい」

 生徒会室を出て廊下を歩いていると、何人かに陽向先輩のことを聞かれる。急いでいるのでと断って職員室へ行くと、こちらでも先生たちに陽向先輩のことを聞かれることになった。

 

 陽向先輩、皆心配してますよ。

 

 僕も陽向先輩の笑顔がみたいです。

 だから早く、帰ってきてください。

 陽向先輩には及びませんが、僕も康之介も一生懸命仕事をしています。

 

 僕と康之介は、この時……陽向先輩に何が起こっているのかを詳しくは知らされていなかった。

 だから、生徒会の先輩たちや陽向先輩の口から聞かされた出来事に、驚いて二人で顔を見合わせる事になるんだけど。

 

 それはまだ先のこと。


 学園祭の準備で騒がしい廊下を、僕はただ生徒会室を目指して急いで歩いていた。




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