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私は急に止まれない。小話  作者: 桜 夜幾
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夏休みだが?



 終業式が終わった放課後のこと。

 友達とはいえ、夏休みに入ると頻繁には会えなくなるので俺たちは教室で少し話をしていた。窓際だと暑いので真ん中辺りで話をしている。

 他のクラスの友達も来ているのだが、その彼目当てに女子がドアからこちらを見ていたり、ひそひそ話をしているのが目に入った。ご苦労なこって。

「ふうん、反省文も追加されたんだ?」

「そうなんだよ、最悪だろ?」

「だから、噴水で水浴びなんてやめろよって言ったんだ。悪のりがすぎる」

 俺は彼らと同じ中学出身ではないけれど、結構近い中学に通っていたので顔見知りではあった。何しろ他校の生徒だというのに有名人だったし、妹にお願いされて妹の友人と三人で学校祭に行った記憶がある。

 なんどかもめ事に巻き込まれたので、あっちも俺を覚えていたようだった。


「庭園にさ噴水あるだろ? あそこで水浴びしねぇ?」

 数日前にそう言われた時、賛同したのは同じ中学出身の三人。俺は庭園の使用規定を何度か読んだし違反だからと軽く止めておいた。

「いつ行っても、あんま人いないだろ」

 まぁ確かに…と思ってしまったということもある。 参加は固辞したが。


 次の日にプール清掃をやらされることになったと、教室にいた俺に生乾きの髪のまま面白くなさそうに言った若尾は、あいつさえ来なきゃとつぶやいていた。

 来ようが来まいが違反は違反だから、しっかり清掃しようと言うと不思議そうな顔をしていたが、当日俺も清掃に現れて驚いていた。止められなかった俺にも責任があるのだろうからと言うと、笑って肩を叩かれた。

「若尾」

 と呼ぶと。

連歌れんがでいい」

 と言われた。連なる歌と書いてレンガと読むらしい。長方形のあれを思い浮かべてしまったのは、きっと俺だけじゃないと思う。

 

 さすがに当事者ではないので反省文は書かなくても良くなったが、四人だったはずの人数が一人増えていて蓮見先生が驚いた顔をしたのは面白かった。

 律儀だなと言われたが、本当に律儀ならなんとしても止めているはずだ。見つからなかったら良いのかもと思ったのだから同罪だろう。

 

 終業式の日。

 スキップでもしそうな感じで廊下を歩いていた連歌と会った。

 何か楽しいことがあったのか? と尋ねると、昨日の副会長との話をしてくれた。

「俺にあれだけ返してくる女は初めてだ。ぜってー惚れさせてやる」

 ふふっと笑って、話した時の表情とかを丁寧に教えてくれるけど。

 

 連歌。


 それ、お前の方が惚れちゃったんじゃないのか?

「惚れさせてやるっていう意気込みは素晴らしいけどな。連歌、明日から夏休みだぞ?」

「ん?」

「ん? じゃなくて。連絡先知ってるのか? 知らないなら二学期まで会えないと思う」

 ポカンとした顔をした後、いきなりそこにしゃがみ込んだ。

「ああああー。そうだった! どっちでもいいから聞いとけば良かった」

 メールアドレスも電話番号も教えてくれたとは思わないが。

 どちらにせよ、夏休みに会えないことが決定したようだ。

「ま、まだ棟内にいるかも、探してくる」

 時間的にお昼はとっくに過ぎている。

「いるとしたら学食か寮だと思う」

「よし、学食行ってくる」

「あ、でも生徒会は特別個室が…って…あーあ、人の話最後まで聞かないし」

 個室は奥にあるし、さっと見渡しただけだったら居ないと判断する可能性もある。

 俺は仕方なく連歌の後を追うことにした。

 学食は今日で最後だし、ついでにお昼ご飯を食べようと思ったからだ。

 連歌と一緒に食べると注目されてなんとなく居心地が悪いが、副会長を捜している連歌は学食に寄らないだろう。

 今日はゆっくり食べれそうだ。


「そうしよう」


 ひとり呟いて。俺は走るでもなく学食へと向かうのだった。



熱いのか冷たいのか分からない若尾連歌君の友人でした

最後まで名前が出ないという…(汗)

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