幼馴染
守らなくてはならないものだと思っていた。
それは生まれた時から決められたことで。
物心つくころには、もう側にいて。
一条芹は幼いころ体が弱く、いつも部屋から外を眺めている子供だった。
自分は更科の血のなのか、丈夫すぎるほど丈夫で風邪を引いた芹のそばに四六時中いても、一度も引いたことがない。
「健康優良児だね」
いつも芹が笑いながら言ったものだ。
ふわふわした茶色の髪に天使を思わせる顔。
ニコリと微笑めば泣いた子も笑うと言われた芹は、一条の家では異質だった。
どこもかしこも日本風で、和風の固まりである一条家にあって、いつも来ている浴衣は着せられた感があると言われる。
観光にきた外国人が着物を着ている感じだと。
芹の両親は、どちらも日本人だ。
どこからどうみても日本人なのだが。
母親の何代か前に違う国の血が入っていたらしい。
つまりは先祖返りなのだ。
体が弱いこともあって跡継ぎ候補からはかなり外れた位置に置かれていたのだった。
物心がついた頃。
更科家長男の第一子として生まれた自分は、祖父に呼ばれて二人の名前を聞かされた。
「一条芹様と一条蒼様。お前はどちらを選ぶ?」
芹の従兄弟にあたる蒼は、黒髪に黒い目の純和風な少年で親類縁者に評判が良い。
だが自分は即答で「芹」と答えた。
「ほぅ。芹様を選ぶか。何故だ?」
「目が…違う」
その当時のことを覚えていないのだが、祖父に聞いたところだと、自分はそう答えたと聞いた。
目。
なるほど、その当時の自分は子供ながらによく見ていたと関心する。
病床にあって。
その柔和な微笑みの奥。
鋭い光をたたえたその瞳に、自分は引きつけられていたのだと思う。
自分の様に健康優良児とまではいかないものの、泉都門学園中等部に入る頃には普通の生活が送れるようになっていた。
その頃にはもうその顔で沢山の生徒を魅了していたので、追いかけられることもしばしばあった。
「修斗、逃げるよ」
普通に生活ができるとはいえ、長時間は走れないので自分が抱えて走ることになる。
抱えて思う。
まだまだ軽い。