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「さてと」
俺が日陰でぼおっとしているとセンセイが掛け声をかけて立ち上がった。
その後を博士も追う。
何事かとその後姿を目で追っていると、それぞれ自分のバッグをごそごそとあさりだした。
──まだ出発するつもりはないらしい
センセイは井戸に近づいて、バッグから取り出した何かを操作した。
それはぽんとふくらみ、たらいになる。
ムゥロの食事同様、たらい(容器)も当時のサイズを持ち運ぶわけに行かず、現代のサイズが伸縮するものを各自いくつか持ってきていた。
「洗濯するぞ~!」と掛け声をかけながらたらいへと水をどばどばと注いでいく。
と、かなり大きなサイズに広げられたたらいへと服を着たまま足を入れてしまった。
「!」
俺がびっくりして息を飲んでいる間に、センセイはソープのボトル──多分そうだと思う──を取り出し、服の上へと垂らしわしわしわしと泡立て始めた。
センセイの奥で博士がたらいに足を突っ込むのが見えた。
「チビ、チビ。・・・おいカイン」
声をかけられ、俺はぼんやりと声の主──ハロルド──に目を向けた。
「お前、口開きっぱなし」
「あ・・」
言われて、いつの間にかあんぐりと開いてしまった口をのろのろと閉じる。
──それで、自然派のソープ
俺は自分でも少しずれていると気付きながら、思った。
それ以前に、昨夜風呂に入ることもなくテントに潜りこんだ時に『このままオアシスに着くまで俺風呂に入れないの?洗濯はどうするの?』と思った疑問が目の前で解き明かされたのだが・・・。
──確かに合理的だけど!
あまりのワイルドさに俺はただただぼんやりとその様子を見るばかりだった。




