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俺は慌ててハロルドを振り返る。心配して見上げた顔は、エルヴェの厳しいう言葉を受け強張っている。
「ハロルド」
名前を呼んで、右腕へと手をかけるとはっとした様に俺のことを見下ろしてくる。
俺にしてみれば、エルヴェを兄と勘違いしていたのが驚きだ。そんな風に思われるような言動をしていただろうか?
「なんで、エルヴェが兄さんだと思った訳?」
知りたくて聞いてみれば、「オアシスで通信すると言ってただろう。部屋に戻って誰と話したと聞いたら、兄と言ったじゃないか」と答えが返ってくる。
「ああ」
俺は脱力気味に答えた。
言われてみれば、オアシスに着く前そんな話をしていた。実際、俺もエルヴェと話すつもりで通信をつないだのだ。ただ、その時に不在でズィータが出た。だから、兄と・・・。
「あの」
「お前はカインの姓を知らないのか?」
説明しようと口を開いたのだが、途中からエルヴェがハロルドに声をかける。
「受け取った資料には、カイン・Rとしか記載がありませんでした」
首を振りながらハロルドが答える。
「ズィータ!」
エルヴェが声をあげた。
呼ばれたズィータは首をすくめながら答える。
「だって。皆、知り合いだし。カインは姓が出るの、嫌がるじゃん。正式な書類は僕がちゃんと処理してるから、ハロルドには姓を略したものを渡したんだ」
「カインだって先入観もたれたくないでしょ」ズィータは小さく付け足した。
「先入観?」
ハロルドがズィータへと聞き返す。
「そう」
ズィータが肯定するのをぼんやりと聞いていた俺は、ぐいとエルヴェに肩を掴まれた。
ハロルドの真正面に移動させられ、エルヴェは俺の真後ろに立った。
「カイン・レモンド。それがカインの名前だ」
「・・レモンド」
ハロルドは復唱しながらズィータの顔を見て、エルヴェへと視線を戻した。
「そう、ズィータの弟だ。レモンド家の三男。そして私はレモンド家の第3執事だ」
エルヴェがキッパリと言った。




