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目を細めてにんまりと笑っていたズィータが、ハタと気付いたように言う。
「そうだ、もう一台来るんだ」
「え?もう一台?」
「カイン」
それを聞いてハロルドがむっとした声をあげるのを背に、ズィータの手を引きセンセイの元へと走った。
「アーサー久しぶり~」
のんびりとセンセイに挨拶するズィータをせかし、博士から操作盤を借り受ける。幸いシップが3台止められるスペースはあるのだが、空中で停滞するのはエネルギーのロスにもなるので嫌がられるのだ。
「サイズは?」
「うちの船だよ」
「うちの船って。どのサイズの船」
サイズを聞いているのに曖昧な答えをするズィータに地団駄を踏みたくなる。
「うーんとあれより1回り小さいやつ」
ズィータが指差したのは、自分が乗ってきた小型船だ。俺は自分の家のシップのサイズを思い出す。
「あれより小さいってことは・・・80サイズかな」
「そうそう」
「型番言ってくれればもっと良いのに」
そう言いながら俺が操作盤に手を伸ばすと「僕がやるよ」とズィータがそれをとりあげた。
むっとしてズィータを見上げれば「カイン」とハロルドが声をかけてくる。その声がいやに硬くて俺は慌ててハロルドの側へと寄る。
「どうした?」
「ズィータと随分と親しそうだが。どういう関係だ?」
ハロルドは眉間に皺まで寄せて、声も幾分か低い。
──なんか怒ってる?
そんなことを思いながらも、怒られる覚えが俺には全くなかった。
それでも質問の答えにはちゃんと答えようと思う。
「どういう関係も何も、ズィータはふぐぁ」
「待て、待って~」
途中で口をふさがれる。もちろん、ふさいだのはズィータだ。
俺の目に映るハロルドの顔がさらに険しくなった。が、口をふさがれふがふがと間抜けな音にしかならない。
「まとめて説明するから。もう一台シップ来るまで待って」
「何でもう一台またなきゃいけないんだ」
「もう一台来るとさらに説明が必要になるから!」
後頭部の上辺りで喋るズィータの口調が軽すぎる。というか、もう完全に面白がっているとしか思えない。
ハロルドもそれを感じたのだろう。
「ズィータ・・・面白がってるだろう・・・」とため息をついて、険しい顔を緩めた。
「そりゃもう~」
ズィータはきゃっきゃと声をあげる。
──いい歳した大人が・・・
俺は心の中で思った。




