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荷物を降ろし終わった後はムゥロをスペースの隅、指示されたところまで移動させる。
なんとなく手持ち無沙汰で空を見上げれば、はじめは点くらいに見えたものがこちらに近づいてくる。手にした操作盤と照らし合わせ、それが自分達が手配した船だろうとあたりをつける。
そして、案の定その船は大きな腹をじーーっくりと見せつけた後、俺が指示したところへと停船した。続けて、その船の後ろを飛んでいて、その船が停船するまで見ることができなかった小型船も停まる。
小型船が止まるのを待っていたかのように、大型船のハッチ部分が開き荷物を抱えた人々が飛び出るように降りてくる。その中で一人の男が小型船へ駆け寄り、そちらのハッチから降りてきた人物に声をかける。挨拶をしていたのか、その二人はこちらへとずんずんと歩いてきた。
「先生方お久しぶりです」
そう言いながらセンセイと博士はそれぞれとがしっと握手をする。
「カイン、それかして」
センセイに言われ、操作盤を手渡せば四人はそれを覗き込みながら、話をしている。多分、設営場所の再確認だろう。
──それにしても・・・
俺は小さな小型船が気になった。
たった一人を連れてくるなら、大型船に一緒に来れば良いと思うのだが。途中で抜けるにしても、大型船に超小型船を積んでオアシスまで戻るという手もあるのに。
そんなことを思いながら、小型船の開いたままのハッチを俺はぼおぅっと見ていた。
と、人影が見える。
──なんだ、まだ人がいたんだ
そう思った次の瞬間、ハッチへと足をかけ降りはじめた人物を見て俺は叫んだ。
「ズィータ!?」
間違いなかったようで、ズィータはひらりひらりと手を振りながら「カイン」と声をかけてくる。
『うわ~~~~』
どうして?とか、なんで?とか思いながらも、俺はズィータに向かって走り出す。
砂に足がとられて進みにくかったが、俺なりに早く走ったほうだと思う。
そして「久しぶりっ」と言いながらズィータに抱きついた。
ズィータもハロルド同様、俺とは頭一つ分くらい大きい。
「元気になったみたいだね」
そう言いながらズィータが頭をわしわしとかき回す手をどかしながら、胸から顔を上げる。
と、ぐいっと背後にひかれた。
「うわっ!?」
倒れると思い思わず声が出るが、倒れることはなく俺の背中は何かにぶつかって止まった。あれ?と振り返ればハロルドだ。眉間に皺が寄っている。
「ハ、ハロルド?」
戸惑った声を出す俺をよそに「ご無沙汰してます」「順調だったみたいだね」なんて人の頭の上で二人は話を始めた。
「二人は知り合いな訳?」
会話の切れ目を狙って確認すればズィータは笑い声を上げた。
「カイン、僕の仕事はなんだっけ?」
「そりゃ、旅行会社の・・・」
そこまで言ってハタと気づく。ハロルドはガイドだ。そして今回の旅のプランはズィータの会社が立てている。
「前からの知り合い?」
「もう何度も仕事してるよ~」
ズィータは軽い口調で笑う。
「でも、心が狭いのは知らなかった」
ズィータはぽそりと付けたす。
「恋人が他のヤローに抱きついたら狭くなるだろ」
とハロルドは言い返すのに俺はいろんな意味で慌てた。




