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オアシスを出て十日目、目指す先にぽつんとだが砂漠の上に塊が見えてきた。井戸とは違う様子に、それが目指すラファニャーランらしいと俺は思った。
が、見えてからが長い。休憩し、テントに泊まりを繰り返し、少しずつ近くなっていく。
時に、俺達をシップが空から追い越していく。観光用のシップらしい。
「うわわ~~~」
俺はハロルドの背からかなり近づいた遺跡を覗き込んで声をあげた。
実は、俺自身この遺跡には何度か足を運んでいる。
が、それは全てシップで短時間でやってきていたもので、こんな一月以上かけてムゥロでの移動なんて初めてのことだ。感慨が違う。
空から見ると、大きな岩が二つVの字にどどーんと砂漠の中に見える。しかし、陸路となると大きな岩がどしんと構えているようにしか見えない。長い間、雨や砂漠の風で削られた岩肌に感嘆の声をあげてしまった。
「足、バタバタするなよ」
徐々に徐々にわずかだが近づく岩に興奮を隠せなかったようで、ハロルドに言われるまで自分が興奮のあまり足をじたばたと動かしていたのに気付かなかった。
「だって、だって、だって~」
「子どもか」
突っ込まれながらも、やはりウキウキする気持ちは隠せないのだ。
俺はもう一度岩肌を見上げた。
砂漠にそびえる岩。それが何の偶然か、Vの字になっている。その岩の大きさと言うのが半端ではない。一見山と見紛うほどの大きさなの一枚岩なのだ。大きさは左右で違うのだが、あまりにもできすぎた地形に岩をどこからか運んできてVの字に置いたのではないかという説が未だにあるくらいだ。だが、あまりの大きさにそれはありえないだろうと、自然の偶然の産物として今は考えられている。
そのV字の奥も奥、深部に俺達が目指す神殿があるのだ。
砂漠の中にそびえる大きな岩というのは、かなり目立っただろう。大きな日陰ができ、オアシスほどは多くはないが緑が茂るその場所は幾度か外部からの侵攻にあったと考えられている。それを岩の地形を最大限に活かし食い止めていたような跡がV字の内側にあたる内路に多々残されていた。
ただ、侵攻がこの遺跡から人が立ち去った理由ではないらしい。調査によれば、内路の入り口から見て左側の岩は地下内部分では水平をはしるような形状になり一部隣の岩を支える形になっていた。雨季の激しい雨の時は水はけがかなり悪く、内路から神殿は人の身の丈──当時は身長が今よりも20センチ近く低かった──を優に超えて水没することになった。雨季の度に内路にあった一般人の住居はもちろん、神殿内のものも度々流されたのがこの地から人々が去った理由と考えられている。
「午前には到着だ」
朝食を食べ終わり皆の支度が済んだ頃、ムゥロに荷物を乗せながらハロルドが言う。昨夕も言われてて承知はしていたが、いよいよ感が強くなる。
盛況という訳ではないが、日々一般の観光客も来るところだ。センセイ達は簡易調査の依頼を出し、調査専門者用のスペースの許可をもらっていた。到着したら、やることがてんこ盛りだ。昨夜確認した段取りを俺はムゥロの上で反芻していた。




