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「昨夜俺が言ったことは覚えているな」

その言葉に俺は昨晩のことを思い出して、かーっとなる。顔だけでなく全身が熱を持ったようだ。

「覚えているんだな」

「・・・・」

念を押すように言われても、恥ずかしくて返事すらしたくない。

赤くなった顔を少しでも見られたくなくて、顔を背けようとすれば「また噛むぞ」と言われ慌てて正面を向く。

「好きだ」

真剣な目で言われて、俺はぎゅっと体を硬くした。

掴まれたところから、いっぱいいっぱいの様子は伝わっているのだろう。

「何度も言ったよな」

だが、ハロルドは追及を緩めるつもりはないらしい。

わずかばかりの抵抗として俺はハロルドから視線をはずしてゆらゆらとさまよわせた。

「お前だって」

その言葉をさえぎるようにきっと俺は視線をハロルドの目へと向けた。

「・・・恋人がいるというのはどこで聞いたんだ」

ハロルドにもデリカシーはあるらしい、口にしようとしたこととは別の言葉を選んでくれた。

「・・・ロビーで揉めている時だ」

聞いたときのキュッとした気持ちを思い出しながら俺は小さな声で言った。

「ああ、あの時か」

言い合ってて、お前が抜け出したのがわからなかったんだなと付け足す。

一人で納得した様子でいるのを俺は面白くない気持ちで見上げていた。

ハロルドはその視線にハタと気付き、にんまりと笑う。なかなかの悪人面だ。

「昨日、あれだけ好きだと言ったわけだ。お前もそれに応えた。恋人ってのはお前のことだと思わなかったのか」

「え・・・」

思いがけない言葉に俺は唖然とした。

──自分がハロルドの恋人?

『今、ハロルドはなんて言ったっけ?』

言われた言葉を反芻し、さらにその言葉の意味も考える。

ハロルドの言うことはどこも変じゃなかった。

「え、えっと」

やっと自分の中で全てが繋がり、俺はわたわたと口を動かした。

腑に落ちた俺の様子にハロルドは「わかったか」と愉快そうだ。

その顔を見て俺はこくこくと頷く。

が、じわっと広がった喜びに水をさすかのように暗い考えが頭をよぎる。

それは口にするべきではないのだろう。それでも口にせずに入られなかった。

「で、でも。それってこの旅の間だけなんだろう。あんなふうに声かけられることも多いだろうし」

卑屈かもしれない。それでも、旅の間の遊びのような関係ならば本当の恋人とは言えないと思った。

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