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「アーサーに伝えてくる」

ハロルドに声をかけられ「センセイに?」と俺は聞き返した。

「昼、待ち合わせだろう」

「あ・・・」

言われてみればそんな予定だった。

「ついでになんか、食べるものも調達してくるわ」

おでこにキスを落として、ハロルドは部屋を出て行く。

照れくさくて俺は慌てて額をごしごしとこすった。


『いや、思い出すな、思い出すな』

しんとした部屋に一人。

俺は昨夜のことを思い出していた。思い出すなと思えば思うほど、しっかりと再生されてくるのが恨めしい。一気にすっ飛べと自分に念じているとポロリと『手馴れてたし』と思いがけない言葉が出てきた。

──そうだ

即、その言葉に俺は飛びついた。

本当に・・・手馴れていた。

「はぁぁぁ」

自分の中にどろりとしたものが広がって、堪らず俺はため息をついた。

大体が、今朝の様子だって・・。先程の手当てだって・・・クライアントが体調を崩すってことはあるのかもしれないけど。『話には聞いてたが、本当に熱出す奴いるんだな』なんて言ってた。誰かとそんな話をしてるんだってことだ。

大体が、旅の途中で自分でだって思ってたはず。ガイドの仕事をしていれば、出会いも多いだろう。

『自重してたのになぁ・・・』

そう、旅という特殊な状態だからって自分にあんなに言い聞かせてたのに。旅の期間だけの恋かもしれないのに。

『ダメダメダメ!』

どんどんと自分の考えが深みへとはまっていくのを、強引に戻そうとする。が、一度わいてしまった疑惑は次から次へとぷつぷつと小さな泡が経つように次から次へと出てくる。

俺は強引に体を起こした。動かずじっとしているのが悪い。

時々「いたっ」と声を上げ、そんなときはそ~っと体を動かして、俺は着替えを終えた。ハロルドの戻ってくる気配はない。

頭の中に浮かんだのは、昨日の果実酒の味だった。散歩にちょうど良いかもしれない。そう思って俺は部屋を後にした。

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