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冷たいものが額に当てられ、びっくっとして俺は目を覚ました。
それは目にも若干かかっていて、ぱちぱちと目をしばたたくとまつげが当たる。「悪い」と声が降ってきて、ずらされやっとまともになった視界にはハロルドが映った。
「なに?」これと額の上におかれた濡れた布を右手で軽く押さえながら聞く。
「微熱だ」
「熱?」
誰がと聞こうとして、我ながら間抜けな質問だと思い口をつぐむ。確かに額に乗せられた布はひやりとして気持ちがいい。──が、正直本当に微熱があるのかはわからない。一度目が覚めたときとなんら変わりがないように思える。『もしかして、あの時から熱があったのか?』なんて思うが、あの時はやはり痛みの記憶しかなくて俺は早々に思い出すのを諦めた。
微熱があるというのは本当らしい。額に乗せられた布のひんやりさを感じていると、目がくっつきそうになってくる。
「喉渇かないか」
声をかけられ、俺はぽやんと目を開けた。言われてみれば、喉が渇いたかもしれない。
「飲む」
「起きられるか?」
言われて、体をよじる。また痛みが走るが、朝ほどではない気がする。
自分だけでは埒が明かず、結局ハロルドの手を借りてベッドの上に起き上がった。──なんかすわり心地がとても悪い。
「ほら」
差し出された、ボトルを手にする。既にキャップがあけられていて、ほっとする。多分、あけようと力を入れても開けられないだろうし、第一体がぎしぎしとしそうだ。
「もう少し、寝てろ」
そう言われて、水を飲み終えた俺は大人しくハロルドの言うことを聞くことにした。
もう一度薄掛けの中にもぐりこもうとして、いつの間にか自分がローブを着ていることに気付いた。
『それ以前に・・・』
下着も身に着けているし・・・体だってさっぱりとしている。
『考えるな、考えるな』
自分に言い聞かせるが体は正直らしい。
「お前、顔赤いぞ?熱上がったか?」とハロルドに言われて、俺は「な、何でもないっ」とやけに上ずった声をあげてしまった。




