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『あ、よだれたれそう』

そんなことを思って、俺の意識は眠りからわずかだけ目覚めた。

少しだけ顔を上げ、右を向いていた顔を左へと向けるがちょっとだけおさまりが悪い。結局もう一度首を持ち上げ、右側を向いた。

『もう少し・・・』と寝なおそうと思ってふと気付く。右半身が何かに乗り上げている。

──なに?

「うっ」

次の瞬間、俺はパチッと目を開け体を起こそうとしたが、下半身のいくつかの場所が痛みを発し、うめいて再度突っ伏す。 目覚めから、十秒にも満たない短時間でこれは起こった。

「大丈夫か」

声がかけられ、いたわるように背中や腰の辺りを撫でられる。

──大丈夫じゃないから、うめいたんだ

心では思うが、さすがに口にできなくて俺は顔を枕へとさらに押し付けようとして、やっと自分の状態を把握した。

俺の頭は枕の上ではなく、ハロルドの肩口辺りにあった。ついでに乗り上げていると思ったのはハロルドの身体の上だった。

一気に体中が沸騰したかのようになる。

今までだって抱え込まれるように寝ていたことはある。・・・がそれは肌寒さを感じさせないためのもので、こんな風に腕枕をされた上に身体の上に乗り上げていたなんてことは一度もなかった。

「つぅ」

恥ずかしさに耐えかねて腕から抜け出そうと体を動かせば、また痛みが走る。

「無理するなって」

すごい近くで声がするのも恥ずかしすぎる。

俺は痛みを堪えながらせめて寝返りだけでもと体を動かすことにした。

「~~~っ」

「ほらみろ」

「うつぶせだと苦しんだよっ」

ハロルドの言葉に俺は噛み付くように言った。乗り上げていない左側も長時間この体勢だったのだろうきしきしとしているし、乗り上げた右側はいろんな意味で苦しい。

「しょうがないな」

ハロルドが俺の頭をそっと持ち上げ腕を抜く。がばりと起き上がったる姿を視界に捉えて俺は慌てて目を瞑った。

「どの向きが良いんだ?」と言われてもとっさに答えられない。

結局「これ?それともこう?」と体の向きを変えられ、ハロルドに背中を向ける位置に落ち着く。ほっとして目を開けたら、自分が使うはずのベッドが飛び込んできた。

「──っ、ちょっと」

ハロルドが強引に腕をベッドと首の隙間に押し込んでくるのに抗議の声をあげるが、この体では暴れることもできない。背中にハロルドの胸が当たる。

「もう少し寝ろよ」

枕にした手で俺の髪の毛をわしゃわしゃとかき混ぜ、もう片方の手でぎゅっと腰を抱え込みながらハロルドが言う。

現金なもので背中が温まってきたら眠さがぶり返してきた。そもそも寝返りをうったら寝なおすつもりだったのだ。

くっつきそうになる目でもう一度乱れたベッドを見る。

『──俺って流れやすかったんだ・・・』

スティールに言われてからずっと冷めていた。スティールは『興味本位で妊娠をさせたら』なんていってたけど、もしかしたら俺の流されやすさにも気付いていたんじゃないかとすら思えてくる。

スティールの強面の顔を思い出しながら、俺はもう一度眠りについた。

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