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明日はコース料理だというから、今日は各自好きなものを選ぼうということになり各自がメニューに目を通していた。
ちらりとブースの切れ間をのぞくが、ハロルドはやってくる様子がない。
「カイン、お前連絡してないだろう」
センセイがメニューから目を離さないまま言うのに、俺はびくっと肩を揺らした。
オアシスに到着したら連絡するといっていたのに、すっかり忘れていた。
「南門に行ってました」
言い訳はせずに、とりあえず事実だけを伝えれば「泣きそうだったぞ」とぽそりと言われた。
──エルヴェが泣くなんて想像できない
俺の心の内を読んだかのように、バートがふきだした。
「あの人は泣くような人じゃないでしょ~。明日には押しかけてきそう」
「確かに」バートの発言を受けてルパートが頷く。
そんな風に思われているエルヴェに同情しつつ、我ながらそちらの方がらしいと思ってしまうのはしょうがない。
「おまえらなぁ・・・」
センセイがため息をつく。
「俺がどんなに止めたかわかってないだろう」
「止めたんだ」
バートがさっくりと言うのにセンセイは肩を落とす。
「“俺がついてるんだから信用できないのか~”とかなぁ~」
博士がニヤニヤと笑うのに「少しは味方しろっ」とセンセイが厳しい視線を飛ばす。
エルヴェとセンセイは親戚同士だ。センセイが従兄にあたる。そのせいか昔からお互い遠慮がない。
旅の話が出た当初は、同行すると言って聞かなかったエルヴェをセンセイと二人で説き伏せたのは、苦労話として双研究室の面々には知られている。
「それが、明日の夕飯だ」
「え?」
俺は話しがどうつながるのかわからず、聞き返した。
「代わりに予約しておくから夕飯をそこで食べろと」俺、コース料理とか苦手なの、あいつ知っているくせにとセンセイがぼそぼそと付け足す。
「美容コースらしいぞ」
「はぁ!?」
やり取りを聞いていた博士が付け足すのに、三人して聞き返す。
「砂漠の強い陽射しを浴びて、日焼け、髪や肌の乾燥がひどいだろうからって」
「・・・・・」
男六人に美容コース。嫌がらせにしか思えない。
俺は盛大なため息をついた。
「連絡しておけよ」
センセイの言葉に力なく頷いた。




