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「水分補給しておけ」

一時間もした頃だろうか、前のハロルドから声がかかった。

ぼうっと遠くに見える砂漠に点々と生える細々とした草を見ていた俺は、言われて慌てて腰にぶら下げているはずの水筒を探る。

「塩分補給も忘れるなよ」

「わかった」

水筒の飲み口に口をつけながら答える。

「お前、チビなんだからマメにとっとかないとぶっ倒れるぞ」

「わかってる~!」

俺はムゥロにぶつからない程度に足をばたばたとさせて抗議の声を上げた。

迷惑かけられないのは重々承知しているんだ。

水筒をしまい、クスカスの裏ポケットにしまってある──裏ポケットがあるのを知らず今朝ハロルドから教えてもらったばかりだ罫線─ハロルドからもらった岩塩を取りだしこそっとかじった。

水を飲んで塩分補給をしたからって訳ではないだろうが、なんか体まで緩んでくる気がする。

ムゥロの歩みは上下がたいしてない。

小さくて緩やかな揺れを感じているうちに俺はまたぼうっとしてきた。


-----


出発の一時間ほど前には集合場所に着いていた。

──どんだけ気合が入っているんだ、俺

自分に突っ込みつつ、きょろきょろとしていると知った顔を見つける。

「センセイ!」

そばにはアルベール博士もいる。

「お」という顔をする二人にぶんぶんと手を振り駆け寄る。

「早かったな」

「遠足じゃないんだぞ、はしゃぐな」

「はしゃいでませんって」

博士が俺の頭を撫でながら言ってくるのに、パタパタと手を振ってその手をどかしながら言う。

センセイは俺の上司で、博士はセンセイの同僚だ。

二人とも大学の教授で考古学の専門家として結構著名らしい(失礼か?)

今回は遺跡の調査に行くという二人に、助手の俺も同行することになっている。

「アーサー」

「ああ、こっちだ」

センセイが声をかけられ、手を振っている。

センセイの視線の先をたどれば、金髪のがっしりとした男がこちらに足を向けている。

「カイン、こちらがハロルド。今回のガイドだ」

やってきた男をセンセイが紹介した。

「よろしくお願いします」

そばにやってきた男は想像以上に背が高くて完全に見上げる形だ。

ハロルドは俺がおずおずと差し出した手をちらりと見て、先生に聞いた。

「見送りじゃないんですか?」

「はぁぁ?」

握手に答えてもらえなかった上に、ひどい質問に俺は声を上げた。

「俺の助手だよ」

センセイがにやりと笑ってハロルドに答える。

ハロルドの視線がまた俺に戻ってきた。

「・・・チビだな」

俺の顔をまじまじと見た後に、ボソッと言う。

「ちびって言うな」

気にしているのに。

兄達はすくすくと育って目の前の男近くの身長なのだが、俺だけは昔から伸び悩んでいた。

それでも人並みなのだ。

「ああ、性格まで小さいのか」

「なっ!」

言い返した俺にハロルドはさらに言い募ってくる。

「お前くらいちびっこいと、かっさらうのも簡単だぞ」

「さらわれるはずないだろう!第一、成人している!」

子ども扱いされて俺はぶすくれた。

「へぇ・・・成人しているんだ。そこが子どもっぽいんだよ」

俺の膨れた頬をハロルドがつつくのに「いい加減にしろ~!」と俺は声を上げた。

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