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見比べて詳細をスケッチして、見比べて詳細をスケッチするのを繰り返す。壁と表現しているが、長く続いているものではなく5メートルくらいの長さだ。高さも腰より少しくらいで一部が崩落している。低めなのは増えた砂に埋もれているからなのだが、不思議と埋もれた部分には図柄がない。まるで埋もれるのが前提で最初から壁の天辺に近い部分に彫ったとしか思えない。そのくらい天辺から2段、一部は3段になって掘り込まれていた。
「・・・はぁ」
俺は立ち上がり、大きく溜息をついた。グーッと伸びて背中から首へかけてのぎしぎしをとろうと首と腕を回し、振り返り、声が出た。
「えっ?」
気付かないうちに日除けがあった。二本のポールが立てられ、その間に布が張られている。俺達が洗濯物を干すときの要領だ。もちろん、ハロルドの仕業だった。途中、ハロルドに声をかけられ一度水分補給はしていたのだが、こんなことやっていたのには全く気付かなかった。
「いつの間に・・」
「すげー集中力だったな」
どうも俺はハロルドがこことホテルを往復した間も気付かなかったらしい。
「わ、悪い」
思わず謝ってしまう。
「いや。体調崩されても困るしな」
──うわ~
仕事柄で細かいところまで気付くのだろう。ハロルドが言うように、体調をを起こしても皆に迷惑がかかるだけだ。それでも、こんな風にしてもらえると俺だけ限定の好意と勘違いしそうだ。だが、お礼だけは言った方がいいだろう。
「あ、ありがとう」
俺は照れくささを感じながらも、素直に礼を言った。
帰りの道すがら、行きに声をかけられた店で酒を買う。地域の果実を使った酒でフルーティで口当たりがいい。喉が渇いていて、くいくいと飲み干して「もう一杯!」とオヤジに声をかけた。
「良い飲みっぷりだが、そんなに一気に飲むと酔うぞ」そんなことを言いながら、オヤジがずいとジョッキを差し出してくる。ここはテーブル席とかそんなものはなくて、通りに面して椅子が並んで、その間に小さなテーブルがところどころ置いてあるだけだ。ハロルドと俺はその小さなテーブルを挟んで並んで椅子に座っていた。
「本当、お前、体が小さいんだから一気に回りそう」
「へへ、大丈夫~」
「既に語尾が甘くなってるぞ」
「酔ってるんじゃなくて、これは機嫌が良いだけ~。うまい酒、最高~♪」
また俺は酒をごくりと飲んだ。




