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俺は腕を組んで陽射しを背に埋もれている南門の残骸を眺めた。便宜上、門と呼ばれているが実は城壁と言ったら立派過ぎて、区切りの壁というのが正しいかもしれない。
目の前にあるのはレプリカではなく、本物だ。本来ならばそっくりそのまま作ったレプリカを置きたかったのだが、オアシスに古くから住む住民の反対にあってバリア素材でガードされ置かれている。動かすと呪いが起こるとか、残念ながらそんな呪詛めいたものではない。あくまでもその地に住む人たちとの交渉結果だ。──ちなみに以前は同意など関係なく博物館へと強制収用されていた。
古い時代から少し前まで雨季の豪雨と、砂漠の砂嵐にかなり浸食されてしまっているため、表面に彫られた図柄は立ち位置を変えいろいろな方向からみないと確認できない。
俺は壁の前へと近寄って行った。
正午を回っていはいたが、日が落ちるまでにまだまだ時間がある。かがみこんで、バッグの中から資料を取り出す。広げたページに載っている画像と見比べながら一番初めに描かれているであろ図柄を確認する。
南門仮称されるだけあり、門を見るためには背を南へと向けることになる。じりじりと背中に陽が当たる感じがする。
──日除け持って来ればよかったな
温室育ちと言われるだけあり、やはりこういうところの詰めが俺は甘いと思う。
──せめて、まめに水分補給しないと
そう思ったとき、背中のじりじり感が和らいだ気がした。思わず振り返ると、ハロルドが立っていた。
──う~わ~
こういうさりげなさがすごいというか、照れるというか・・・。
まぶしさに目を細めながら「先に帰ってて良いよ」と我ながらかわいげのないことを口にする。
「待ってる」
「・・・・」
キッパリとした答えに、俺は目をそらした。
「さらわれるぞ」
「・・・今時ありえないだろ」
「そうだな」
ハロルドがくっくと笑うのを俺は背中越しに聞いた。
それからは俺は黙々と、持ってきた資料とその図柄の相違がないか確認していった。しっかりとした写真画像もあるのだが、こういうものは手描きのものと実物を比較することで、気づくこともあるのだ。──実はこれはセンセイの受け売りだけど。実物を見るのと資料を見るのでは迫るものがやはり違う・・・・気する。




