43
ベッドの足元からバッグを取り上げる。調査用の用具はしっかりまとめてあるからその袋を取り出せば良いだけだった。
念の為、バッグの中をさらって足らないものは無いのを確認し、最後にナビを取り出す。手のひらに納まるくらいの円い機械だ。本体同様に画面部分も円い。
脇の小さなボタンを押し、画面に人差し指を乗せると使用者が認識されて起動される仕組みだ。出発前にこのオアシスの現在の地図とその上に過去の地図を重ね合わせ、南門の場所は登録済みだ。これで南門へ簡単に誘導してくれる。もっとも、現在のオアシスはしっかりと整備されていて、西と南北に大通りが走っていた。その大通りを南へと下り小さな横道へと折れればすぐ到着するようになってはいる。そういう点では、過去と現在の差を確認する為というニュアンスのが大きいのだが。
ナビを手首へとセットして、ベッドの上に脱ぎ散らかしていた靴下をとりあげる。ふと視線にを感じて、ハロルドへと顔を向けた。
なんか渋い顔だ。
──ああ。もしかしたら
ガイドによってはこのナビを嫌うものがいると聞いている。
ぶんぶんと腕を振り回し「これ、嫌い?」と聞けば「嫌いとかじゃないがな。俺に聞けば良いだろう」と返事が返ってくる。
やはり、面白くはないらしい。俺は笑いたくなるのを押さえながらいう(笑ったら笑ったでなんか大変そうだ)、
「観光ポイントじゃないよ?南門の外にある遺跡が見たいだけだから。地図だってほら」
ナビの画面を操作して、立体表示をさせる。あくまでも調査が目的なのであって、観光情報が載っていないシンプルな地図と一番信用性が高いだろうと言われている太古の予想地図だ。だいたい、観光地図になると色とりどりになりすぎてうるさすぎるのもいただけない。
ハロルドは表示された地図を見て「ああ」と返事をする。
「俺もこの地図を参考にしている。俺でよかったら案内するぞ」
古い地図を指差しながら言うのに「うわ、本当に?さすがだな」と俺は声をあげた。そこまで頭に入れているとはすごい。
「じゃ、頼む」
俺はとっととナビを終了し、腕からはずして枕横へと放り投げた。
ハロルドと連れ立って外へと出る。さっきはついていくのがいっぱいいっぱいで気付かなかったが、ホテルは大通りに面していた。ちょっと進むと同じような大通りと交差する。南へ向かっているはずだから、ホテルがあった場所は西側の北寄りにあったのかと俺は背を追いながら思う。
と、ハタと気づいた。
──俺、背中を追いかけてばかりじゃん!
もちろん案内をしてもらう身なのだけど、ちょっとだけ面白くない。俺は足を速めてハロルドの隣へと並ぶ。隣でハロルドが笑いを漏らした。
──うぅん、これはこれで面白くないぞ!




