42
もう二十日近く行動を共にしていたから、ずっとこのままと勘違いをしていた。
オアシスを出れば遺跡までは十日間位と聞いている。目的の遺跡に到着したら・・・。もう既に調査は終了している遺跡だから本格的な調査をすることはないが、それでも俺達は一週間程度は遺跡の中や周辺で過ごす予定になっている。帰りは陸路ではなく、空路でシップが迎えに来るのだ。
──最後までつきあう・・・はずないよな
俺はこっそりと息を逃した。ため息なんてつきたくない。
階段を下りた先から湖にかけて、ぽつぽつではあるが少しずつ密度を濃くしながら草が生えている。俺の目にそれがぼんやりと映った。
足を進めると「ここは遊泳禁止だぞ」と声がかかる。
「わかった」
そう言いながら、水際ギリギリまで足を運ぶ。雨季が終わり随分とたった水は汚れもすべて沈んでしまったのだろう。足元の水はとても澄んでいる。湖の真ん中辺りはきれいな緑色をしている。オアシスを支える水なのだと思うと、胸の辺りが熱くなる気がした。
ハロルドが話してくれた、記録者を思う。
──必ずもう一度来よう
そう、心に決め、振り向いた。
「水に入りたかったら、プールがある。貴重な水だから守らないと厳罰が」
視線があったハロルドがさらに言う。
的外れの言葉に俺は少しだけ口元を緩めた。と、ハロルドが言った言葉を頭の中で反芻する。
「プール?」
「ああ、湖はダメだが、プールなら。このホテルにある」
ハロルドが目をそらしながら教えてくれた。
「ふーん・・・」
俺はこれからの予定を考えた。
「夜もやっているよね?」
「いや、夜はやってない。日没三十分前までだぞ」
「ええ~っ?」
「・・・ここではライトをつけてまでプールはやらないんだ」
「そう」
言われてみれば、オアシスの中のプールを煌々とした光で照らしてまで水遊びするのは不自然かもしれない。そんなのは街に行けばいくらでもできるのだから。
──今夜は風呂にして、プールは明日だな
そう決めて俺は「じゃ、出かける準備をするか」と言って階段へと足を向ける。
「出かける?プールじゃなくて?」
「うん、南門まで行きたいんだ」
ハロルドが確認するのに振り返ることもせず、淡々と階段を上った。




