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間抜けな返事で、俺が全くわかっていないことを知ったのだろう。

「この線はだな」とハロルドは丁寧に教えてくれた。

この地域に長い雨季があるのは俺も知っていた。三ヵ月近い雨季の間に、この湖は周りからの流れ込みもあり、かなりの水がたまる。今季にたまったピークがハロルドの示した位置だということだった。

俺は、対岸へと目を向けた。対岸は小さな家々が並んでいる。個人の住宅らしい。そのどれもがホテルのこの部屋のように、かなり高いしっかりとした柱の上に立っている。昔風に言えば、高床式の住宅だ。これも生活の知恵といったところなのだろう。

「あれ?でも溢れない訳?」

俺は湖がいっぱいになって、先程までいたテラスも水がかぶり浸水することはないのか気になった。

「・・・そうだな、昔はそういったこともあったらしい」

「昔は?」

「湖の斜面途中に大きな貯水タンクが埋められているんだ」

「えっ?へぇぇぇ」

きょろきょろと近くや遠くの湖が干上がった部分の砂面を見るが、これ!と言って変わったようには見えないが、それも今の技術があるからならではかもしれない。

「今季も振りが良くて、タンクへと貯水したと聞いている」

「それって、ちゃんとした基準があるんだろう?」

「ああ」

また詳しく教えてくれた。

今までのデータから、基準点が設けられ、それを越えた段階で貯水タンクへと水が貯められるらしい。それでも、データの予測を超えることはないのかと俺は疑問に思った。

「三〇〇年近い精密なデータがあるからな」

「三〇〇年!?」

俺はびっくりして声をあげた。

「ざっくりとしたものじゃないくて?」

「ああ、精密な、だ」

この辺りがきちんと整備されたのは二〇〇年も経っていないはずだ。それなのに、それ以前からデータがあるというのは疑問だった。

「この湖はとても重要なものだ。わかるな?」

さすがにそれは俺も承知していて無言で頷く。砂漠の民にとって水は大変貴重なものだ。

しかもこのオアシスは古代から現在まで廃れることなく存在している。それはこの湖があって可能なことなのだ。

「親子五世代にわたって、ずっと観測している観測者がいるんだ」

「・・ふわぁぁ」

途方もないことを聞いて俺は変な声をついあげてしまった。

「実際にはもっと前から代々観測していたらしいが、観測点が現在と違うんだ。それに記録の仕方も違うから」

「・・・・」

言葉にもならない。それだけ大切な湖・・・。俺は湖を見てから、ハロルドの顔を見上げた。

「それって見ることできるのか?」

「データとしては見ることができるが、そのもの自体は個人所蔵になっている」

「個人所蔵?」

「ああ、かなりの量の紙の束、ノートだからな。データとして吸い上げた後はすべて返却されたらしい」

俺は勝手だが、積みあがったノートや紙の束をイメージした。そして、日々、刻々とデータをとり続ける。その人に一度会ってみたい。

「・・・会うことはできる?」とハロルドに聞いてみれば。

「そうだな・・・。ただ、今回は日数的に無理だろ。会いたかったら、改めてだ」

「そっか。頼む。調整してくれるか?」

真剣な目を向ける。

「わかった。ただ、俺も半年先くらいは予約が入ってる。連絡先を教えるから連絡よこせ」

その返事に、はっと『そう言えば、ガイドだったんだ・・・』と改めて俺は思った。

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