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俺も一番気に入りの菓子を箱から取り出し、カップの前へと座った。缶は開けたままにしておけばもう一つくらいずつつまむだろう。
手にした菓子を目ざとくチェックしたセンセイが「小さい頃からそれ好きだよな」しみじみと言う。
「小さい頃?」
ハロルドがその言葉を確認するように聞き返す。
「ああ、オムツも外れない頃か」
「そんな小さい時から知り合いじゃありません」
センセイが大げさに言うのをさえぎる。
「じゃ、ケツの青い頃だ」
「見たことないくせに。あの頃はもう青くなかったかもしれないし」
再度訂正をするが、
「いや、実際に見たことはないが十歳前だ、確実に青かっただろうな」
「博士っ」
博士が参戦してきた。
「ひゃー、そんな前?」
バートが変な声をあげる。
「付き合いが長いとは聞いてたけど、そんなに長いとは」しみじみとルパートも言う。
「こいつな、俺達のところにおいておくと静かだからって」
「用事のあるときには結構預けられたよな。時々その菓子もってさ」
二人が顔を見合わせて頷く。
──そんな理由があったなんて知らなかった!
エルヴェに連れられて遊びに行く空間はちょっと古びたにおいがしていた。
そこに置かれた本やいろんなものを見ていると飽きなくて、「大人しく待てるよな?」の言葉に頷いた後、気がつけば「迎えが来たぞ」の声だったことも多々あった。
「ま~、お前が考古学へ進んだときは責任感じてたけどな、あいつ」
「え・・・」
俺は博士の顔を見上げた。
──そんなこと気にしなくてもいいのに。
「親父さんや兄貴達の役に立つようなものじゃないしなぁ」
センセイが伸びをしながら言う。
「あ・・・」
──エルヴェがそんなことを考えていたなんて気付かなかった。でも!
「役に立たなくても、俺は好きだし。夢中になれるものが一番だと思う」
「青いなぁ~。でも、やっぱり大きくなったなぁ~」
ぐりぐりとセンセイが俺の髪の毛をかき混ぜる。
「そうだな。好きなら好きそれでいいんだ。理屈じゃないよな」
隣でにやりと博士が笑った。




