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「う」

ハロルドが声をあげた。

『起こしてしまったか?』と申し訳なく思うものの、反面『起きてくれればこれで解放される』と思ったのも事実だ。

が、ハロルドははっきりと目を覚ますほどではなかったらしい。

また俺の背を叩きながら「もう少し寝ておけ」と言ったと思ったら、また眠りについてしまったようだ。

『勝手にか抱え込んだくせに、なぜ俺がなだめられなきゃいけないんだ。第一手馴れてるだろう!』

勢いでそこまで思った途端、胸の辺りがひゅっと冷めた。

本当に慣れた感じがする。

ハロルドの歳を考えれば、そういう機会だってあっただろう。だいたいがガイドなんて職業だ。出会いもかなり多いはずだ。

恋とか愛とか関係なく、今までだってこんなことがあれば誰かを抱えて眠ったことだってあったかもしれない。

考えれば考えるほど、冷えてくる感じだ。体の冷えではなくて、心が・・・。

『そもそも、こんなことでうろたえる自分がおかしい』

俺はその冷えた気持ちを振り払うように思った。

第二次性徴を迎えた頃、それに気付いたスティールに言われたのだ。

「興味本位で女性に手を出して妊娠でもさせたらたまりません。興味だけなら娼婦を呼んでさし上げますから遠慮なく仰ってください」と。

『あの言葉には頭がさーっと冷えたな・・・』

今思えば、ちょうど自由奔放な次兄の大恋愛で家の中が浮き足立っていたのだ。

これ以上の厄介ごとは困るという、スティールなりに釘をさすつもりだったのだと思う。──実際に恋愛ごとに疎くなってしまった俺に責任を感じて、謝罪をしてきたほどだ。

だが、当時の俺は大人の世界の裏側を見てしまったようで、許せなかったのだ。以来、恋愛ごととは距離をとっている。そして、その距離を帰るような出会いがなかったのも大きい。

『あーあ』

俺は内心でため息をついた。こんなことになるなら、お膳立てしてもらって遊び呆ければよかったのだ。

背中に回された手をはぐようにして持ち上げる。眠っている人の手がこんなに重いとは。

「う゛」ハロルドが声をあげたが、今度は気にせずぺしっと自分の体から落とす。

寝返りをうって、ずっと横を向いていた体を仰向けにすると張っていた背中が緩むのを感じた。

『──こんなところでハロルド相手にどぎまぎすることなんてなかったのに』

そう思って、今度こそため息をついた。

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