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昼食を済ませて──ちゃんとズボンをはいてすぐ手伝った──出発することになる。
「・・・・・」
俺はハロルドを見上げていた。
一緒に乗るのが嫌なのではない、その場所が問題だ。
「何で前なわけ?」
「・・・お前が前でも前が見えるだろ」
ハロルドが少しだけ間をあけてから言う。
──それ、本当の理由と違うだろう~
俺はじっとハロルドの目を見るが、反らされることはない。
──言う気はないってことか
俺はため息をついて、差し出された手に自分の手を重ねた。
ムゥロが歩き始める。
心配していた日焼け部分は香油のおかげか、ムゥロのかすかに動く背の皮膚とズボンの生地がすれても痛みを感じることはなかった。
少しだけ身構えていた俺は、ほっと息を吐いた。
「ほら、やっぱり充分見える」
俺の後ろでぼそりとハロルドが言った。
小さな声で「お前のつむじもしっかり」と付け足すのも、これだけ近くにいれば聞こえる。
「それだけチビって言いたいわけ?」
俺はむくれた。
俺とハロルドでは頭半分くらい・・・15~17センチほど背が違うのだ。
「いやいや、そうでは」
言葉では否定しているが、発せられる言葉の雰囲気ではからかっているとしか思えない。
「だいたいね。俺は脚が長いの!」
「へ?」
間の抜けた声が後ろでする。
──なんて失礼なっ
「ああ、まぁ・・・ふぅん・・・」
「何だよ」
「いや、いい表現だなぁと。そうだよなぁ、足が長ければ座高が低いってことで、前にお前がいても見晴らしが良いままだってことだよな」
「っ。っ!」
──からかっている、からかってる、絶対からかってる!
──そりゃ、そう意味で確かに言ったけど!
一本とった気でいた俺は、まんまとやり込められてふるふると肩を震わせた。




