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さすがにそろそろズボンをはこうという気になって、放り出したままだったズボンへと手を伸ばす。と、伸びた脚の皮膚がぴりりとした。
「あっ」とっさに声が漏れる。
「どうした?」
ハロルドの声に俺は苦笑いしながら首をふってごまかした。
──エルヴェに香油を塗るよう言われてたんだ
乾燥が激しいからシャワーや風呂に入った時には、全身くまなく塗るようにと持たされたのだ。
「髪にも使えるから」と言っていたのも思い出す。
──確か、日焼けにも良い成分が入っているはず
俺はそろそろと移動して、荷物の中をごそごそとあさった。
それは記憶通りのところに収まっていて、金属製の蓋が温まってもわんとしているのが指先に伝わってくる。それを、ひょいと抜き出した。
「何それ」
バートが目ざとく聞いてくる。
「香油。ちゃんと当時の成分」
「はいはい、わかったから」
説明する俺をさえぎって、バートは手を伸ばしてきた。見せろということらしい。俺はそのまま渡す。
まじまじと見ながら「で?持たされたわけ」と確認される。
「ああ、乾燥するからって」
「らしい、らしい。さっすが」
バートは一人で勝手に納得して、腹を抱えて笑い出した。
「・・・恋人か」
はしゃぐバートに顔をしかめながらハロルドが聞いてくる。
「違う」
「そんなはずないじゃん」
キッパリと否定した俺の言葉にかぶせるようにバートが言う。
「「付き合ってください」って言われて、「買い物へ?」って聞いた男だよ」
俺は俺に片手で瓶を返しながら、もう片方の手ではバシバシと俺の背を叩く。
が、その発言に『あれ』と思った。
「いや、実際には「食事へ?」って聞いて、本当に食事だったんだが」
「えっ!?」
「え?」
バートのびっくりした声に、こちらも思わず聞き返してしまう。
「俺、ちゃんと見たぜ「買い物へ」ってやつ」
「いや、この間は「食事へ」だった」
「この間?」
「・・・いつのことを言ってるんだ?」
「俺もお前も学生の頃だよ。・・・おい、食事はいつ?この間って?」
にじり寄られて、思わず体を反らせる。
「・・・三ヶ月くらい前」
諦めて言えば「ええええーーーっ」とバートとともにルパートが叫んだ。




