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「疲れたー」

俺はよろよろと日よけの下に敷かれているシートへと足を進める。

座った途端、力が抜けてふにゃふにゃとシートの上へとうつぶせに倒れこんだ。

「ズボンはけよ」

声をかけながらそばにいたルパートがぴしりとふとものの裏側を叩く。

「少しだけ、少しだけ休ませて~」

情けないと思うのだが、慣れない洗濯に俺は心底ヨレヨレだった。

腕の上に顔を乗せむずがっている俺の耳に「ここで昼もとってしまいますか」と提案するハロルドの声が聞こえる。

──ああ、迷惑かけてる

気付いて「センセイ、大丈夫です」とガバリと顔を起こすが、ここで昼は決定された後。

「すみません」と謝る俺に博士が指し示すのは、洗濯物でできた影の下や飛ばした水の上で涼むムゥロの姿だ。

多少なりとも自分が役に立ったのか・・・と思って俺は言葉に甘えることにした。


「髪、乾かせ」

ハロルドに声をかけられる。

いわれて髪の中へと指をもぐらせる。確かにまだかなり湿っているが、正直面倒くさい。

「洗濯物干している間にほとんど乾いた~」

放っておけばそのうち乾くだろうと思い適当な返事をする。

が、ハロルドの目は許してくれないようだ。

「・・・なぁ、頭だけ出しておいたら乾くかなぁ」

日よけから頭だけ出している自分を想像すると笑えるが。

「ものぐさ!」

聞いたバートがキッパリと言う。

確かに、ものぐさなのだが、いずれ乾くのだ。

「チビ、こい」ため息混じりにハロルドが言う。

さすがに来いとまで言われ、俺はもそもそと起き上がりハロルドのそばへと行く。

と、ぱさりと頭の上に、タオルがかけられた。もう少し水分をとれということらしい。

せっかくなのでタオルは使わせてもらうことにするが、もともと放っておけば乾くしと、もそもそと手を動かす。

「貸せ」と声がしたと思ったら、タオルをハロルドに取り上げられた。

そして反論する間もなくそのタオルで髪の毛をごしごしとされる。

「あーー。ありがと」

バートとルパートがそばで失笑しているようだが、自分で乾かさずに済んでいるだけ楽。気にしないことにした。

「こんなもんだろう」と言ってハロルドの手が止まったのは意外と早かった。

「え、もう?」と思わず言ってしまう。

「なんだ、まだやって欲しいのか」

聞かれて、ふるふると頭を振る。第一、甘えているようじゃないか。

「そうじゃなくて・・・早かったから」そう言って気付く。

「ああ、髪切ったからだ」

「長かったのかお前」

「うん、センセイくらいあった」

俺は先生の後姿を指差して言う。先生はまだ上半身裸で、肩甲骨の下辺りに一つにまとめられた髪の先がある。

「あ~アーサー研はみんな長いかも。なんでかな」

ルパートが今気付いたと聞いてくる。

「なんか髪を切りにいくタイミングを逃しちゃうんだよなぁ。縛っちゃえば楽だし」

「行く気がないんだろ」

今度はバートだ。

「ああ・・・楽だから?・・・そういえば、バートと朝会った時と、夕方会った時で髪の毛の長さが違ってびっくりしたなぁ」

と答えれば「時間の使い方が下手なんだ」と言われた。

聞けば、二人は昼休みとか、仕事の区切りとかちょっとした空き時間にさっと行ってくるらしい。

俺はついつい「まとまった時間が取れないから」と言って行こうともしなかった。

エルヴェはそんな俺に「昼休みでもいいから時間をとれ」と言ってた。

──それってこういうことだったのか

やっと今になって気付く。

今回「髪を切ったほうが楽かも」と言った時、エルヴェが泣きそうな勢いで喜んでいた。実際、嬉々として髪型を美容師に指示していたのを思い出す。

「そういえば博士も短いよなぁ」

博士の伸びかけの髪なんて一度も見たことがない。いつもこざっぱりとしている。

「・・・トップに似るのかな?」

思わず三人して顔を見合わせた。

「失礼だぞ、お前ら」

センセイが──聞いていたのか──納得いかないといった風に言ってくるが、

「いや、確かにお前は時間の使い方が下手だよ」

博士が間髪入れずにセンセイにきっぱりと言った。

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