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「なーーんだ」
「こらっ」
気の抜けた俺の言葉に、バートが俺の脇を肘でつついた。自重しろということらしい。
「胸毛が見たかったのか?」
真剣な顔でハロルドが俺を見下ろす。なんか、若干哀れみも含まれているようで、少し腹立たしい。
「見たいわけじゃないけどっ。ハロルドくらいがっしりしてたらそうなのか?と思っただけだ」
「・・・ああ、お前だとなぁ・・・」
今度の視線は若干どころじゃなく、すべてが哀れみというか・・・気の毒そうな視線だ。
「悪かったな、貧相な体でっ」
食べても鍛えても、筋肉がつきにくい体質なのだ。おかげで俺はペラリと薄い体をしていた。
助手をするようになり、重い資材を持ち運んでいるうちに多少は筋肉になるかと思ったのだが、やはりダメだった。
ちゃんと必要な資材は自力で運べるだけヨシとしようと最近は開き直っている。
が、やはり残念なのは残念なわけで、こうやって指摘されると大人気ないがつい反応してしまう。
「あー、カインちって兄ちゃんはがしっとしてたなぁ。背もでかいよね」
バートが思い返すように言う。
「・・・言うなよ、それ」
兄達を思い出して、俺は渋面を作った。
「兄がいるのか」
ハロルドの質問に「うん、二人」と答える。
「でもさ、おまえんとこの兄ちゃんでも胸毛はないだろう?」
「ない」
俺はキッパリと答えた。
「だよなぁ、二人ともこう~~、洗練された感じ?モジャって感じしないもん」
「・・・胸毛から離れろよ」
飽きれたようにルパートが口を挟んできた。
「ってか、アーサー研はみんな細いよね」
ルパートの突っ込みを半分以上聞き流し、バートが言う。
「・・・ああっ。言われてみれば。ウィルも細い」
第一助手のウィルをはじめ思いつくメンバーのほとんどが細いかもしれない。
「もしかして、細さで選んでるのかもよ、センセイ~」
バートがうりうりと肘でつついてくる。
「そんなはずないだろう。手を動かせ、手を」
半ば納得しそうな時に、センセイから声がかかった。
「・・・センセイがセンセイらしい」
「カ~イ~ン!」
つい本音を漏らしてしまい、センセイが声をあげる。
「やります、やります」
俺は慌てて足を動かし、洗濯物を踏みつけた。
と、ふわりと肩に何かがかかった。
「え?」
見れば、長袖のシャツのようだ。
「着てろ」
声の主はハロルドだ。
「え、だってせっかく脱いだのに」
またきてしまったら本末転倒だ。第一、ハロルドのこのシャツだって濡れてしまう。
「日焼けのことを考えろ」
「あっ」
指摘に気付けば現金なもので、気付けばむき出しになっている足とかがじりじりとやけていく気がする。
ふとセンセイと目が合った。
「お前が日焼けして怒られるのは俺なんだぞ」
言われてはっとする。
「あ、ありがとう」
慌てて俺はハロルドのシャツへ腕を通した。




