大キライな幼馴染が鬱陶しいのにいつも隣にいるオレにはとある理由がある
シーンとした部屋に咳が響き渡る。
「ケホっ、ケホっ」
…
「ケホっケホっ、ね、ねぇアツトっ…ケホっケホっ」
「なに?」
「にっ…虹の橋って…ケホっ、ほんとうにあるとケホっ、おっ、思う?」
「うーん、わかんないけど…とりあえず水飲みなよ。ほら」
「あっ、ありっ…ケホっ、ありケホっ」
ありケホって…なんだよ。
オレの幼馴染である香帆湖は、病弱だ。
「わたし…ケホっ、にっ、虹の橋渡るから…そっ、そしたら、アツトも一緒にっ、渡ろう?」
「え、やだよ」
「ひどいっ‼︎アツトひどいよ‼︎」
「ひどいのは、そっちでしょ?」
「なんでよ?あ、わたしの病気のことケホね?」
…
ケホね?とは?
「…もうさ、病気のことケホね?って咳じゃなくて普通に語尾として、ケホって言ってるよ?香帆湖さ、とっくに風邪治ってるでしょ?」
「えっと…これは…ケロ…ね…その…つい、さみしくて…暇で……」
もう、ケホじゃなくてケロになっている…
あんたは、前世カエルかよ…
「じゃ、もう元気みたいだしオレ、カエルケロよ」
「えー、ケロとか…なにそれ」
「それは、自分の前世にでも聞いてみなよ。じゃ、明日朝迎えに来るから、学校一緒に行こうな」
「前世?てかさぁ、よっぽどわたしと一緒にいたいのって、アツトのほうじゃない?朝一緒に行こうとかさ?」
「違うよ。一緒に行かないと、香帆湖の親が心配するだろ。香帆湖が方向音痴だし、道くさくって遅刻するんだから。じゃあな」
パタンとドアをしめた。
…
まったく世話のやける幼馴染だ。
そんな病弱の香帆湖は、すぐ風邪をひくし頭痛も頻繁だ。
しかし、元気な時はとにかくパワフルでフル稼働だ。
パワフルすぎて、その反動でダメージをくらっているんじゃないかとオレは思う。
香帆湖は、はっきり言っておバカなのかもしれない。
さらには、自意識過剰。
なぜなら…
はぁ…
なぜなら、くだらないことをよくオレに言ってくるからだ。
たとえば、今まさに送られてきたメッセージに、
(愛してるよ、アツト♡)
ってきたんだ。
だから、オレは
(オレはキライだし、そんな言葉送ってくるな)
と、いつも言っている。
そう、オレは香帆湖が大キライなのだ。
なぜって?
だって…
病弱のくせに、頭良くてケンカがめっちゃ強くて、運動もできて、友達も多いんだ。
オレにないアイテムをたくさん持っていやがるんだ。
さらには、オレを好き好きってさ…
どこをどうしたら、こんなダメダメ野郎を好きになるんだよってなわけだ。
理由を聞いても、
「全部♡」
とか言ってくるし…
適当にもほどがある。
アバウトおバカだ。
そんなやつにオレが、ぞっこんになってみろよ…
ハマるだけハマって、ポイされたとき、オレは…オレは、どうしろというんだよ…?
香帆湖の好きとか愛してるってやつは、中身が空っぽなんだから、受け取らない方がいいに決まっている。
…
そんなおバカな香帆湖とオレは、同じクラスだ。
香帆湖に絡まれる前にさっさと帰ろう。
どうせ帰りなら、香帆湖が道くさしようが道に迷おうが知ったこっちゃない。
「ハックション」
あー、風邪ひいたかも…
「あらら?もしかしてわたしの風邪うつった?あのとき、あんなことやこんなことしちゃったもんね♡?」
…
「いや…なんもしてねーし…だまれよ。学校で変なこと言うなよ」
「じゃあ、学校じゃなきゃいいんだ♡じゃあ、今からわたしの部屋でぇ♡」
「ない‼︎もうだまりなよ。帰るよ」
「はぁい♡どこまでもついていっきまーす」
…
はぁ…
もうさ、ため息しかでないわ。
だれかさ、ため池でこの人泳がせておいてくれないかなぁ?
今日は、元気みたいだし、体力ありあまってるじゃん…
オレのまわりを、ぐるぐるする香帆湖。
…
あんたさ、こばえかなんかなの?
…
ってくらい、うっとうしい。
「あー、お腹すいたあー。お腹お腹お腹すいたぁ‼︎あーあーあーっ‼︎」
…
とにかくうるさい。
その言葉を、だれに訴えかけているんだよ…
そんな大声だしたら、もっと腹減るだろうよ。
まったく…
そんなおバカ?な香帆湖がテストの話をしてきた…
「ねぇアツト、テストどうだった?」
「え、いつもの安定の平均点以下だけど?香帆湖は、どうせ満点?それとも、れい点?」
「今回は、はんはんー」
「へー」
そう、香帆湖は頭がいい‼︎
しかし、とてつもなくおバカだから、解答用紙一文全てズレで、れい点になったりするのだ。
非常にもったいない…。
頭のいいおバカって、ほんと意味不明。
そして、いつもうるさいか寝込むかのどっちかだ。
安定して普通の日は、ないのか?
まったく…
そんなうるさい香帆湖がまた、突如頭痛いと言い出した。
「じゃあ、帰ってすぐ寝なよ?」
「えっ、一緒に寝てくれないんだ?」
…
「子どもじゃないんだか…ら…」
香帆湖が目をウルウルさせていた。
いつもうるさいくらい…っていうか、いつもめっちゃうるさいくせに、調子悪くなると香帆湖は、とにかく弱気だ。
…
「わかったよ…。いくよ」
「わーい…」
「ムリして喜ぶなよ。悪化するだろ…」
「うん」
…
香帆湖は…
寝てる時は、めっちゃかわいい寝顔…なんて少し思うよ?
でも…
寝言がうるさいんだよ。
爆睡するまでそばにいて?っていつもいうからいるけどさ…
いきなり寝返りして、裏拳してきたり…
「だまれカス‼︎」
とか、大声寝言いってきたりさ…
そもそも、あんたがだまれってことですよ…
あとさ…
めっちゃ寝ながら笑ってるのが、とても不気味すぎるんだよね。
夢にでてきたら、どうしよう?レベルなくらい不気味だ。
目をつぶって大笑いって…こわくね⁉︎
そんな香帆湖が、やっぱりキモくてキライだ。
うるさかったり、体調不良で辛そうだったり…
オレをふりまわしすぎるんだよ‼︎
なんで、そんなに青白いんだよ‼︎
「頭…痛い痛い…」
って、なんで寝ながら涙流して笑うんだよ‼︎
泣くのか笑うのかどっちなんだよ‼︎
アップダウン激しすぎて、心配になるんだよ‼︎
バカめ‼︎
でも…
…
そんな香帆湖をどうしても放っておけない。
…
オレって…
ほんとは、香帆湖が大スキすぎるんじゃ…
…
いや、それはない‼︎
と、おもいたい…
でも、香帆湖が…
香帆湖の体調がよくなるまで、どうしても離れられないんだ…。
数時間後…
「よく寝た〜。あれ?なんでアツトがいるの?わたしの寝込み襲うつもり?変態ね?」
とか言い出した。
「バカ…うっかりオレも寝てたんだよ」
…
「じゃあ、なんで本持ってるの?」
「うっかりだよ」
…
「ふーん、うっかり頭痛治し方って本読みながら寝てたの?」
「そうだよ、悪いかよ?」
「ううん。アツト…いつもありがとう」
…
「バカは、もっと寝てろ」
「はーい」
まだ少し青白い香帆湖が、そっと目をつぶった。
…
早く元気になって、大騒ぎしろよ…
でも…大人しい香帆湖も、やっぱり…
「スキだ」
オレは、そんな香帆湖にキスをしていた。
おしまい♡




