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6 乙葉!か、考え直してくれよ

部屋の中で乙葉が電話している声がうっすら聞こえる。何を話してるかはまったく分からない。ほんの1〜2分の話だったと思うが牛雄は何時間も待たされたような気がしていた。いったい乙葉は何をやってるのか。そう、たぶんセラピストに電話をしているのだと思う。頭に血が上って何も考えられず下を向いていた。

 バタンとドアが勢いよく開いた。牛雄は顔をあげる。

「お、乙葉!か、考え直してくれよ」

乙葉は上気した赤い頬で興奮気味に勝ち誇ったような笑顔で牛雄を見下ろしながら

「ご希望どおり呼んだわよ。セラピストを。これからすぐ来るって。私すぐシャワー浴びるね」

「は、は〜!?うそだろ。うそだよな」

「嘘じゃないわよ。こういうのは勢いが必要でしょ。それに元はと言えばあなたの可愛い後輩のタヌキ女のせいでしょ。私は女風セラピストと仲良くして、あなたはそのタヌキと仲良くやってなさいよ」

「そ、そんなあ〜」牛雄は食い下がるように乙葉の脚にしがみつこうとするがするりとかわされて乙葉はそのままバスルームへと隠れた。

「覗かないでね。ちゃんとムダ毛を剃ったりしないといけないし。それに匂いとか気になっちゃうからちゃんと洗わないといけないから。牛雄とするよりすっごい緊張しちゃう。は〜早く支度しなきゃ」バスルームから大声でそう叫ぶとバタンと勢いよくドアをしめた。

その後は鼻歌交じりにシャワーを浴びているのを牛雄はただ待っていた。

「あいつ、本気なのか・・・」

 今からこの家に、セラピストの男が来る。きっとたくさんの女性をイカせてきたようなそんな男が家に来て、しかも乙葉に触る!?そんなこと許せない。させるわけない。そんなこと、乙葉が自分でそもそも許す訳ない、許す訳ないのに・・・。なんで?

乙葉は身持ちの堅い性格だと牛雄は思っていた。あまり過去の恋愛など詮索していないが、いい加減にいろんな男と付き合ったというような話もまったく聞かないし、どう考えても似つかわしくない。そもそも、社内のエースからイケメンまでいろんな面々がアタックしてことごとく振られてきて、牛雄が知っている間は乙葉は誰とも付き合ってなどいないのだ。それなのに・・・。


 1時間ほど時間をかけてしっかりと身支度をした乙葉が出てきた。髪も整え、薄めだがしっかりとメイクも施されている。

「湯上がりメイク、寝化粧なんてはじめてしちゃった」すこし照れくさそうに乙葉は舌をだした。牛雄はあまりの乙葉の美しさに全身を震わせた。他の男にこんな綺麗な乙葉を晒せる訳がない。なんとかし追い返さないと。

「ネゲショウって?」

「夜、寝室で男性とイチャイチャするときにすっぴんて訳にいかないでしょ。だからそういうときのメイクを寝化粧っていうらしいわよ」

乙葉は本当にこれから来る男性とイチャイチャするつもりだ。

「ね、牛雄くんもむさ苦しいからお風呂入ってきちゃってよ」

「え、俺も?」

「私たちだけ裸になったらなんか醒めちゃうじゃん。牛雄くんも隣で裸で見ててね。私が癒やされてるところ。いやらしいことされてるところ、かもね」乙葉はニヤリと美しい微笑みを浮かべると寝室のドアをあけてベッドメイクを始めた。

牛雄はぼーっとして頭が回らない。とにかく乙葉の言うとおりしないと、と急いでシャワーを浴びた。


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