1 のろまな牛雄(うしお)は馬鹿にされる
どんなカップルにだってスキマ風は吹く。
日下部 牛雄と月野 乙葉は付き合いはじめてしばらく経ってから当たりに同棲、しばらく経ってこれまた当たり前に「セックスレス」になってしまったカップルである。それでもお互いに尊敬し合って支え合って暮らしている、牛雄はそう思っている。
「調査によるとほとんどのカップルがセックスレスなんだって。だから僕たちも何の問題もないよね」そう牛雄は言葉に出して乙葉に確認する。だから大丈夫だ、牛雄はそう言い聞かせる。
牛雄は最近になって自分がセックスをしない分かわりに仕事に精を出そうと意気込んでいた。しかしなぜか気合いは空回り。自分と同期入社だった仲間は役員入りを果たし、年下の後輩達の活躍もまためざましく、とうとう後輩が上司になってしまった。
いつのまにか自分は出遅れ置いていかれ・・・そう感じて日々焦るばかりである。
「牛雄、太ったよなあ。顔も脂ぎって。まさに牛の名前通り。のんびり、モ〜って感じだな」
後輩だが今は上司、野球部出身の角川。なんとも苦手な男だ。
「ははは・・・。参ったなあ、やめろよなぁ」なぜ年下の後輩に、ため口でこんな失礼なことを言われ馬鹿にされて笑われているのか。しかしそんな嫌みにも愛想笑いの牛雄。それが一番自分で許せない。後輩女子のユミが合わせて角川をヨイショする。
「やっぱ、牛雄先輩は、あれじゃないですか?ほら牛雄先輩はレスラレだから」小声で角川に耳打ちする。それに角川は重ねて、
「しかも、牛雄は月野先輩がはじめて付き合った相手。他には誰からも相手にされてない。もうほとんど童貞だよな、あははは」
「童貞なのにEDじゃ、彼女さんがかわいそう。出て行っちゃいますよね〜」
ギャハハッハと大騒ぎである。牛雄が働く職場は、昭和の体育会系のノリが残る大手ゼネコン・・・、の下請けの下請け建設業者。職場の男達から牛雄は恰好の蔑みの対象なのである。セックスを拒否されても仕方がない男、というレッテルである。
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